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交代

 アーサーは徹夜して眠くなっていた。だから、朝の5時にガリウスを起こし、自分はテントの中の寝袋に入り、眠りについた。ガリウスは良く眠れたので調子は良かった。ただ、早起きしたので昼寝は必要だろう。後でアーサーに打診することを考えた。


 その前にまずは、朝食だ。パンにジャムを塗って食べた。アーサーからテントの周囲に魔道具が仕掛けられていると聞いたので、テントの外に出るのはまずい。だが、トイレはどうするんだ?大きい方がしたくなってきた。テントの中で出すと臭くなるだろう。では、どうするべきか。

 まあ、こんなこともあろうかと袋を用意したのでその中にすることにした。幸い、下痢ではなかったので、袋を縛ると、臭いはそこまで漂ってこない。


 それにしても、今はすることがない。今日の夜は死闘であるらしいが、アーサーが遅れを取るとは思えない。きっと、最後まで俺たちが残るだろう。()()()()()()()()()()()()。3日目の組は皆、この大会を制すること目的とし、2日目までの有象無象とは別物であったことを俺は思い知ることになる。

 そうはいっても、未来のことは分からなかったので、アーサーが起きるまで暇を潰すことにした。俺は本を持ってきていたので、読書することにした。俺が持ってきたのは勇者と魔王の戦いを描いた物語だ。このミロア王国に伝わる勇者と魔王の戦いを描いた物語は色んなバージョンがあり、クオリティの高い作品が多い。今、俺が読んでいるのは王道バージョンだが、一番のお気に入りは勇者が夜の勇者になってお姫様や聖女様や女神様、さらにはサキュバスや魔王に至るまで聖剣で攻略するバージョンだ。俺はあの本にはかなり世話になった。無論、王道タイプもかなり好きだ。俺は噛ませ犬キャラが登場する作品が好きだが、イケメン主人公が無双する話も嫌いではないのだ。今読んでいる物語の勇者と魔王がカッコいいのだ。何よりも面白いのは、この物語が勧善懲悪のストーリーではなく、それぞれ勇者と魔王の視点からヒューマンドラマを演出しており、彼らが戦うことになる運命とも言うべき宿命がストーリー上では描かれるのだ。

 ストーリーのラストで魔王は千年後の復活を予言するが、復活した魔王は今の時代の人間をどう見るだろうか。失望するのだろうか。現代の人びとの多くは魔王のカリスマ性に畏敬の念を抱いており、国の体制に不満を持つ人びとは特に魔王の復活を嘱望している。さらには、人類の天敵である魔王が救世主になると考える人もミロア王国では少なくない。俺もぜひ、もし魔王が居るのならば、会ってみたいと思う。


 ―大会 3日目 同時刻 とある神殿―


「がっかりね。あなた(魔王)には期待していたのだけれど、弱すぎるわね。もう、魔王は交代(チェンジ)ね。」

「バ、バケモノめ。我を復活させたかと思ったら、我に戦いを申し込み、本調子ではないとはいえ、一瞬で我をミンチにするとは。まさか人間風情がこの千年の間に我の強さを超えたというのか?」

「はあ。あなたって本当に魔王なの?私は最悪あなたに殺される覚悟までしてあなたを復活させたのに、これじゃあ、()()()が討伐しに来る訳がないじゃない。弱すぎるんですけど。(アーサー)でもあなたに勝てそうだわ。」


 マリアは兄さんほどのダメ男であれば、転生したのなら前の世界から見て異世界であるこの世界においてはチートになっているはずだと考えた。そして、世界の危機の際に颯爽と現れるのではないかという結論に至った。そのため、意図的に世界の危機を引き起こし、兄さんを引きずり出すことにした。もちろん、兄さんも前世とは姿形が異なることが考えられるが、私の目は絶対に欺けない。仕草や行動から看破してやる。

 そういえば、この世界では兄さんと私に血縁関係はない。そうすると、兄さんといけないことをする関係になってしまうのではないか。表情がニタニタしてきてしまう。


「おい、お前、何がおかしい。笑うな。」

「うるさいわね。元魔王は黙ってなさい。私はこれからのことを考えているのよ。」


 元魔王は何か喚いているが、無視である。ふと気付いたが、兄さんがチートになった場合には異世界でハーレムを形成するかもしれない。そうはさせない。兄さんは私だけのものだ。兄さんにすり寄る雌ブタには鉄槌を下してやろう。まあ、まだ少し先のことである。まずは魔王の威光を示す軍隊が必要だ。そのためにも現時点で衰退している魔族をかき集め、訓練を積ませた上で強大な軍隊を作らなければならない。適任者が見つかるまで、私が代理で魔王をやるしかあるまい。軍の人材集めには骨が折れるが、鍛錬を積ませることに関しては問題がない。魔族は長寿であるのも良かった。私の()()()を使えば一瞬にして精鋭部隊を作り出すことができる。魔族は長寿であるために怠惰な点が問題であるが、それは私が矯正してやろう。


「それでは、元魔王よ。お前にはこれより魔族の人材を集めてきてもらう。魔王様が復活したと言えば勝手に集まるにちがいない。私の側近としての働き、大いに期待している。」

「人間風情が我に指図をするな。我にとどめを刺さなかったこと、後悔させてやる。」

「そういうのは良いから。頑張って集めてきてね。」

「あばよ、ゴリラ女。首を洗って待っていやがれ。」


 元魔王をその後見た者は誰もいない……

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