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第35話 迷宮都市誕生の顛末


 006


 さて、この三ヶ月で起こった帝国と王国と北の国の顛末を簡単に話そう。


 僅か三ヶ月で冒険者ギルドはその構成員の数を1000まで増やした。

 また、新たに発足した冒険者ギルド直属の私兵軍の所属人数は1500だ。

 付随して北の国の街に滞在する住民は3000人に増加。その大半は帝国と王国の戦に巻き込まれて疲弊する貧民層と戦争孤児、未亡人だった。


 南の街で突如売られ始めた食材は貧民層にとっては高価で手の届かない物だったが、北に出来た新しい国で誰でも手にいれる事ができるという噂に飛び付いた者は多かった。


 貧しさからの脱却を求めて赴いた新天地は想像以上に過ごしやすい国だっただろう。

 なにしろ冒険者ギルドに登録すれば迷宮に入る事ができて魔物を狩ることで食いっぱぐれはない。


 最初は野宿をしていた彼らは次第に固まり集落が自然発生、村化した。賃料を支払えば土地の開拓も建築も商売も自由だ。しかも税金もない。

 迷宮から離れる毎に賃料は安い。

 迷宮から遠い地域にぽつりぽつりと建物が建築されはじめて、住民の数が増え、瞬く間に発展していった。


 臨時政府のギゼルが慌て始めた頃には街の人口の約2割が流出。しかも移り住んだのは低賃金労働者。街は一気に働き手をなくして混乱に陥った。


 まず、南の街の物資不足が深刻化した。

 物資はある。むしろ北の国から流入してくる分が増加している。しかし、捌ける人員がいない為に流通が滞り、物価が上昇し始めた。帝国軍が運搬を代理で行う程だ。


 生活の困窮に晒された住民が増えて更に北の国に流出という悪循環だ。


 帝国臨時政府は北の国への移住を禁止にした。更に北からの持ち込みに対しての関税を拡大して実質人以外の物資の流入を押さえ込んだ。

 売れなくなれば北の国に流出した住民が戻ってくると踏んだ政策だった。


 が、しかし、悲鳴を上げたのは迷宮産品を買い付けして南の街に卸していた商人だけだった。

 移住した者は食べるためと冒険をするために移り住んだのだ。お金儲けなど最小限でいいと判断していたのでほとんどが留まり、帝国に戻る者は少数だった。


 迷宮で産出される資源は俺がアイテムボックスに格納して不審を抱かれないように帝国ではなく王国に卸すので、ダブついたりしないから安心だ。


 帝国側は減少した住民を補うべく帝国本土から南の街に住人を募集するも、最前線の街というネガティブ要素に思うように人は集まらず、更に、ならず者が集まり治安を悪化させてしまうという最悪の結果となった。


 完全封鎖したわけではないから南の街からの流出は止まらず、程無くギゼルは起死回生の手を打つ。


 宣戦布告だ。

 目障りだから併合してしまおうという短絡的暴挙に出た。

 しかし、帝国軍の士気は低かった。

 敵には元上官のハマンがいるからだ。

 大義もない。


 第一陣は1000名の兵を出した。

 しかし、500人を超える死傷者を出して撤退。非殺傷の魔法でも、打ち所が悪ければ死んでしまう。

 50にも満たない人数で国境を守備した俺達は当然、無傷だった。


 第二陣は1500名を三方に分けて半包囲するも、広域魔法に抗えず撤退。

 帝国軍は二度の敗戦で脱走兵が相次いで発生し、その大半はハマンを頼り北の国に集う事になる。

 冒険者ギルド直属の私兵軍の誕生だ。


 帝国に更に凶報が重なる。

 間隙をついて、王国が南の街に侵攻を開始したのだ。

 北の国併合の戦いはもちろん中止となった。


 しかも兵士は前回の戦いで疲弊している。士気もどん底だ。

 不幸にも王国に卸した迷宮産素材で強化された装備の違いも響き、帝国は自国側までの撤退となる。そのために王国に卸したけど効果は抜群だった。


 南の街は新たに王国支配地域となった。

 戦に怯えながら決着を待っていた時代と違い、北の国という受け皿が出来たことで住民は更に流出。


 帝国軍が時を置かず再進撃。しかも、以前までなら征服後の復興を考慮して手を出さなかった中央の市街地を戦場にした。

 これには富裕層も大慌てだ。

 帝国王国の戦闘が激化したために富裕層は帝国本土、王国本土に流出。


 この時点で南の街の住人は戦禍に巻き込まれて逃げ遅れたごく一部の者以外、いなかった。

 俺はこの機会に領土拡張を行う事にした。

 主のいない土地に対して、国境線を南下させたのだ。

 阻むものもいなかったしね。

 ドンパチの最中、漁夫の利です。おつかれさまです。


 開戦二週間で、王国と帝国は一進一退の消耗戦の末に停戦。死傷者は二万人に達した。この数は両国の兵士の四割に相当する。

 停戦条約で、南の街は中央を非干渉地帯としての分割統治となった。

 俺がそれに従う義理はない。電光石火で中央部分に陣を張り占拠した。


 迷宮で力をつけた住民が志願兵として参加をしはじめ、伸びた境界線の維持に尽力してくれた。帝国脱走兵も1000名を越えた。


 非干渉地帯は二本流れる川の間にあり、文字通りの南の街の中枢部だ。

 帝国脱走兵を迷宮で三日間ハマンに鍛えてもらい、冒険者ギルドの私兵軍に入隊させる。

 新たに俺の支配地となった南の街中央部の守備隊として冒険者ギルドに正式に依頼した。


 南の街は戦の爪あとを残して壊滅。住民はすべて避難していたので、俺は帝国に対して侵略の報復として宣戦布告をした。

 と、その前に王国に対して使者を送り、会談の申し込みをしておく。


 帝国に隊する戦い方は単純だ。

 100人5組のローテーションで非殺傷広域魔法で牽制する。

 漏れて進軍してくる兵は別働隊の弓で迎撃、距離を詰められたら白兵戦部隊で守る。


 これだけを愚直に繰り返して前線を押し上げて二日で帝国軍を自国まで撤退させた。

 味方側は、驚異の死者数ゼロだ。

 戦いながらも帝国軍からの引き抜きに力をいれる。新たに加わった者は迷宮に送り込み、既存兵士もローテーションしてステータスを底上げする。この時点で冒険者ギルド私兵軍は1500名を突破。能力は両国兵士の10倍以上だ。もう負ける気がしない。南の街限定だけどな。


 帝国側国境に土嚢を積み上げて硬質化魔法で簡易的な塀を作り守備兵を配置して守備に切り替える。


 王国側は会談に応じたので話し合うために王国側占領地に赴いた。

 俺は帝国からこの地を譲り受けたから王国側の占領地域の解放と即時撤退を要求した。

 もちろん拒否され、そのまま捕縛しようという動きに出たために、随伴していたイッカとシルヴィが激怒して暴れまわった。


 結果、前線基地は壊滅。

 そのまま開戦となった。


 帝国側に守備隊を残した冒険者ギルド私兵軍1000対王国軍15000の戦いだ。

 しかし俺が最大威力で非殺傷の風の魔法を数発ぶっぱなしただけで2000名近くが行動不能となり王国軍は浮き足だった。

 魔法使い部隊ローテーションが一周する頃には兵士の大半は逃走していて、王国軍は撤退を余儀なくされた。


 王国側地域に同様に塀を設けて守備隊500を配置すると、王国と帝国との戦争は終結した。

 迷宮スキルが絡めばイージーモードは相変わらずだ。

 空洞化してしまっている国の内情や政治の空白とか問題は多々あるのだろうが、やりたいものとか得意なものに任せることにしよう。


「死者がいなくて良かったです」


 戦争なんかで貴重な迷宮攻略者を損なうわけにはいかない。


「はっ。お心遣いいたみいります」


 イッカが片膝をつく。しなくていい。


「占領地はいかがいたしますか?」

「代理のものに任せます。候補者を絞っておいて下さい」


 街の運営には然程興味はない。ここはあくまで迷宮攻略を行う補助的な場所だ。


「かしこまりました」


 こうして、将来、迷宮攻略のベッドタウンとなる迷宮都市の前身ができあがった。


読んでいただきましてありがとうございます。

楽しんでいただけましたら幸いです。

ブクマ、評価、ありがとうございます。大変、励みになります。

ノクターン版も連載を開始しました。閲覧可能な年齢の方は、是非お読みください。

では、失礼しまして。

もし、気に入っていただけたり、続きを読んでみたいと思われましたら、ブックマークとこの下にあります評価の入力をお願いします。(評価感想欄は最新話にしかないそうです)

感想もお待ちしております。続きを書く励みになります。

よろしくお願いします。

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