前世のおさらい
俺は噛ませ犬が好きだ。なんというか、負け犬キャラの方が主人公よりも魅力があると思うんだ。漫画とかでも噛ませ犬がいるから新しいキャラの魅力が引き立てられるし、俺はたとえ才能があったとしても、負け犬になりたい。というか、面倒なのは嫌いだ。
ある日突然目が覚めたら異世界にいたとして、周りの召喚された勇者よりも高い適正があることに気づいた俺は、本気の噛ませ犬を目指して突き進むだろう。
一条海斗は平凡な日本人を自負している。ボッチで運動音痴の高校生であり、勿論幼馴染みはいない。勉強は平均より上で、ネット小説やアニメを嗜むフツメンであることに自覚をもっている。
また、学校のクラスメートの顔と名前は一致しておらず、同じクラスの山下美佳子のことをねっとりと遠目から眺めるのが日課であった。彼女は小柄で陽気な少女であり、数回ほど会話をした仲であった。
彼女には彼氏がいるため、一条海斗は告白すらしていない。一条はいわゆるコミュニケーション障害と呼ばれる部類の人間であった。
幸い、いじめられることもなく、そこそこの進学校に進学しており、落ちこぼれではなかった。
ある日、休み時間の教室が爆発してクラスにたまたまいた一条とその他の生徒は命を落とした。