どうしてこうなった
結論から言うと、私は取り返しのつかないことをした。急いでガリウス君の後を追いかける。このスキルは非常に危険だ。知り合いには間違っても使ってはならない。
まあ、私に好きな人ができたら使うかもしれない。でも今はそんな事、どうでもいい。
矢の効果が解除されるのは午前0時を過ぎてからだ。それまでジェシカに身を隠してもらうしかない。私は必死に走った。なんせ私は友達を裏切ったのだ。泣きながらガリウスの後を追いかけた。
まだジェシカとアーサーは戦っていた。少しだけジェシカはアーサーに押されているようだったが、どちらが勝つのかは分からない。もう、この際にはアーサーを矢で攻撃して、彼にガリウスを止めてもらおう。もう、それしか手がない。
「BLアロー」
「神滅の太刀」
残念ながら、私の矢は見えても見えなくともアーサー君には効かない。そうしている間に、ガリウス君は二人の戦いに割って入っていた。
「どけ、アーサー。彼女は俺のものだ。スキル発動」
「え、何だ、って、ぎゃぁぁぁぁ」
ガリウス君がアーサー君を殴り飛ばした。アーサー君は数百メートル程吹き飛んだだろうか。
「なんだお前ら、仲間じゃなかったのか。それにしても強いな、お前。」
「ジェシカぁぁ、大好きだ、俺の子を産んでくれ。」
「え、え、え///」
このままではジェシカが心に深い傷を残す。血迷った私は双方の合意があればまだ大丈夫だと思った。そして、予想外の行動に出た。
「ジェシカ。私を信じてこの矢を受け止めて、NLアロー」
後の祭りである。もうどうしようもなかった。私は同級生を盛った獣にした挙げ句、親友を裏切ったのだ。私は涙が止まらなかった。
せめて、誰にも見られないように毛布を彼らの上に掛けてあげた。そして、周囲の雪を火属性魔法で溶かしてあげた。これくらいしか、出来ることはない。
ついでに虫の息のアーサーのことを私は回復させた。
―同時刻 王宮の一室―
軍のトップの二人が水晶に映る光景を食い入るように見ていた。
「これはひどいな」
「そうですね。でもあの能力をうまく使えば敵が攻めてきたときに同士討ちにできますからね。良い能力ですね。」
「それもそうなのだが、どうしてこうなった。」
騎士団長は例年を遥かに超える死者数や男女の淫らな行為が原因で高等部の進学希望者がますます減るのではないかと危惧していた。
「何か面白いことでもあった?」
突如、後ろから彼らは声を掛けられた。
「王子!なぜここにいるのですか。」
「いやー、これはひどいなとか聞こえたら気になるじゃない。」
「地獄耳ですね。」
「それはそうと、あの毛布の中でズッコンバッコンやっているわけか。若いね。」
「そういえば、王子に性欲はあるのですか。」
「貴様、王子に対して無礼だぞ。」
「んー。実はあんまりないんだよね。王族だからかな。いつでも誰とでも僕は契りを結べるし、それに僕は兄弟たちの中でも特別だからね。死がとても縁遠いんだ。本能的に子供を残す欲求が欠如してるんだ。勿論、こういった欲情する経験がない訳じゃないよ。」
「王子、今の最後の発言は少しだけ、いや普通に問題発言ですぞ。」
「お相手は誰ですか、王子」
「君たちが会えない相手だからね。安心してね。それ以上は教えない」
とにもかくにも、どうしてこうなった。




