第五話 朝の散歩にはご用心
魔法の名前に誤りがあったので修正しました、よく気付いた自分!
この前の門番さんと楽しくお話してから俺の中で朝の散歩がマイブームに
なりつつあった。
やはりこっちに来て何日か経つけど街並みはいつ見ても楽しい、街並みわ。
元の世界に居た頃はもちろんの事朝から散歩なんて健康的な行動は
してなかったし、引きこもっていると外に出るのがダメな事と思えてきて
そうそう部屋から出ようなんて思わなかった。
正直な気持ちとしては俺はもう元の世界になんて戻る気はさらさら無い。
あっちに居ても俺はどんどん腐っていくだけだ、それなら俺はこっちで
冒険者として働き、美しいエルフのお姉さんや、まだ出会ってない種族の
女の子と恋人になり結婚して余生を過ごしたい。
もし少しばかり贅沢が許されるなら貴族とかになってメイドを雇い、
むふふな関係に・・・
「きゃぁぁぁぁぁ!!痴漢よぉぉぉぉ!!」
そんな事を考えていると近くから女性の悲痛な声が。
まぁ俺なんかが向かわなくても誰かが・・・いや待てよ。
これは俺が女性を助けて感謝されて良い仲になるという神様が用意した
お約束展開というやつじゃないのか!?
「ま、ままま、待っててください!今助けに行きます!!!!」
予想外の展開に声が裏返ってしまったが、たしか声は南の方から聞こえたはずだ。
急げ啓太よ、こーゆうのは現行犯で捕まえるからかっこいいんだ。
落ち着け俺、大人っぽく焦らず少し渋めの声で助けに入れば大丈夫だ。
「大丈夫ですかお姉さん、僕が来たからにはもう安心です。」
決まった・・・もうこれは決まった。
こんなにかっこいい俺は過去あっただろうか?いや無い!!
もうお姉さんは俺に飛びつき感謝される流れ。
「あ、大丈夫です。今さっき冒険者風の女の方が犯人を捕まえてくれたので」
犯人はもう目を回して気絶し縄で縛られていた。
「そうですかケガが無くて良かったですそれじゃ」
俺達の他にも冒険者をやってる人が居たのか、しかも女の冒険者だなんて。
一度会ってみたいものだ、というかうちの無能魔法少女と交換したい。
俺の思っていた展開とは全く違ったが・・・
まぁとにかく犯人も捕まったし朝飯でも食べに行こ。
「誰か!誰か来てくれ!!泥棒だ!!!」
俺の英雄伝説の幕開けはこっちだったか。
声の主は恐らくどっかのおじさんだろうが関係ない、どこで美しい女性が見ている
か分からないんだ。
「大丈夫ですかぁぁぁ!今行きますよぉぉぉぉぉ!!!!!」
決まった、先ほどに続き最高に決まった。
俺史上最高にカッコいい俺が一日に二度も来るとわ。
「あ、兄ちゃん来てくれたのか、悪いけどさっきどっかの姉ちゃんが来てくれて
捕まえてくれたんだ。なんか悪いな」
「解決したのなら良かったです、はい・・・」
え、ナニコレ、ねぇナニコレ!!何で俺こんなに朝から走ってんだよ!!
俺はただ活躍して褒められたいだけなのに!!
「きゃ~助けて~きゃ~!!」
またか、でもどうしよう、行こうかな、もうなんか行っても無駄な気しかしない。
「どこかに勇敢な冒険者の方は居ませんかぁ~きゃ~」
すごい何かピンポイントに俺の事を呼んでる気がする。
「このままじゃ死んでしまう~きゃ~」
ったく仕方ねぇな、俺の事を呼んでるなら仕方ねぇな。
「今あなたの冒険者が行きますよ!!!」
「あ、もう来てくれたので大丈夫です。ご苦労様」
「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
俺の中で何かが切れてしまった。
「な、なんだこの暴れ出したぞ!捕まえろ!!」
この後の事はあんまり覚えていない。
気が付くと俺は巡回中の騎士に頭を下げていた。
「もういきなり暴れたりするんじゃないぞ」
何でこうなったんだろうか。
「はい・・・なんか・・・すいませんでした」
今日はもう疲れたな・・・俺気持ちよく散歩してたはずなのに何で
こんな頭おかしい子みたいになってんだろう。
「・・・もう帰ろ。」
家の中に入ると大量の食べ物やお礼の品らしき物が溢れていた。
「あ、おかえり啓太」
「ただいま、何だこの大量の食べ物達わ」
舞はなぜか超ご機嫌なようで終始ニヤニヤしてるのが腹立つ。
俺の今日の出来事を聞かせてやりたい。
「今日私も朝から街を歩いてたんだけどね、行くとこ行くとこ何故か丁度
事件が起こって犯人が丁度こっちに向かって来るから次々退治してたら
こんなに感謝されちゃって。私偉いでしょ?ねぇ偉いでしょ?」
「すぅ~~、お前かぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「わぁ何で掴みかかってくるの!?誰か、誰か助けて!!!!!」
さっきのようにこの後の事は覚えていない。
今日も今日とて俺達は街外れの草原に来ている。
心地の良い風が吹き太陽は気持ちよく、素晴らしい天気の日に俺達は何を
しているかというと。
「トイフレア!トイフレア!!トイフレア!!!もう何で出ないのよ!」
相変わらず魔法のまの字も出ない舞に俺とティアナ様は付き合わされている訳なの
だが、本当に魔法少女としての才能が無いのか一向に出ない。
もう気持ちいぐらいに出ない。
「なぁ舞、もう諦めた方が良いんじゃないか?火の粉の一つも出ないし」
さすがの舞も楽しみにしていた魔法が出ないという現実にショックみたいだ。
「私はこの世界でも役立たずの人間として生きていかなきゃいけないのね」
あぁ~落ち込んじゃった。
こうなってしまってはかわいそうだな、なんて声を掛けて良いかも分からん。
「出ないものは仕方ありません、火炎系の魔法が向いてないのかもしれません
し他の魔法に挑戦してみませんか?」
「もう良いのよ、どうせ私なんて引きこもるしか出来ない女なのよ」
もうさすがに面倒くさい。
「ま、まぁ物は試しですしやってみましょ?私が手本を見せますので見ててくだ
さいね」
そう言うとティアナ様は両手を前に出して集中しだした。
「アクアニードル!!」
両手から魔方陣が出現し魔方陣から水の針が無数に放たれた。
「この魔法は使用者の魔法力に比例して威力は変わりますが、火炎系の魔法
と魔法自体の仕組みが違いますので舞さんでも出来ると思います」
アクアニードルがカッコよかったのかちょっと興味を示した。
「本当に私でも出来る?」
「いえ、保証はしませんが」
保証はしないんだ。
「・・・ちょっとやってみる」
「頑張れよ、出来たら麦酒を奢ってやるからな!」
舞はティアナ様のように両手を前に出し集中した、その姿は今回は出る気が
すると感じさせる姿だ。
「いくわよ!アクアニードル!!」
大きく叫ぶ舞の両手からはかなり大きい魔方陣が出現し、乗用車一台分くらいの
水で出来た大きい針が一本放たれた。
「すごいですよ舞さん!こんなすごいアクアニードルは初めて見ますよ」
「お前すごいじゃねぇか!あんなの出来るなら最初っからやれよなってあれ?」
普段の性格を考えたら魔法が出た瞬間騒ぎ出して俺に自慢の一つでもしてきそう
なもんなのだが全く反応が無い。
「あれ?舞さん?舞さーん、すごいですよ舞さん。啓太ビックリですけどー?」
「こ、これは!?」
舞の返事が無いのを見てティアナ様は深刻な顔で驚いた。
「なんですか急に、心臓に悪いのでやめてくださいよ」
「あ、すいません。これは魔力が無くなったことによる気絶ですね」
立ったまま気絶とかどこの世紀末に登場するラスボスだよ。
とりあえず目が覚めるまで木の陰に置いとくか。
「そういえば啓太さんにお話ししたいことがあるのですが」
「なんですか?もしかして結婚式の打ち合わせですか?」
「もう冗談がお上手ですね啓太さんわ」
冗談ではないのだが・・・。
「この前のジャイアントスライムが出現した件覚えてますか?」
あのギルドですら出現したことにビックリしていたモンスターの事か。
「覚えてますよ、もう二度と会いたくないですけど。あのモンスターがどうか
したんですか?」
さっきまで俺の冗談で笑っていたティアナ様が深刻な顔になる。
「どうやら自然に発生したわけでは無く人為的に送り込まれたみたいで、啓太さん達冒険者の存在をよく思ってない人がいるのかもしれません」
え、何俺達誰かの恨み買ってるの、やだ怖い。
「その事をギルドは把握しているんですか?」
「もちろんです、もう何らかの手を打っていると思います。ですが啓太さん達が
クエスト中に何らかの妨害を受けるかも分かりませんので念のためお耳に入れて
おこうかと」
魔王が退治されたと聞いたし城の門番さんも平和だと言ってたから大丈夫だと
思っていたのだが、なんか大変なことになってきたな。
「でもギルドが動いてくれてるなら安心ですよね?」
そうだと良いんですけどねっと渇いた笑いを見せたティアナ様がより一層
不安に煽るが、相手が分からなのにビクビクしても仕方ないしこの事は舞には
黙っておこう。
そんな事を話してる間に舞が目を覚ました。
「あれ?私何でこんなとこで寝てるの?てかすごい身体が怠いんですけど」
「お前すごい魔法を放って気絶したんだよ」
「ほんとに!?何も覚えてないんですけど、とりあえずお腹空いたからご飯
食べたい」
起きたら起きたでめんどくさいなコイツ。
「分かったから口元の涎拭けよ、じゃ俺達これで帰りますので何か分かったら
教えてくださいね」
「分かりました、私の方でも色々探ってみます」
「何の話よ私のも教えなさいよ」
「お前がすごい魔法出来たから俺にも新しいの教えてくださいねって話」
「やっぱり私には隠し切れない才能があったのね、私の方がすごいからって
啓太嫉妬しないでね?」
「嫉妬も何もお前ロクに覚えてないだろ?」
俺は一先ず今回聞いた事を頭の片隅に置き、動けない舞をおぶって酒場へ
向かった。
次話は土曜日に投稿を予定しています。