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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

景色

作者: こりら

僕がいつも見てる景色は同じものだ。あまり変わらない景色が僕の目の前にずっとある。


ある人が見ている景色はとても彩りが鮮やかだ。なのに僕の景色はずっと同じ色だ。僕はこれをどうにかしたいのだが、なかなか方法が見つからない。そしてこれからも見つかりそうにない。


そんな僕はこの飽きてしまった景色から逃げていく。



ある3月の曇っていた日だった。その日は大学の合格発表となっていた。その時僕は大学にいきたくなかったのだが、親に言われて受験はしておいた。当然のごとく落ちてはいるのだが僕は何も感じなかった。いや、落ちてることから逃げるため冷静を装っていただけかもしれない。何も感じないフリをしていただけかもしれない。


その当時僕はどこでもいいからどこか違うところに行きたかった。地元での景色も見飽きていたので、どこか違う土地、自分の知らない土地に行こうと思っていたので親には黙って隣の県までふらっと電車でいってみた。県外にあまり出たことのない僕は少しいやかなり興奮していたような気がする。

そこに着いたがいいものの、今夜の泊まる場所がなかったのでとりあえず街を回ってみることにした。地元の人間も何人かしか歩いてない場所なので、見て回る所は少ない。日がくれる前には一通り見て回ることが出来たため、回る途中に見つけた宿屋に入った。玄関を開けると、先に入っていた男女2人組の客がいたため少し待たざるを得なかった。するとむこうから声をかけてきたため顔を上げるとそこには小学校のクラスメイトだったa子がいた。

「ねぇ、小学校の時に一緒のクラスだった○○くんだよね?私a子なんだけど覚えてる?」

a子は優しくてかわいらしい子だっため、そんな彼女に惹かれてしまう男子は何人かいた。僕も少しだけだが好意を持っていた。放課後に一緒に遊ぶくらいには仲が良かったのだ。

「ああ、覚えてるよ。そちらの男の人は?」

出来るだけ愛想笑いをしながら答えた。だけどニヤけてると思われたかもしれない。

「この人は私の彼氏だよー、大学受かったから近場で旅行しようって言ってたんだ。○○くんは今何してるの?」

僕はなんとも言い難い胸の苦しみを覚えた。変な汗が全身から吹き出してきて、背中が脂汗でぐっしょりだった。早くその場から逃げ出したい想いに駆られたため、その言葉には何も答えることができずただただ後ずさりをするしかなかった。不思議に思ったa子がこちらの顔を覗いてきたが、僕はその場から逃げ出した。a子がどんな顔をしてるかはわからない。僕はどこか違う所へ行きたかった。


しばらく走ったため、完全に息切れをしていた。肺が激しく伸縮しているのがよくわかった。。心臓が悲鳴をあげていた。1分も経たないうちに正常な呼吸に戻ってきた。個人的に苦しい時に生きているのを実感できる。痛み苦しみがあるとじぶんは生きているように感じていた。なぜあんなにも動揺してしまったかが、自分ではあまり分からない。a子に自分は劣っていると思ったのだろうか。いや、そんなことはない。あくまでも対等であるはずだ。そう思っていたらスマホが鳴った。母親からだ。しぶしぶ電話を受けたら早く帰ろということだ。あまり帰りたくはないのだが、後が怖いため帰った。出来るだけゆっくりと


家に着いた時に父親と母親は怒っていた。落ちたことについて何時間も説教を喰らった。時計は既に12時を過ぎようとしていた。自分でも分かりきっているようなことを永遠と言ってくる2人にいい加減うんざりしていた。僕は強引に話を終わらせると自室に入った。


ベットの上に座り今日あったことを順番に思い出していた。それが終わると昔のことも糸が絡まっているのがだんだんと解けるように高校、中学、小学と思い出そうとした。あまりいい思い出がないように感じた。いや、人とはある程度話してたり何かしてはいるのだが、今思うととてもくだらないように思えてくる。自分のやってきたことの小ささに僕は落胆した。未来が見えないこれからの人生価値があるものができるのだろうか。自分は果たして生きている意味があるのだろうか。人の寿命長いようで短い。その間に何か偉大なことを残せるのはひと握りしかいない。それ以外の人の人生は無意味なのかもしれない。僕はそれ以外の人だった。自分は生きていて意味はあるのだろうか。これから先の人生に苦しいことがあるにも関わらず、自分の人生は無意味なのかもしれないのだ。僕はそんな苦労はしたくはなかった。

机の中にあったカッターナイフを取り出して自分の手首を少し切ってみた。少しの痛みとともに血が流れてきた。自分は生きてるように感じた。これから先何もない人生なのだから、一気に生を感じようとして深く切り裂いた。溢れ出て来る血は止まることを知らないようでフローリングの上にどんどん流れていた。自分の足が生暖かく感じてきた頃に、少し目眩がした。貧血というものだろうか、自分は今までしたこともなかったのでとても興味深かった。これでようやく違う景色が見れると想い安堵した。そして意識は薄れていき途切れた。


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