39皿目 番外 モーニング 英雄ジークハルト 口移しモーニング
品のない表現があります。
副題のキャラクターの場合は、輪をかけて品が無いかもしれません。
苦手と思われる方はお戻りください。
「お嬢様、今月は発情期なので、発情臭が匂うかもしれませんが、私の《 発情期、雄竜執事お膝抱っこ 》でなにか物語をお聞かせしましょうか?」
燕尾服を纏った長く赤い髪の青年が、褐色の美しい貌で艶かしい笑みをこぼす。
「……また、竜の英雄のお話が……聞きたいです」
白磁の肌に陽光の髪、整った貌の少女が口を開いた。
発情期の膝抱っこと言われて少女は、咽かえる雄の発情臭と尻の下から伝わる雄の引き締った腿の熱を思い出し肢体を震わせた。
∽ ∽ ∽
赤い絨毯のひかれた、高価そうな調度品の並ぶ室内。赤い髪の執事の給仕で、少女が朝の食事を摂っている。
ゆるく柔らかい陽光の髪を肩まで流す少女はシャルロット=フランデル。人間と魔物の領域の境にあるウエザース領を治める若き領主にしてこの邸の主である。
給仕をしている赤く長い髪、紅い瞳のジークハルトは赤竜と人間のハーフで、口さえ開かなければ最高の執事だ。
シャルロットがバターが塗られ、香ばしく焼き上げられた柔らかなパンの薄切りを食む。
はむっ ちゅっ むっ
しかし、その食事の方法は普通ではなかった。
まるで親鳥が雛に餌を与えるように、執事が口移しで食事を供しているのだ。
己が口内で食べやすいサイズと柔らかさに、適度に咀嚼し、唇越しに食事を供する。
ジークハルトが主人であるシャルロットに唇を重ねるその姿は、男の口付けというよりも雄の甘吸いと言った方がいいほど淫猥なものであった。
執事が説明するには、これは古来より竜の谷に伝わる王家の食事の作法にのっとって食す《 猛妊虞 》という料理であるらしい。
若き女主人シャルロットの亡き母であるアリストリアも、この料理と食事法を好んだと言うのだ。
勿論、どちらも確認する術は無い。
「さぁ、次はお嬢様の大好きな《 とろとろ半熟ゆで卵 》ですよ。白くて柔らかくて……まるでお嬢様の肌のようですね……見るほどに興奮してしまいます」
《 とろとろ半熟ゆで卵 》と言われ、シャルロットはぴくりと反応する。
この美し過ぎる執事に食べさせてもらう《 とろとろ半熟ゆで卵 》は、シャルロットの最も好む料理の一つだった。
「それでは……失礼いたします」
柔らかい半熟ゆで卵を適度に咀嚼した美しい顔が近づき、瑞々しい唇を重ねる。
はむっ……ちゅっ……れろぉ……
「んっ、んんっ……んむぅ……」
黄身に濡れた舌が未熟な舌に絡みき、頭の蕩けるような官能と滑らかな黄身の味を伝える。
「どうですか? 卵の黄身は美味しいですか? 美味しかったらいつもの「大好き」を聞かせてください」
黄身の味のする官能的なキスに、くらくらと目眩を起こしそうになる。
半熟卵の黄身のようにとろんとした碧い瞳でシャルロットは口を開いた。
「うぅ……黄身、美味しぃ……だいす…きぃ……」
会話の語尾も蕩けるように甘い。
「あぁ、お嬢様! とっても可愛らしいです! 私、思わず半熟ゆで卵を持ったままイってしまいました」
荒い呼吸で褐色の頬を上気させるジークハルトに、シャルロットの胸がキュンッと疼いた。
美しい執事の瑞々しい唇に柔らかい唇が甘く吸いつく。
まだまだ食事の足りない雛鳥が、親鳥に餌をねだるかのように。
ちゅっ……ちゅぅぅ……
今まで、自ら唇を吸うことのなかったシャルロットが、唇を吸ってきたのだ。
あろうことか、そのまま自分から舌を絡め出すという行為に陥ってしまう。
それに応えリードするかのように、ジークハルトはさらに強く、まるで恋人のように舌を絡めた。
ちゅっ……はむぅ……んむっ……れろっ……れろぉ……
恋人のように口腔を掻き混ぜあう二人は、脳髄まで蕩けてしまいそうな快楽に、しばらく肉の愉悦にふけり貪りあった。
「お嬢様、お食事の休憩に私の《 雄竜執事お膝抱っこ 》で物語をお聞かせしましょうか?」
食事が終わり、唇をナプキンで拭うシャルロットに、メイドに片付けの指示を出し終えたジークハルトが尋ねた。
(……《 雄竜執事お膝抱っこ 》!)
膝抱っこと言われて、シャルロットは尻の下から伝わる雄の引き締った腿の熱を思い出す。
「……また、竜の英雄のお話が……聞きたいです」
おずおずとシャルロットが口を開いた。
「今月は発情期なので、発情臭が匂うかもしれませんが、宜しいですか?」
竜と人間のハーフであるジークハルトには、数か月に一度の発情期があった。
生殖行動への欲求が増大する期間であるのだが、発情期の雄竜は胸元などから、雌の竜を誘うフェロモンを乗せた香りを出すのだ。
「……それくらい……べ、別にかまいません」
シャルロットは咽るような雄の発情臭の中で、発情中の雄に抱きしめられる感覚を思い出し、肢体をふるわせた。
(……あの香り……感触……)
共に生活をする内に覚えたこの雄の香りを、シャルロットはいつのまにか好ましく思うようになっていたのだ。
元々、雌を惹きつける匂いであれば、間違いではないのであるが。
美しい執事と若い女主人は食後の休憩の為に、寛げる応接間へと向かった。
「英雄の振り下ろした真銀の刃が、悪の竜を切り裂いた……」
明るい日差しの差し込む応接間に、若い執事の透きとおった声が響く。
幼さの残る主人を膝に抱き、物語を唄う執事の影は、応接室にゆらゆらと揺れる。
まるで雛鳥と歌う親鳥のように。




