旅のはじまり
俺はふかふかのベッドで一晩を越した。気持ちよかった。俺は自分が選ばれし特別な人間ではないかと錯覚していた。可愛い女の子の裸も見れたし、ここに来てから良いことしかない。俺はここでの生活にとても満足している。
ただ、一つだけ気になる点がある。イケメン率が異様に高い点である。俺は相対的に見ればブサメンの部類に入ることになる。だから、今日の朝は髭を剃り、顔をしっかり洗い、少しでもマシになるように努めた。
朝は朝食をゲスト用のダイニングで食べることになる。俺はあの子を誘いに部屋まで行く。少しだけラッキースケベに期待だ。
すると、メガネ君と部屋の前で出くわした。
「おや、ダイニングはあっちですよ。メガネ君」
「メガネ君とは誰ですか。僕の名前はノービスです。マサシは先に行っておいてください。ラッキースケベはマインでーす。」
このエロガキめ。彼女は俺の嫁だぞ。ふざけてやがる。
その時、ドアが開き、中から嫁が出てきた。
「おはよう、マサシ。」
彼女の声を初めて聞いたが、彼女をもう直視できない。顔が赤くなる。彼女の純真な声を前に、俺は自分が浅はかであったと知った。まあ、正確には、頭に響いているので声ではなかった。いわゆる念話であった。
「ところで、メガネを掛けた方、お名前を聞いてもよろしいでしょうか。」
「俺の名前はノービス・ヴィザードです。趣味は射撃です。今度、一緒にお茶でもいかがですか。」
「お誘いいただき、ありがとうございます。しかし、私にはだんなさまがいらっしゃるので、残念ながらあなたとお茶をご一緒にいただくわけにはいきません。」
人妻だったのか。確かに独特な色気があり、結婚していても不思議ではない。こんなきれいな女の子を嫁にすることができる男は相当なイケメンで大金持ちだろうな。
「私はマサシさまの物になりました。彼が私の夫なので、彼に従います。彼の許可なしにお茶には行けません。」
「オーマイゴッド。おい、クズ野郎、貴様は彼女に何をした。」
「何もしていないぞ。」
「いえ、マサシ様は私と契りを結びたいと言い、私は心も体も彼の物になったのです。」
「俺は貴様を許さん。覚悟しろよ。」
「まて、本当だから。確かに求婚したけどね、ちょっと待って、お願いします。」
普段、穏やかな人がキレると恐い。メガネ君は名前もノービスで、やはりアメリカ版の◯太君のように見えるが、実際にはかなり力が強かった。そして俺に馬乗りになり、殴ってきた。
しかし、名前も知らない彼女が俺のことを助けてくれた。しかも、一撃である。
「次にこのような狼藉に出た場合には、あなたを海の藻屑にしますよ、三下。」
三下に負けた俺は藻屑以下になると思うが。
「マサシさま、食堂に行きましょう。」
彼女が大理石の床を踏み抜きながら食堂へ行く。ちょっと待って。
「床を踏み抜いているぞ。」
「ああ、失礼しました。今は、痛覚の遮断をしていましたの。普通に歩くだけで足をナイフで抉られるほど痛いのですが、マサシ様が仰るのであれば、仕方ないですね。」
今度は歩く度に彼女の顔が苦痛に歪んだ。やばい、見ていると変な気分になる。
「待った、やっぱり遮断してくれても大丈夫だ。」
「ありがとうございます。やはり、貴方は優しい人です。私も貴方に一目惚れして良かったです。」
一目惚れ?この子は日本語を間違って覚えたのかな。確か、日本の米に似たような名前のがあったから、米に似た顔の奴という意味だろうか?
ダイニングに到着すると、ボブさんがポージングをしていた。
スルーして、俺と可愛い子ちゃんで朝食を取る。
「そういえば、あなたの名前は?」
「私には名前がないです。好きに名前をつけてください。」
名前がないだと?ひどい親だ、まさかこんな子を捨てたのか。まあ、酷すぎて笑えないよ。怒りまで覚える。彼女に名前をつけなくては。
「お前の名前はエレナでいいか?」
理由を聞かれたら、怒られるかもしれない。
「いい名前です。参考までになぜその名前にしましたか?」
「昔に飼っていた猫の名前だ。もう、死んでしまったのだが、死んだ時に俺は妹に子供ができた場合にはエレナと名付けようと約束しててな。お前は子供ではないがふと名前が思い浮かんだんだ。悪かった。」
俺はおそるおそる彼女を見た。怒るかもしれない。
彼女は嬉しそうであった。不思議である。
彼女が猫好きで良かった。死んだ両親も結婚するなら猫が好きな人にしろと言っていたので、俺は嬉しい。
まあ、エレナは見た目は15歳で、結婚できる年齢ではない。もう少し、世間を知れば、気が変わるかもしれない。だから、俺はその相手が見つかるまで彼女を見守ろう。
言うまでもないが、彼女の方が強いんだから守ることはできない。
俺たちは王様と午前中に謁見することになった。
今回はエレナの通訳つきだ。彼女は念話が使える。だから、王様の言葉を瞬時に翻訳して、俺たちに教えてくれる。さらには、俺たちが言いたいことも代弁してくれるらしい。第一言語の違う俺たちに合わせて英語と日本語の翻訳は同時進行で俺たち3人に対してやってのけるらしい。チートか。
「ふむ、小娘は昨日と違って今日は服を着ているのだな。そうだ小娘よ、今日の夜は俺様の部屋に来い。寵愛を与えてやる。」
下品なスケベ爺だ。気持ち悪い。
「下品なスケベ爺だ。気持ち悪い。」
「貴様、俺様を侮辱するつもりか。許さんぞ。」
言っていることがまさに絵に描いたような豚だな。って、俺の思ったことが相手に伝わっているよ。
「言っていることがまさに絵に描いたような豚だな。ってー」
「騎士団長、あの薄汚い男を始末しろ。」
「はっ。王命ならば、成敗しましょう。」
「スキル 暗黒郷の太刀」
「スキル 昇華」
エレナは騎士団長の神速の攻撃を迎撃した。俺は周囲が暗くなったこと以外に何も分からなかった。騎士団長は手傷を負っており、逆にエレナは無傷であった。
国王は目を見開き、嬉しそうであった。
「国王陛下、この女はアレクセイ王子と同じスキルを有しております。ただ、力量に関しては王子には到底及びませんが、王族に比肩し得る力です。私、一人には手に余ります。」
「アレクセイのスキルが俺様のコントロールできるレベルの器になったということか。よし、もう魔王の討伐などどうでも良い。あれは俺の女とする。他の奴等は殺せ。王国騎士団の総力を挙げてでも任務を遂行しろ。王子にも通達を出せ、あれを捕まえた者を正式な後継者とするとな。」
王子たちは全員、既に王の後継者であり、これは捕獲を無償でやれと言っているのと同じことである。
当然、捕まえて女を孕ませた後には他の王子はお払い箱である。
「逃げるよ。」
彼女は俺、ノービス、ボブを抱え、ダッシュでその場から退避した。そして、
「スキル 発動 瞬間移動」
瞬きしている間に王都に出ていた。そして、彼女は俺たち三人を王都の外に投げ飛ばし、落下する前にキャッチしてくれた。足も早いし、力も強すぎる。王都は半径10キロメートルはあるぞ。
「まずはカッパから探しに行くよ。」
俺たちは気づいたら数分前までいた王宮を離れ、都の外にいた。そして他に行くところもないのでエレナの後を追いかけ、旅に出ることになったのであった。




