結婚
周りの人達は魔王復活の件で大騒ぎしていましたが、俺はそれどころではありませんでした。
俺はジェシカの両親に馴れ初めの事情を素直に話したら、殴られました。俺はジェシカと事前に示し会わせることを提案したのですが、家族に嘘を吐きたくないとのことでしたので、答えてしまったのです。話と違います。親父さんは優しくなかったです。
そして、私は親父さんが怖くて、ジェシカの良い点を聞かれたときについ「体」と答えてしまい、その後は大変でした。
ジェシカ本人が結婚することを決めていたのと、俺の土下座が効いたのか、あるいは来年度の王国騎士という肩書きのおかげか両親がOKしてくれたので、結婚することになりました。俺は今回の件でコミュニケーション障害の弊害を感じました。
結婚式はジェシカの地元でやることになりました。その日まで村に滞在です。でも、ジェシカにはノータッチです。親父さんが怖いです。この村は、俺、いや俺という一人称は偉そうなので私、に対する敵意で溢れています。どうやらジェシカは村で愛されていたようで、村の男どもが私を視線で殺そうとしてきます。そして、女性に至っては私を汚物であるかのように見てくるのです。最悪です。
手紙で私の数少ない友人を結婚式に呼び寄せることにしました。こういう時こそアーサー君のお出ましです。枯れ木も山の賑わい、ついでに槍の勇者とデイヴにも来てくれるように頼みました。私自身の評価を上げるために友達の力を借りるのです。
さらには、ダメ元でしたが、クレア様にも手紙を出しました。彼女は今は実家を出奔して一人で暮らしているらしいです。どうやら、彼女は一年の部が終わった後にご家族と喧嘩したようです。反抗期ですかね。私が偉そうに余計なことを言ったせいでしょうか、ご家族には大変申し訳がないです。まあ、今回の結婚式は社交界最強の金髪ドリルの力を借りましょう。一応彼女とは中等部からの縁があります。
忘れそうになりましたが、私の両親と兄弟も呼びました。事後報告ですが、ジェシカはとてもいい女なので、問題ありません。
そして、結婚式の日がやって来ました。村中の注目が集まっています。私に対してではありません。アーサーとクレアにです。彼らはその顔面偏差値の高さで田舎の男と女を圧倒しています。ざまぁ。
特に意外だったのがクレアの髪形です。金髪ドリルではないのです。どうやら、一人暮らしをし初めてから髪のセットが面倒になったようです。髪がストレートだと清楚に見えます。
既婚者も含めて男どもはクレアに厭らしい視線を向けています。どうやら、視線誘導には成功したようです。まあ、彼女は嫁のいる俺でも見惚れる程である、田舎モノには刺激が強いようだ。ところで、ジェシカさん、私をつねらないでください。
アーサーはさっきからクレアの腰に手を回して、イケメンスマイルで嫁宣言をしようとしていますが、巧みにクレアは回避しています。さすが、社交界最強。次期王妃候補と呼ばれるだけあり、かわし方が神である。女たらしのアーサーが翻弄されています。
クレアは若い女から美容関係の質問をされており、丁寧に答えています。彼女は中等部の頃から面倒見が良く、彼女の人柄を尊敬する取り巻きが多かったと思います。でも俺はリア充が苦手なので彼女と最近までほとんど関わりがありませんでした。
私の家族はジェシカの母親のところにいます。ジェシカの父親はガシッと弓の勇者の肩を掴んで話しています。彼女が縮こまっていますが、きっと気のせいでしょう。
現世での結婚は村の中でのお食事会のようなものでした。貴族の女性ならドレスを着るのでしょうが、田舎なので、女性はもっとカジュアルな服装です。男性は仕事着の方もいます。畑仕事や山での仕事の後にやって来たのでしょう。
ジェシカの友達は俺と結婚することになったジェシカを見て、涙を浮かべる方がいました。少し寂しいのでしょう。決して私と結婚することになったジェシカを憐れんだのではないと信じています。
という訳で、結婚することになりました。




