王子ご乱心
「ダメだ。お前は私の次期後継者、チェスで言えばキングだ。動いてはならない。」
「父上、私一人が動けば全て解決します。次期後継者の地位よりも民の命を守ることが大事です。」
王国騎士団長と宮廷魔術師団長は王子がスキルの開発で王都の中にあるパンを消失させ、人々の生活を困惑させ、町のパン屋に至っては絶望を味わせたことがまだ記憶に新しい。まあ、原材料の小麦の方は無事だったから幸いしたが、この気まぐれな王子が動いて死屍累々が築かれるリスクの方が大きい。阻止である。
「ダメだ。お前は民が安心するようにお飾りでも城を離れてはならない。」
アレクセイ王子は他の兄弟以上に、自由がない。
彼は王国でもっとも美しい王子だ。彼は生まれてすぐに何もせずともスキルが勝手に発現したので言葉も魔法も剣術も学問も全てにおいて努力しなくとも世界一であった。
彼は生まれてから全てのスキルの性能テストを受け続け、自身の優秀さを我々に示した。騎士団長が王子と初めて会ったのは彼が5歳の時であり、得意の剣術で全く歯が立たなかった。
生まれながらの天才である
「父上、私は誰よりも力があります。今、その力を使わずにいつ使うのですか。」
アレクセイ王子は生来、いたずら好きな少年であるが、一度だけ家出をした時のことを除いて、自らを律しているのであった。そして、家出して以来、王子は勇者と魔王の著作物を読み、しばしば勇者になりたいや、魔王と戦いたいと数年前からしばしば言っている。アレクセイ王子は我慢しているのだ。
「お前はとっとと誰でも良いから女を侍らせ、子供を作れ。それがお前にできることだ。会議に出る暇があったら女でも作っておれ。」
王子はかつて欲情したことがあると聞いたが、彼は一度言ったきり、私と宮廷魔術師団長以外の誰にもそのことは言っていない。まあ、事情は分かる。
社交界では王子の蔑称として、種無し馬というのがある。王子は見た目は子供だが18歳である。そしていまだにお相手がいないのだ。普通の王族であればもう政略結婚で奥方もいるはずだが、アレクセイは自分の体を子供に退化させ、結婚をボイコットしている。
巷では男色であるという噂まである。そのため、子孫を残さないアレクセイ王子を廃嫡するべきと考える貴族もごく少数存在する。
アレクセイの弟のスレイド王子は既に子供もいらっしゃり、奥さんもたくさんいて、国王はしょっちゅうスレイド王子の子供を政略結婚で他国に出している。 こちらの方が国王にふさわしいと考える貴族もいるのだ
「私に女を作れと。はい、わかりました。」
空気が変わった。何をするつもりだ、王子。
「相手は私が見つけてきます。」
「好きな相手を選ぶといい。既婚者でも構わん。妾ならな。」
「いいえ、私は王子をやめるので、妾を持ちませんし、あなたの指図はもう受けません。」
場にいた全員が驚愕した。そして、会議にいた4人の王子はほくそ笑んでいた。
「貴様、俺様の国に仇なすというのか。」
「いいえ、この世界では王子という肩書きとスキルのせいで世界のどこにいても私に平穏はないでしょう。」
「この恩知らずめ、国境を越えられると思うな。」
国王は王子が国を滅ぼしに来ると思っており、二人の話が噛み合っていない。
「国境は出ません。私は異世界に行くのです。私は勇者になりたいのです。」




