弓の勇者
私はエリーゼ。巷では弓の勇者と呼ばれている。絶賛彼氏募集中だ。ただし、イケメンに限る(笑)。現世でも彼氏いない歴=年齢の喪女である。
私は平民の出でスキルがないと思われているが、ある日スキルに目覚めちゃったのである。大会の一週間ほど前の話である。拳の勇者ことジェシカに顔面パンチを喰らった私は怒りと一緒に前世の記憶を思い出したのだ。その際にスキルも何か使えるようになりました。
すると、どうだろう。クラスメートが皆王子様に見えてきた。というのも、異世界では皆容姿が前世以上に整っているのだ。それまでフツメンで射程外だったガリウス君も前世基準では普通にイケメンだ。略してフツメン(笑)。ちなみに、アーサー君はイケメン過ぎて、逆に無理。
ここが乙女ゲームの世界だとしても何ら不思議ではない。もう、この際、私のことを好きになってくれる人なら誰でもよいのではないかと思う。
だから、殺意と剣を振り回すのはやめませんか?
「神滅ぼしの太刀」
「魔神拳」
前世基準では拳が剣と戦えるわけがないと思うかも知れませんが、そこは異世界クオリティーです。魔力で強化された肉体は鋼鉄以上の硬度を誇るのです。
私の目の前で2人が目にも止まらぬ速度で戦っているようです。ガリウス君は遠くから見ています。手を出さないようにアーサー君に言われたようです。
ちなみに私はさっきからパシュパシユ弓矢でアーサー君を攻撃しているのですが、アーサー君はことごとくを打ち落としてきます。はい、無理ゲーです。というか、スキル死ねなんて物騒なこと言わないで下さいませんか?そもそも、スキルのないあなた達がわざわざ技の名前を言う必要なんてないですよね。中二病ですか?
「ガリウス、お前は鬱陶しい弓の方をぶち殺してこい。」
どうやら、ガリウス君がついに参戦するようです。まずは、この場から離れることにします。ひたすらダッシュです。
「逃げるな。待ちやがれ。勝負しろ。」
「来んな、キモい、痴漢、うざい。」
ん?言葉による攻撃はどうやら有効のように見える。目に見えてガリウス君は落ち込んでいるぞ。
私は前世から口が悪い。自分のことは棚に上げてブサイクな男子のことをバカにしていた。現世では美形に生まれたが、口の悪さは直らず、相変わらずモテない。
ガリウス君は剣を握りしめ、私のことを斬ろうとしてくる。男の人がか弱い乙女に対してやって良いことではない。私が彼を成敗しなくては。
「スキル発動 大好きなあの子に愛を」
「スキル発動 勇者キラー」
彼が何かスキルの発動をしようとしているが、何も起こらない。私は唯一無二スキルを発動した。私のスキルは不可視の魔法の矢が相手を貫くことで効果を発揮する。ガリウス君は最初の一撃は避けた。運が良い。
このスキルの発動中に私の魔力で形成された矢、通称「魔矢」を喰らった場合にはガリウス君は私が決めた任意の相手に対して欲情し、襲いかかる。このスキルは前世の私が恋愛マンガが好きであったことに影響され、発現したのだろう。
私はとても優しいので任意の相手はアーサー君に決定だ。現世では恋のキューピッドに生まれ変わった私は彼らの恋の後押しをする。まあ、リアルのボーイズラブは見たくないので私が見ていないところでお願いします。
「避けるな。動きがキモい。」
「うるさい。クソビッチ。」
一瞬だけど胸がドキッとした。まさか、私がビッチに見えるなんて。あの男を取っ替え引っ替えするビッチに。少し嬉しかったのは内緒だ。
「喰らえ、顔面パンチ」
「BLアロー」
気付いたらガリウス君が目の前に肉薄していた。彼はあろうことか私に顔面パンチをしてきた。そのため、ジェシカのことを思い出した上で矢で攻撃してしまった。私の矢はあろうことかガリウスがジェシカに欲情するようにセットされた。
これはまずい。一度矢で攻撃すると変更は3時間はできない。倦怠期の夫婦と居酒屋で喧嘩しているおっさんで試したから間違いない。
「ジェシカ、ジェシカ、ジェシカ、ジェシカ、はあ、はあ、はあ、」
やばい、真面目にキモい。というか、私の顔も痛いし、泣きたいよ。どうしよう、ジェシカ、ごめんなさい。
「うおおおおおおお」
俺は走る。これこそが真実の愛だったのだ。




