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第24話 あれな姉妹


 004


「貴様ら! ウサコから離れろ!」

「ウサコちゃん、今助けますわ!」


 耳を誇らしげに立て白い髪をなびかせた、乳白色の肌をもつ兎人族の女性二人が抜刀する。

 赤い瞳の眼光は鋭く、二人とも口許には既に勝利を確信したかのごとく笑みを浮かべていた。

 ウサコに良く似た顔だが、圧倒的に体の凹凸のボリュームが違う。まさにゆさゆさと揺れている。


 この人数差で抜刀して仕掛けてくるなんて、なんという命知らずなんだ? それとも相当腕に自信があるのか? アナライズがないというのは本当に不便だ。


 ウサコの名前を呼んでいたから関係者であることは間違いない。ウサコも相当に強そうだから或いはと期待させるが、さすがに迷宮攻略筆頭のイッカに敵うとはとてもじゃないが想像できない。


「ああ、あれは私の姉たちです……おっちょこちょいとノー天気の組み合わせです……」


 横でウサコが頭を抱えている。笑っているか、可愛らしく怒っているかのどちらかしかイメージのないウサコの違う一面が見られて微笑ましい。


 なるほどあれが、あれな人たちか。

 イッカもワンコも戸惑いを通り越して口を開けている。

 まさかこの戦力差で問答無用で襲いかかってくるとは思わなかったのだろう。


 西川などまったくもって眼中になく、既に宴会用の肉を頬張っている。

 泣いたらお腹がすいたそうだ。


 さっきの腹いせに食べるところをジロジロと眺めてやると、仕方無さそうに「食べますか?」と聞いてきた。

 違うわ!

 そこは、はぐはぐ食べているところを見られて恥じらう女性らしい仕草を見せろよ。


 対峙した兎人族の二人は間合いを計るようにジリジリと歩を進めている。

 うん、近くで見るとボリュームがやはり凄い。


「コーキくん? さっきから、どこを見ているのかな?」


 ウサコの視線が痛いので自重しよう。

 さて、細切れにされる前に助け船を出さないとな。


「ふむ。ジュニアたち、あの兎人族はウサコの姉ちゃんだ。確保してきなさい」

「ラジャー」


 ぞろぞろと集まっていた10人が綺麗に散開する。うん見事な連携とフォーメーションだ。


「な、なんですのこの子犬たちはっ」

「うわっよせやめろっ」


 あっという間に間合いを詰められた兎人族の二人はわらわらとジュニア達にまとわりつかれて見えなくなった。


「あーかまないでー。くすぐったいですわ」

「うひゃひゃひゃひゃひゃ」


 甘がみ顔舐めで涎でベトベトにされた兎が担がれてくる。


「かくほー」


 ご苦労さんとジュニアたちを労ってやる。


「ウサミ姉さん、ウサヨ姉さん、誤解ですから、私は大丈夫ですから」


 目をぐるぐる回した姉たちにウサコは一生懸命声掛けていた。

 ジュニア達でも相手にならなかったか。

 あれな姉ちゃんらしい。


「妹がお世話になりまして、感謝の言葉もございませんわ」


 深々と頭を下げたのは三姉妹の長姉、ですわのウサミだ。その格好はタンクトップの上に厚手のカーディガンを羽織っているが、下はショートパンツという派手な露出で、ふとももも露なナマ足は大変眼福でいらっしゃる。


 今までに出会ったこの世界の住人で一番の露出だな。

 出るところが出ている。大きさはイッカ以上だ。


「誤解しちまって申し訳ない」


 土下座しそうな勢いのショートカットは次女のウサヨだ。こちらもショートパンツと服の裾を無理矢理千切ったようなワイルドなへそ出し肩出し足だしという健康的な体を惜しげもなく晒す格好で大変眼福だ。寒くないんだろうか? そろそろ肌寒くなってきたというのに。

 体つきは姉に準じている。この凹凸は血筋というより兎人族の特性なのかもしれない。


「ウサヨ姉はバカなので寒さを感じないんだよ」


 末妹は失礼な事を耳打ちしてくる。

 ウサコは清楚なワンピース姿で姉に比べると体も清楚だ。きっと成長途中なんだろう。

 三姉妹とも白い髪の色だ。


「このお礼は体で払いますわ」

「オレの体で詫びを入れる」


 同時に口にして姉妹はお互いを睨み付けた。


「このお礼は体で払いますわ」

「オレの体で詫びを入れる」


 次は取っ組み合いになった。

 ジュニアたちがケラケラ笑っている。


「ウサコさん、いつもこうなのですか?」


 恥ずかしいよと顔を赤くしてウサコは姉たちを諌めている。

 体で払ってくれるのは大変嬉しいが現在俺の体は12歳。まあ衝動もそれほど起こらない。あと何年かしたらお相手してもらうことにしよう。


 などと考えていると左のイッカが良かったですね主様、夜伽のお相手が見つかりまして、と笑っていない目で微笑んでいた。


 右のミコは瞳を潤ませていた。私がまだ子供だからですか? バインバインじゃないからですか? などという呟きが聞こえてくる。

 おっと、ミコも色気付く年頃なのか。女の子の成長は噂通りに早いらしい。


「ウサミミ萌とかキモいですね先輩」


 後ろのほうで侮蔑の表情を浮かべる西川は口の周りを油でベトベトにしていて行儀が悪い。お前はまず口を拭け、後輩。


 お礼やお詫びのお話は今度うかがいますのでと先のばしにしておこう。


 兎人族の三姉妹と付録の亜人族三人組は迷宮から運び出される果実と肉の量に驚いている。

 まずは食事を楽しんでもらおう。

 変わらない顔ぶれの中に見えない顔についても後にしよう。


「イッカ、食べながらでいいので、報告をお願いします」

「はっ」


 腹を満たしてまったりとした空気の中に凛としたイッカの返事が返ってくる。


 迷宮攻略について、第一層の拠点建設についての進捗を報告を聞く。

 概ね順調そうだ。第二層は攻略済みなので中に入れるようになったら様子を見よう。


 第三層の攻略はレベル8で止まっているらしい。一年という期間を考えれば停滞しているが、菊千代のサポートのない状態での攻略なのだ、普通に快挙といえる。


 特に、残された者たちにとっては迷宮攻略ギルド所属とは言え攻略の責を負っているわけではない。ただ生活をするだけなら一層でのんびり過ごす選択もあった筈なのに、コマを進めてくれていることに対しては素直に感謝を捧げるべきだろうな。


 建築も順調そうだ。ただし、迷宮外の拠点作りは外敵や悪目立ちを考慮してあまり進めていないらしい。妥当な判断だと思う。街との接点を積極的に必要としない今はな。


 澄まし顔だが少し得意気なイッカが微笑ましい。


「仲間たちに変わりはないですか?」


 ここで、少し顔が強ばる。


「何人か顔が見えないですけど、どうかしたんですか?」

「鬼人族長老は、半年前から臥せっております」


 イッカの悲壮な顔は、体調を崩した程度という軽い感じではない。

 ガツンと頭に衝撃を受ける。だが慌てるな。心を落ち着かせろ。


「病気か?」


 口にしてから言葉使いが乱れたことに気付いた。落ち着けていないな。


「いえ、そうですね。もう、お年ですので」


 なるほど、一年前にして200歳を越えていたご老体だ、鬼人族の寿命がどの程度かわからないが、攻略に参加していないご老体はステータスの上昇もない。老衰というやつだ。

 また、少なからず俺が不在になったことで心労がたたったことも否めない。


「そうですか……」


 明日にでも見舞いに行こう。


「今はもう話すことも出来ませんが、長老よりの言伝をお伝えします」


 言伝?


「感謝を、と」


 俺は耐えられなくなった。たった数ヵ月の付き合いとはいえ仲間からの心遣いに胸が熱くなる。

 目頭が熱くなったと思ったら涙が流れていた。

 子供の体格に精神が引っ張られているに違いない。


 静かに涙を流す俺をイッカは目を閉じて待ってくれる。

 突然泣き出した俺の反応にウサコはおろおろとしていた。

 だから西川、その舌なめずりしそうな顔はやめろ。


「それから愚弟ですが」


 姿のなかったリッカ。真っ先に俺に噛み付いてくると思っていたのに拍子抜けだと思っていたが。


「呪いを受けて療養中です」


 呪い?


「何の呪いです?」

「目が、見えなくなりました」


 イッカが痛々しい姉の顔を見せる。

 特攻隊長がまさかの戦線離脱とは。

 菊千代に視線を向ける。


「失明も部位欠損の一部でございます」


 今の段階で手にはいるポーションでは治療不可ということか。

 だが希望はある。逆に考えれば治療方法が存在するということだからな。


 詳しく聞くと第三階層の攻略が進んでいない事と関係があるらしい。

 単純に戦力不足と考えていたが、その呪いを突破できない事が原因か。

 攻略に関しては俺のレベルアップも兼ねて追々考えていくことにしよう。


「菊千代、俺のアイテムボックスの中はどうなってる?」


「アイテムは確保しておりますよ。ただ、大変申し上げにくいのですが、管理権限の承認を得られるまでは取り出しも使用もできません」


 あるならいいさ。別に今すぐ命がどうという状況じゃない。

 いや、それにしても、だ。


「菊千代、許可はいつおりるんだ? もう二ヶ月近いぞ?」

「そうですねぇ、おかしいですね。一度催促の連絡をいれてみます」


 菊千代の姿が消える。連絡を入れるというより出向いたという感じだった。


「コーキくん! リンゴがあるよ!」


 ウサコが興奮気味に両手をバタバタと振る。大変可愛らしい。

 まただ。この世界のリンゴはどこまで高級品扱いなんだよ?

 三人娘もおおおと感動の声をあげている。


「リンゴがこれだけ並ぶ光景を見ることが出来るなんて思ってもみませんでしたわ」

「おい、これ、食っていいのか?」


 俺と西川以外の面々は自分達が通ってきた道を歩む新参者を生暖かい目で見ている。

 迷宮の最弱のモンスターがドロップするアイテムだと知った時の顔を思い描いているに違いないな。


 まあ、たんと食ってくれ。


 その後のことだ。

 迷宮に入ることが出来ない俺達が小屋で寝る事に対してひと悶着あった。


「コーキくんはいつも私と寝ているよ?」

「いえ、ウサコ殿、主様は私が責任を持ってお守りしますので」

「ユウも一緒に寝る!」

「私も……」

「ショタ先輩の添い寝とか色々目覚めてしまいそうです」


 ウサコの姉達と、三人娘を勘定に入れると実に11人だ。

 当然、入りきらない。

 朝までかけて誰が一緒に寝るのか話し合いが行われそうな姦しさだった。


 凍結解除申請の許可はその10分後におりた。

 絶対忘れていたよな、これ。


読んでいただきましてありがとうございます。

楽しんでいただけましたら幸いです。

ブクマ、評価、ありがとうございます。大変、励みになります。

では、失礼しまして。

もし、気に入っていただけたり、続きを読んでみたいと思われましたら、ブックマークとこの下にあります評価の入力をお願いします。(評価感想欄は最新話にしかないそうです)

感想もお待ちしております。続きを書く励みになります。

よろしくお願いします。

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