宇宙怪獣
「おのれ、ミロア、絶対に許さんぞ。八つ裂きにしてやる。」
宇宙空間において、千年以上の間、怪獣サガンが漂っていた。この世界を侵略しに来た最強の怪獣である。千年前、勇者と魔王が争っている頃、初代国王ミロアと戦い、敗北した。その後、宇宙空間を漂い、近隣の惑星を侵略し、ようやく帰って来た。
以前よりも強くなったので、今回は自信満々である。
「人間の寿命はさほど長くない。もうミロアは死んでいるだろう。」
彼はミロアのことを恐れていた。でも、もう死んだ。大丈夫だ。それに、今回はあらかじめ布石を打っていた。
「この世界の各地に怪獣の卵を産み付けておいた。それらが孵化すればイチコロよ。」
今回は絶対に負けない。
「はははははは、宴が始まるぞ。」
今は、誰も存在を知らないが、宇宙怪獣は強い。彼の本気が牙を剥き、運命が交差するときが来たのだ……
ー魔族領 とある空間ー
「いよいよだわね。全員、分かっているわよね?」
「俺たちが世界を支配する。」
「宇宙怪獣の時代は終わったのだ。」
「よし、かつての上司を倒すことで、昔の自分を越えなさい。」
マリアはジェルドたちの完成度を高め、怪獣の卵を各地に赴き、破壊する。生まれたばかりの怪獣はサイズも小さいし、魔力も少ない。
要は、雑魚である。
「過去の遺物はすべて排除よ。」
余計な邪魔立てはさせない。兄さんの晴れ舞台に怪獣は要らないのだ。
「魔王様、必ず我らジェルドが勝利をもたらします。」
「期待しているわ」
9人のジェルドが退出した。
「さぁて、こっちもボチボチ始めますか。」
宇宙怪獣ごときに手間取られるのも癪である。卵を破壊しつつ、人類への攻撃も並行して開始する。
「魔王様、宇宙怪獣本体はどうするのですか?」
彼はジェルド9号、ジェルドの中でも最強であり私の側近でもある。
「宇宙怪獣の本体は私が直に殺すから、心配しなくていいわよ。」
「ですが、宇宙怪獣はとてつもない強さー」
「そのための秘策はあるわよ。戦闘鎧の封印を解くわ。」
魔族領に眠る最強の鎧、バトル・アーマー。あまりの凶悪さで封印された鎧を野に放てば、魔族領はもう1万年は土地が荒廃するだろう。
周囲の魔力を食い荒らす最悪の鎧だ。だが、破棄されることはない。最悪であるのと同時に、神殺しを達成した最強の鎧でもある。
多少の不安はある。だが……
「安心しなさい。そのための私のスキルでしょう?」
その通りだ。魔王様のスキルがあれば時を進め、荒廃した土地の再生がすぐにできる。そして、日々魔王様は強くなっている。もはや、王族など敵ではない。
この調子なら戦闘鎧を着た魔王様お一人でも世界を征服できる。
他の奴らはともかく、私はこのお方について行くだけだ。
「いよいよね。この世界の覇権をかけた闘いが始まる。」




