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第七話 もっと悪人面を勉強しなさい

実は昨日を心の中で締め切りにしてたんですが遅れました、ごめんなさい!


「それでは作戦会議を行います、舞さんはその眼鏡を黒く塗った物を

外してください」

この世界にはサングラスは無いらしく、自分で作ったらしい。

「お前それ何も見えてないだろ」

「見えてるか見えてないかはこの際関係ないの、こーゆうのは形から入るのが

大事なのよ、あと私の事はエージェント舞と呼びなさい」

形より実用性のある眼鏡をかけて欲しいのだが。

「今回お二人に尾行してほしい人物はクラウスという兵士です、今回この

人物がドラゴンの卵の運搬を任せられたんですが、このクラウスが闇市の者と

内通しているという情報が入りました」

何か本当にスパイがやる仕事みたいだな、俺もエージェント啓太と名乗ろうか。

いや・・・ダサいからやめよ。

「今からもう捕まえちゃダメなんですか?」

「今回の尾行はこのクラウスを捕まえる事が目的ではなく、闇市の人間である

ファースを捕まえる事が目的なんです」

俺達に現行犯逮捕が出来るのだろうか。

自慢じゃないが俺は誰でも倒せそうな奴代表だぞ?

「啓太大丈夫よ、この私がそりゃもうビシッとやってあげるから!」

本当に大丈夫だろうか・・・コイツが一番不安だ。

「それでは説明は以上です、質問はありますか?」

「いつから尾行を開始するんですか?」

「この後正午からです」

今日からなのか、心の準備が・・・いや大金がかかっているんだ。

俺はもう出来る限り働きたくない。

「分かりました、絶対捕まえてみせます!」


俺達が尾行する相手であるクラウスは正午にギルドに現れた。

「それではドラゴンの卵確かに預かりました」

クラウスは兵士にしては細身で身長は低く真面目そうな人間だ。

本当にこんな人が仕事より自分の利益を取るだろうか、むしろそんな人を

許さなさい人間に見えるが。

「臭う・・・臭うわ、あいつから悪の臭いがプンプンするわよ」

俺もお前から何か臭うよ・・・

クラウスは馬車に乗り門を出た、俺達も事前に用意していた馬車に乗り込む。

距離が離れないように馬車に乗っているが実際乗っている時間は三十分ほどで

その気になれば徒歩でも大丈夫な距離だ。

「啓太!!すっごい大きい鳥が飛んでるわ!見て!ねぇ見て!!」

「うるっさいな!仕事に集中しろスパイマスターだろお前!!」

王都から出たことのない俺達にとってかなり面白い風景なのだが、舞の

はしゃぎ方は以上だ。

「お兄さん方、王都から出た事ないのかい?」

御者のおじさんが物珍しい人を見るかのように話しかけてきた。

考えれば冒険者という職業なのに王都から出たことが無いというのが

何ともおかしい話なのだ。

「そうなんですよ、草原が広がってて気持ちいいですね」

「昔はここも木々がたくさんあったんだけどね~色々あって今ではこんな

感じになっちゃったんだよ」

色々というワードが恐怖心を煽るな。

「そうなんですか、街まではあとどれくらいで着くんですか?」

「十分くらいかな、兄ちゃんも後ろのお姉ちゃん起こして準備した方が良いよ」

俺がその言葉にビックリして後ろを振り返ると舞は見事に熟睡していた。

こっちが緊張している時にこんな事をされると緊張が和らぐというが、俺は

素直に腹が立ったので頭を軽く叩いた。

「痛っ、何すんのよ、ちょっと緊張感が無いんじゃないの?遊びたいなら

帰ってからにしてよね」

「緊張感が無いのはお前だ!もう着くから起こしてやったんだよ、てかお前ってば

よくこんな状況で寝れるよな」

「私レベルになるとどんな状況でも寝れるに決まってるでしょ、啓太が男のくせに

繊細過ぎるのよ」

「レベルの上げ方間違えたんじゃないのか?とにかく気を引き締めろよ」

ドラゴンの卵が取引される街は王都から近いわりには小さい街だった。

むしろ街というより村に近い小ささだ、ここなら悪い奴が潜伏してても

不思議じゃない。

「おじさんありがと、また何かあったらよろしく」

「兄ちゃんも尾行頑張ってくれよな!」

「お。おう、ありがとう」

かなり内密なクエストのはずなのだが、ここまではっきり尾行と言われると

少し恥ずかしくなってきた。

ほんの少しおじさんも笑ってた気がする。

「啓太、クラウスが移動したから私達も行くわよ!」

「・・・うん・・・わかった」


疑惑のクラウスは街入ってから妙に周囲を気に出した。

「典型的な悪人の仕草ね、私もう突撃しても良いかしら?」

物陰から舞が今にも走って行きたそうにしている。

「止めろよ、もし突撃なんてしたら俺がお前を捕まえるからな」

「なんでよ!私は知ってるわ、昔万引きを目撃した時の犯人も同じような

動きをしていたわ」

コイツ昔からそんな事をしていたのか。

「だとしてもだ、取引の瞬間を捕まえないと意味ないだろ」

「そうですよ、今捕まえたら今までの苦労が水の泡ですよ」

「ほら、ティアナ様もこう言って・・・え、何でティアナ様がいるんですか?」

いつの間にか背後に黒いローブを羽織ったティアナ様が立っていた。

その黒いローブは逆に目立つと思うのだが・・・

「アンネさんが舞さんが心配なので着いて行って欲しいと言うので」

「何よ皆、私こう見えても強いんだからね?あんなヒョロいのに負けないわよ!」

アンネさんの心配は舞さんの安全が心配じゃなくて舞さんがまた馬鹿をやらかして

尾行を台無しにしないかの心配だろ。

「あ、二人ともクラウスが移動しましたよ!」

「誰か探してるような感じですね、もうファースが来るんですかね」

あれ、クラウスの見た目とかは聞いてたけど肝心のファースの情報を

全く聞いてなかったな。

「そのファースって名前以外、容姿とかの情報は無いんですか?」

「実はですね・・・無いんですよ」

「何も?」

「何もです、王都の中でも重要指名手配の人物でして・・・」

「え、そんな人物を俺達に捕まえさせようとしてたんですか?自慢じゃないです

けど俺達そんな大人の責任感とか無いですよ?」

自分で言ってて悲しくなるが。

「そこらへんは大丈夫ですよ、いざっという時はこちらに考えがあります」

考え?なんだろう、出来る限りは俺達で頑張りたいがその考えが気になる。

「二人とも集中してよね!あれがファースじゃないかしら」

お前に言われたくねーよってあれ?

「・・・あの人ですかね?」

「・・・あの人っぽいですね」

「・・・あの人だわきっと」

そこに現れたのは重要指名手配という肩書にそぐわない見た目というか。

五十歳くらいのおじさんで髪型は見事にハゲている、頭部の両側に少量の髪を

残しながらもそれを感じさせないくらいのハゲだ。

「あんなハゲた方に我が城が脅かされてたと思うと私何か心に感じる物が

あります」

ティアナ様はポケットから取り出したハンカチで涙を拭っている。

「な、何かすごい魔法とか使えたりするんじゃないんですか?油断は禁物です」

「私ちょっと文句言って来るわ、何か無性に腹が立ってきた」

「おい待てって」

あ~行っちゃった、もう収集がつかん。

「ちょっとアンタが指名手配中のファースね!」

「な、なんだお前はそんな名前の奴は知らんぞ!」

いきなり態度の悪い女が話かけてきて可哀そうだがファースは困っている。

何も知らない人が見たら完璧にオヤジ狩りだ。

「アンタね、もうちょっと悪人面ってものを勉強しなさいよ!!何その顔!!

ただの仕事に疲れたサラリーマンじゃない!そして何より見事にハゲ過ぎなのよ!

重要指名手配人物ならもっと素晴らしい悪人になりなさいよね!!!」

まぁ言いたい事は分かる。

「うるさいな!俺だってこんな見た目になりたくてなったんじゃない!」

ファースは涙目になりながらブツブツ言い始めた。

「お、おい、あのオッサン魔法の詠唱してないか?」

(ピィィィィィィィィィィィィィ)

甲高く耳に突き刺さる音が辺りに響き渡る、音の正体はすぐ分かった。

「ティアナ様なんですかその笛わ」

「一度やってみたかったんですよ、総員!確保!!!!!!」

ティアナ様が大きい声でそう言うと今まで街の住人と思ってた人達が全員

クラウスとファースと舞に飛び掛かった。

「・・・これは一体何ですか?」

「これが先ほど言っていた考えというやつで、一年程前からこの街に潜伏

していた兵士の皆さんです」

何十人もの屈強な兵士が飛び掛かり魔法の詠唱どころではなく、あっという間に

取り押さえられてしまった。

「これ俺達が尾行する必要無かったんじゃないんですか?」

「そんなことないですよ!私がこの街に着くまでの尾行が重要だったんです」

それなら良いんだけども、あ、舞が潰れてる。

「舞・・・大丈夫か?見ない間に随分変わり果てた姿になってるけど」

「大丈夫よ・・・ただちょっと手を貸してほしいわね」

入念に作戦会議を行ったのに悪人二人が逮捕され舞がボロ雑巾と化したのは

俺達が街に着いて一時間だった。


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