第10話 休憩時間
誤字を修正しました。
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いつも通り迷宮から排出された。
どことなく、空気が旨い。
息苦しさなどまったくない、空調でも完備しているのかと疑いたくなる迷宮内部だが、どうしても閉塞感は拭えない。
魔物の襲撃を警戒しながらの移動に、いつの間にか緊張感で体が凝り固まっていた。
外の空気に触れて、女性陣もホッと息をついていた。
次の迷宮再開までは5時間。
攻略は無理だが、肉くらいは調達できそうな時間帯だ。任意で脱出できるのだから後で様子見を兼ねてアイテム収集でもしよう。
初めての経験を沢山しただろう姉妹を労いながら、そんな益体のない事を考えていると、西川が近付いてきた。
「先輩、腕を見せてください」
狼に噛まれた腕を取られる。
シャツの袖部分は破れ、乾いた血で汚れている。呆れるくらい効果のある万能ポーションだが、怪我は治せても服のほつれは直してくれない。
「おのれ狼め、私の枕に手を出すとは獣の分際で生意気です。カバーが破れてしまいました」
いや、うん。これは西川なりの心配なのだろう。そうに違いない。俺の腕は枕じゃないけどな。
「傷痕も残らないんですね。不思議です」
西川は剥き出しになっている腕を眺め呆れたように呟いた。
イージーモードだからな。
だから、隙を見て胸を押し当てるな。
イチャイチャしはじめたと勘違いしたミコが気を使って目をそらしているだろうが。
「おつかれさん。今日はここまでだ」
曖昧に笑う姉妹と西川は水場に向かう。顔でも洗いにいくのだろう。
さて、落ち着いた所で荷物整理だ。
まずは気になるドロップアイテムの確認をしよう。
宝箱から出た銀の腕輪をじっくりと観察する。未鑑定とかわざとらしく設定されているんだから馬鹿馬鹿しいがノリに合わせる。
→ 一条光輝は鑑定のスキルを獲得した。
まったく。鑑定人もびっくりだな。
とりあえず3まで上げようとしたけど1が最高レベルだった。
「未鑑定というのはですね、保護包装のようなものです。色々と意味はあるのですが、ありていに申しますと、大人の事情です」
アナライズスキルがあれば不要の物じゃないかという俺の指摘に菊千代はぶっちゃけやがった。
→ 腕輪を鑑定しました。腕輪→銀の腕輪
→ 銀の腕輪 聖属性 知力+2 装備をすると属性が聖になる。
アナライズスキルがあるので見つめるだけで詳細が分る。
だが、なんともいえない微妙な性能だった。聖属性になると何がどうなるのか分らない。闇属性に強くなるのかな?
知力アップだからユウ向きだが、数値はたったの2だ。姉妹の片方だけ装備を渡すのも不公平なので保留にしておこう。
アクセサリーとして西川に下賜することも考えたが、「これはプロポーズと受け取っていいんですね」とか言い出しそうなので却下だな。
さて、続いて楽しい実験だ。
30センチ四方の岩を拾ってくると表面をグラディウスで叩いてある程度形を整える。
理想は半円だけど、この道具だと台形が限度だ。
なにやら始めた俺に興味を抱いたのか姉妹と西川が寄ってきて腰を下ろした。
「今度は何を作るんですか、先輩」
西川いわく普段着の布の服に着替えた格好に目を向けると、ふふんと鼻を鳴らしてポーズを取る。
はいはい、似合う似合う。
褒めたのに唇を尖らしやがった。面倒な奴だ。小石を投げるな。
「ミコ、疲れているところ申し訳ないけどこの岩の上にファイヤーフレイムを掛けてくれ」
ミコはこくこく頷く。
岩の上に銅のインゴットを置いて、ミコを見る。
ごおと音がして炎が立ち上った。
火が消えてからハンマーでインゴットを叩く。
→ 一条光輝は鉄工細工のスキルを獲得した。
フレンドリファイヤーはないが物は燃える。菊千代に物申したいがイージーモードだ、諦めて現実を受け入れよう。
お目当てのスキルを5まで上げる。残り36だ。いきなり最大値までポイントを振ったのは設備の整っていない分をスキルでカバーするためだ。
さすがにスキルはすごい。
石の形を覆うようにハンマーで叩いて広げていくだけでそれなりの形になる。
設備のない状態で30分もせずに台形に近い丸っこい鍋モドキが出来上がった。ハンマーで叩くだけで思い通りになるとかどんなファンタジーだよ。
中々手に入らない防具とかもいずれ作れそうだな。
まあ、これだけ生活に密着したドロップアイテムがあるんだから、その内鍋も現れるだろう。それまでの繋ぎに精々使わせてもらうとしよう。
頼むぞ、迷宮。
「ふふ、不格好だけど、お鍋ですね」
ミコが微笑むので俺は肩を竦めておいた。
「ああ。これでまた料理の幅が増える」
「あとはお塩があれば良いんですけど」
なるほど塩か。確かにそうだな。
岩壁をグラディウスでつつきながら塩を探す。
→ 一条光輝は採掘スキルを獲得した。
早速レベルを5まで上げる。
「菊千代、ちょっと周囲を探索してくるから行動範囲の限界が来る前に教えてくれ」
「畏まりました」
アンインストールは勘弁だからね。
岩壁をじっくり見ながらうろうろするが見つからない。さすがにムダだったか。
またしてもてくてく3人は後を着いてくる。
5分ほど歩くとミコが声をかけてきた。
「コーキ様」
目を向けると気まずそうな顔だ。
「この方向には街があります」
なるほど、二人は逃亡した奴隷だからあまり近付きたくないはずだ。
「どれくらい歩いたら街につく?」
二人の足で2時間くらいらしい。10キロ程度しか離れていないのか。
「反対側は何があるんだ?」
「深い深い森です。人族以外の種族がいると聞いた事があります」
やっぱりいるのか。いやでも漠然とした言い方だな。
「ミコは会ったことあるの?」
「いえ会ったことありません。でも捕まると食べられるから森に入らないようにと言われました」
子供を危険から遠ざける方便みたいなものなのかな? いずれにしても街も人以外の種族にも今のところ用はないな。買い物が出来なくて不便だからいずれ橋渡しは必要なんだろうけど。
目的のものは見つからなかったので帰ることにする。
鍋ができたのでかまどを作成したい。石をつんだりして作るのかな? ミコに聞いてみよう。
「お任せ下さい」
「がんばるー」
かまど作りはミコとユウに任せて大丈夫そうだ。
興味深そうに西川が手伝っているのが見ていておかしい。
今日は鉄板を使って焼肉だ。バーベキューが出来るけど煙とか出て大丈夫なのかな? 何か対策したほうが良いな。街の住人に見つかっても今のところ良いことはないだろう。
生活魔法に火を起こした後風で煽る魔法があるとのことなので風の魔法で操作とか出来ないか試してみよう。
アナライズで姉妹のスキルを調べているとミコに調理スキルというのが増えていた。せっかくなので5まで振っておく。
鉄工細工スキルがあるのだから盾でも作ってみようかね。
ポジション的にどうも俺が盾役だろうし。
ちなみに欲しいものはすぐに見つかった。
場所は迷宮内だ。
入ってすぐに鈍く白く光る箇所があるのを発見したのでグラディウスでつついてみると白い結晶がバラバラと転がり落ちた。
「なんという灯台下暗し」
「あの、コーキ様、これは?」
「岩塩だよ。塩の元になるものだ」
「はあ……何でもあるのですねこの洞窟は」
ミコも呆れ顔だった。
調味料ゲット。
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