表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/33

第四話 スライムは雑魚



「クエストを受けなければならない」

いつも真剣な俺はいつもの数倍真剣にそう呟いた。

俺のそんな呟きに異常なまでに反論する舞ベッドの上で駄々をこねている。

「ダメよ何言ってんの?今日も魔法の練習するんだからクエストなんて行ってられ

ないわ。だいたい自分が魔法使えるからって早くクエストに行こうだなんて

虫が良すぎるわよ」

もし立場が逆だったら早く魔法が使いたいとか駄々こねる癖に自分だけ

魔法使えなかったらこれだ。

大体誰のせいでこうなったと思ってるんだか。

「違うわ馬鹿、昨日一日中お前の魔法の練習に付き合っていて金がないんだよ」

お金が無いという言葉を聞き、さすがに黙る舞。

俺達は今日朝から何も食べてない。

二日間、朝昼晩と酒場でご飯を食べたせいで財布は空だ。

「じゃ魔法が使えるんだから啓太が一人で行ってきてよ。私は今日も魔法の

練習に励むわ、私には魔法少女になるっていう目的があるのよ」

コイツ反省してると思ったけど全然反省してやがらねぇ。

「お前のいつ出来るかも分からない魔法のせいでこうなったんだからお前も

一緒にクエスト行くんだよ!」

舞は子供のようにベッドの上で泣きわめきだした。

「嫌よ絶対に嫌。だってクエストでモンスターが出てきたらきっと昨日覚えて

トイフレアを使う気じゃない、そうやって私に見せびらかしたいだけ

なんでしょ?」

朝からめんどくせぇ、部屋から無理やりにでも追い出してやろうか。

「使う訳無いだろう、大体あんな小さい火で死ぬモンスターが存在する訳

無いだろう。せいぜい焚火に使える程度だよ」

俺の言葉を聞くとさっきまで面倒くさいただの駄々っ子だった舞は急に元気を

取り戻し。

「それもそうね、そうよ私が覚えるべき魔法はあんなショボい魔法じゃないわ。

啓太もそれが分かってるならそんなデカイ顔してないで早くクエストに

行くわよ」

・・・ほんと何て言うかグーでビンタしたい。

「お前も今日はまだ魔法使えなくて無能なんだから剣の一つでもレンタル

していけよな」

私お箸より重たい物あんまり持ちたくないとか意味の分からないことを言う

馬鹿は置いといて、今日のクエスト選びは慎重に選ばなくてはならない。

この前みたいな心臓に悪いどっきりクエストはもうごめんだ、何より俺達の

パーティーの作戦はもちろんの事命を大事にだ。

この平和な世界で、強大な敵もいない世界で命を落としたなんて事になれば

俺達はとんだ笑い者だろう。

適度に冒険をし、程よく異世界を満喫出来たら良いんだ。


そんな俺の考えを上手い事見抜いてくれたのか、クエスト掲示板には戦えない俺達

に丁度良いクエストがあった。

その内容というのは、森に住みついているスライム達を駆除してほしい。

「私このクエストが良いと思うわ、スライムが強いなんて世界は私聞いた事

無いし、何より私の華麗なる居合を見せて上げれるわ」

コイツが張り切るとロクなことが無いというのがお約束になりつつ

あるのが怖いのだが。

「アンネさんスライムって俺達にも倒せますかね?一発食らえば即死

みたいなことになると困るんですけど」

「大丈夫ですよ~スライムの戦闘力は幼児と同等です」

本来ならモンスターと戦いたくないのだがアンネさんが言うにはスライムは

攻撃してきてもプニプニして痛くないらしい。

しかもこの時期のスライムは水分が少ないため刃物なんかですんなり

切れて粉々になるとか。

クエスト報酬もスライム一体につき五千レイズ、二体倒せばこの前の報酬を

越える何とも美味しいクエスト。

「おい、今日のクエストはどんなに疲れても最低三体は倒すぞ」

俺は渋めの声で舞に宣言した。

「私の剣術にかかれば森のスライムを駆逐するのなんてお安い御用よ」

舞も俺と同じように渋めの声で了承した。

なるべく多く倒して貯金分も稼がなければ、いつこのクエスト掲示板が強い

モンスターだけになるか分からない。

俺達はこの前のように防具をレンタルし森に向かった。


森って聞いてたからもっと大木に覆われてるのかと思ったが、かなり整備されてる

見通しの良い森だった。

どこまでもゲームなんかで見る世界観を壊してくる世界だ。

「おい、雑魚キャラかもしれないがモンスターなんだから油断するなよ」

この前の洞窟と違って程よく風が吹き太陽も気持ちよく、舞の気がだいぶ

抜けている。

「だーいじょうぶよ。私産まれてから気なんて抜いた事無いんだから、何か

あったら啓太の代わりにスライムを刺身にしてあげるわよ」

本当に大丈夫か・・・ん?何か舞の後ろに黒い物体が。

「そもそもスライムなんて雑魚は私のペットにんっぷぷぷぷ」

舞のと同じくらいの身長のスライムが舞の頭を包み込んだ。

「だから気を抜くなって言っただろ!!!」

俺はスライムの下半身と思わしき部分にトイフレアを放ち水分を蒸発

させてから身体を真っ二つに切り、何とか舞をスライムから切り離した。

「お前は何でそう油断した瞬間に何かやらかすんだ」

俺は助けたばかりの舞をとりあえず星座させた。

「この前の洞窟といい、今回の事といい、お前には緊張感の持ち方をしらない

のか?なんだったらお前一人この森に置いて行っても良いんだぞ?」

さすがにこれだけの事があったんだ、反省するだろう。

「分かったわよ」

お、聞き分けが良いな。

何か意味の分からない駄々をこねるかと思ったのだが。

「いい加減私のすごさを分からせてあげるわ」

何言ってんだコイツ。

「すごさも何もお前は今まさに窒息死しそうになったところだろうが」

「今のはスライムが一枚上手だったのよ、私が気を抜いてた訳じゃないわ、む、

あそこにスライムが。私行ってくるわ」

剣を抜いて舞が雄たけびを上げながらスライムに向かって走って行った。

「おい待て、何でお前は落ち着いて行動が出来ないんだってさっそくやられ

てんじゃねぇかぁ!!」

スライムが舞の体に纏わりつきネトネトになって何かこれはこれで男として

感じるものがってそんなことを考えてる場合じゃない。

「スプラッシュライトニング!!!」

舞の体に光のシャワーが降り注ぎスライムが蒸発していった。

スゲー、何今のカッコいい。

「危ない所でしたね舞さん、もう大丈夫ですよ」

魔法で舞の体を包んでいたスライムを蒸発させたのはティアナ様だった。

「さすがティアナ、よく私の作戦に気付いたわね。あれはスライムを油断させる

ための演技だったのよ」

さっき涙目になってたように見えたのだが。

「それより啓太。私を見て何か変な事考えてたでしょ」

「べ、別に考えてないし、いつ助けに入ろうか伺ってただけだし」

そう、俺は何も考えてない。

そんな事よりギルドの話とは違う、なんでこうも大きいスライムしか出ないんだ。

ティアナ様が来てくれなかったら俺一人で倒せてたか怪しい所だ。

「ティアナ様はどうして助けに来てくれたんですか?すごく助かりましたけど」

「実は啓太さん達がクエストに出発した直後に出現モンスター情報が更新され

まして、普通のスライムだけだったはずなんですけどジャイアントスライムの出現

も確認されたんです、それで急いで来たという訳です」

そんなことになってたのか、一匹ずつ来てくれたから良かったが二匹同時に

来ていたら正直どうなってたか分からないな。

「今日はもう帰ろうぜ、なんかこの前のクエストより疲れた」

「啓太は何もしてないじゃない」

「お前ホント次死にかけた時放置してやるからな」


ギルドに戻るとアンネさんはこの前と同じく謝ってくれた。

「本当に前回に続きすいませんでした。報酬の方は上乗せさせていただきます」

「そんなそんな、俺達は当然の事をしたまでですよ」

本当は一レイズでも上がれば良いと思っているが。

「ジャイアントスライム二体、そして迷惑料も含めまして五万レイズになります」

五万レイズ!!無理な出費を避ければ何日かはクエストに出なくて良い金額だ。

ちょっと後ろから今日は贅沢をしようという視線を感じるが俺はそんな

視線は気にしない男だ。

「ところで何でジャイアントスライムが発生してたんですか?」

ジャイアントと言っても今考えれば成人男性くらいの身長なのだが。

「それが分かってないんですよ、昨日調査した限りではスライムだけだったん

ですけど今日になっていきなり出現したもので・・・」

なんでだろう、急に成長したのだろうか。

「まぁ何もなくクエストも終了できましたし今日はこれで帰ります」

ティアナ様が何やら真剣な顔で何か考えているのが気になるが、今日はもう

酒場で美味い物でも食べて帰ろう。

「ねぇねぇ啓太、今日はバーニングチキンカレーで打ち上げしましょうよ」

「絶対嫌だ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ