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挿し木

「どうやら、()()()()1()()は死んでしまったようだな。まあ、想定内ではある。」

「あいつはジェルドの中でも最弱、大目に見てやってください。」


 魔族領のとある空間でマリアと()()()()()()()()が会話していた。


「元は貴様たちと同じであったのだがな、魔族は()()すると形態と強さがこうも大きく変わるものだと知らなかったわ。だからこそ、育成するやりがいもあるというものね。」

「ええ、私たち自身もここまで飛躍的に強くなれるとは思っていませんでしたよ。全ては魔王様のおかげです。」

「まあね。成功するのは分かっていたけど、()()まで引き継げるとは思わなかったぞ。()()()で実行した時には記憶も経験も引き継げなくてがっかりしたから少しだけ羨ましいわよ。」


 私は小さい頃に私の歯から私自身を複製したことがある。その時の両親と姉の反応が凄かった。そして彼らは私を恐れたのだ。


 ちなみに弟はその時まだ赤ちゃんだったので覚えていない。だから、彼は小さい頃私によく突っかかってきた。めんどくさかった。


 そして、私のクローンはサリアと名付けられ、今は冒険者をしている。弟は家族の中で唯一彼女のことを妹だと思っている。


 人を作った私は家族の中で異物となった。彼らが私のことを好きではないので、私も現世の家族にあまり愛着がない。


 当時の幼い私は異世界の基準についてなにも知らなかった、というのがクローンを作った言い訳である。


 私の唯一無二の(ユニーク)スキル「再生(リバース)」は世界最強クラスのスキルであるとやがて知った。このスキルは限定的ではあるが、時間を支配することができる。このスキルは自らの時間を操作することや周囲の空間に干渉し、時間の流れを操作することを造作もなく行える。


 おそらく前世でアニメを録画して見ていたのがスキルの発現に影響したのだろう。そして、「早送り」と 「巻き戻し」が再生スキルの技の中で私は最も得意だ。折角なので、私のスキルについて詳しく話しましょうか。


 早送りは文字通り、私が通常時の何倍もの速度で動くことを可能にする技だ。ただし、早送りし過ぎると体がしっぺ返しを食らうので注意が必要だ。しっぺ返しを食らった時の対処としては、録画したアニメのコマーシャルを早送りし過ぎた時と同様に、巻き戻しをすれば良い。巻き戻しをしたことがある方ならわかると思う。例えば特撮などで怪獣に壊された建物も巻き戻せば元に戻る。これと同じことが私の体では起こせるのだ。


 私が本気の戦闘をするときは自身の体が何度も弾けては巻き戻しを繰り返しながら戦うので、結構グロテスクだ。


 前置きが長くなったがここからが本題である。


 話は少し前に遡るが、私は巻き戻しで心臓だけの状態である魔王を復活させた。千年の間、心臓が動き続けた魔王の生命力には脱帽している。この時、魔王の記憶がなくなっているのではないかと思ったが、彼の口は達者であった。どうやら、魔族と人間は根本的に記憶の蓄積の仕方が異なるようだと知った。その時から、挿し木の要領で魔王を増やしたらどうなるのかが気になった。


 魔族全員という訳ではないが、ジェルドは指が切れてもまた生えてくるので、罪悪感もなく私は彼の指の第一関節をいただき、それを巻き戻した。そうしたら、ポンポン魔王が10人も増やせたので驚きである。だが、このまま王宮に突っ込んでも返り討ちに会うだけなので、ジェルドには修行が必要であった。


 そして、彼らジェルドシリーズには私のスキルで作成した擬似的な「精神と◯の部屋」、私はこれを「とある空間」と呼んでいるが、の中で他の魔族と一緒に修行してもらった。空間内の時間の流れは空間での10年が外での1日に相当するように調整した。魔族はほぼ不老不死なので、寿命はあまり気にしなくて良い。10年にしたのは今の私の力の限界であり、もっと私が成長すれば百年や千年に出来るかもしれない。


 私のスキルが作成した「とある空間」には今もなお多数の魔族が各々の肉体を鍛えている。彼らにはそれぞれ私が作ったトレーニングメニューをこなしてもらっている。


 トレーニングは様々な外的刺激を与えながら、実施している。そして、空間の気温管理は魔族にやってもらっている。ドラゴンボ◯ルの修行をかなりパクった自覚がある。しかし、重力だけは調整できなかったので、重いリストバンド等で代用した。


 こうして、50年ほど彼らには修行してもらった。私は可能な限り、数年に一回は指示を彼らに出し、成長してもらった。


 想定外だったのが、ジェルドが数十年の修行で進化したことだろうか。そして、元は同じジェルドでも見た目、性格、強さに大きな隔たりが生じた。


 そして、私は11人のジェルドの内、最も成長せずに弱かった個体に此度の任務を任せることにした。それがジェルド1号ことオリジナルである。彼はクローンを死者蘇生と同様に考えたのか、死を恐れることなく任務を引き受けた。


 しかし、それは勘違いである。たとえ王子であっても死者蘇生はできないはずだ。限りなく近い個体が作り出せても、死者と私たちが交わることがないのと同じく、別物なのだ。


 私はオリジナルにこのことを詳しく話して、諭さなかった。なぜなら、オリジナルのジェルドはクローンを見下し、自らを成長させなかったからだ。私は彼が死んだとしても仕方のないことであると思ったのだ。


 前もって彼らには言ったが私はこれ以上ジェルドを増やさない。私は兄さんに会えれば良く、人類の征服を第一には考えていない。それに、彼らの中には()()()()しようと考える個体もいるようなので、これ以上敵を増やす真似はできない。それに今いる彼らは十分に面白い。兄さんが現れるまでの暇潰しだ。楽しもうじゃないか。

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