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第二十三話 俺は今年で四十歳だぞ

四季様コメントありがとうございました!

ここでお礼を言います。


キンキンに冷えた麦酒、俺達二人の間ではビールと呼んでる酒だ。

味といい見た目といいもう完全にビールだからという理由でそう呼んでる

のは言うまでも無い。

そのビールを大ジョッキにして五杯程飲んだくらいまでは良かったのだが、俺は

どうやらそこまで酒という飲み物に強くないらしい。

「うひゃひゃひゃ!おおい舞、手が止まってんじゃねえのかあ?俺はまだ顔が暖か

くなってきたぐらいだぞお」

「け、啓太ってここまで酔うと面倒くさいとは思わなかったわ、飲みの席に慣れて

る私でもさすがに相手にするの嫌になって来たんですけど」

「ちょっとマインちゃん、お客様を楽しませるのは良いんだけど、さすがに声が

大きいから静かにするよう言ってくれるかな?」

何だこの野郎、見てると無性に腹立ってきた。

俺は机の上の酒瓶を投げ飛ばし威嚇する。

「おう?なんだこのおっさん俺に文句あんのか、というか眩しくて直視出来ないぞ

、この店ではミラーボールも雇ってるんですかこの野郎!」

「おい、コイツつまみ出せ、あと代金は勝手に財布から抜いとけ」

おうおう喧嘩か?よしかかってこい。

「なんだやるのか!俺の魔法と相棒が火を噴くぜ!うひゃひゃひゃ!!」

「おいズボンを脱ぎだしたぞ!早く取り押さえろ!」

「俺の本気を見せてやるぜええええ!!!」

「本当にもう止めてくれえええ!!!」

気が付くと作業着を来たゴブリンが俺の肩を無言で揺さぶっていた。

周りを見ると、俺はどうやらゴミ箱に捨てられていたらしい。

何をやったかは覚えてないが大事なお客様をこんな所に捨てるなんて、この店何か

悪事に手を染めてる気がする。

明確な証拠は無いし、完璧な俺の勘だが。

「目を覚ましたみたいですけど・・・大丈夫ですか?」

思わず俺は挙動不審になりながら返事をする。

「だ、大丈夫だ、心配してくれてありがとう」

ゴブリンに話しかけられた事無かったけど、ゴブリンって思いの外声が高いのか。

幼い子供に話し掛けれたのかと思った。

「それなら良かったです、ではこれで」

「いつもご苦労様です」

何となく俺はゴブリンさんに対して頭を下げていた。

俺が酒を飲んでる間にこのゴブリンさんは働いていたと思うと心が痛い。

「あああああああ!!!」

俺はすっかりこの店に来た理由忘れていた、ここで倒れてどれくらい時間経ったん

だろう。

エルマはまだ来ていないのだろうか。

今は頭が働かない、というか頭が痛いという事しか分からない。

舞と勝負になった事までは何となく思い出せるんだが・・・。

「ちょ、まっ、止めて!拳振り上げて何するつも、あっ!!!」

声の方を見ると路地の方から男が飛んできた。

男に近寄ると右頬を張らしながら見事に気絶している。

可哀そうに、何をしたか分からないが、きっと誰かに襲われたに違いない。

ここはビスマスで唯一の冒険者である俺が説教してやる。

普段はこんな事しないが、何故か今日の俺は正義感が強い気がする。

「おい!どこの誰か知らないが人に暴力を振るうなんてダメだろう!」

「何よアンタには関係ないじゃない!というか文句あるならかかってきなさいよっ

て、何だゴミじゃなくて啓太じゃない」

コイツ今俺の事ゴミって呼んだよな。

「なんだじゃねえよ、お前はいつの間に道端で喧嘩に明け暮れる不良になったんだ

?パーティーのリーダーである俺としては悲しいぞ」

何も変な事も冗談も言ってないのに怒り出す舞。

「あんなちょっとの量で酔っ払って私の計画を台無しにしかけた人がパーティーの

リーダー?笑わせないでほしいわよ!」

ん?何を言ってるんだこの子わ、俺何もしてないと思うが。

むしろあんなゴミ置き場に捨てられてた俺は被害者ではなかろうか。

「そんな事よりもこの男誰なんだよ、もし知らない人なら俺はお前の教育方法

を考えなければいけない」

「誰もアンタに教育なんかされたくないわよ、この男はエルマの組織の下っ端よ」

それが本当ならよくやったと言うところだが、どうにも怪しい。

「じゃあエルマは今どこに居るんだ?下っ端をこうして殴り飛ばしたんだから情報

の一つでも掴んでるんだろ?」

俺のそんな問いかけを聞いて何故か月が綺麗ねとか意味の分からない事を言い出す

舞、さてはコイツ・・・。

「お前実は何も聞き出せてないだろう、どうせこの男もお前が派手なドレス着てる

からナンパしてきた男なだけで、実は下っ端でもなんでも無いんじゃないか?」

「そうよ!何か文句でもあるの!?そんな事より誰か来たみたいよ」

俺は舞に服を掴まれ路地裏に置いてあった木箱の後ろに身を隠す。

夜も更け、路地裏という事もあり顔までははっきりと見えないが、数人の下っ端を

引きつれてる小さい影が。

「なあ、あれってもしかして子供か?ここからだと顔まで見えないから何とも判断

出来ないが、身長からして子供だよな」

無駄に視力が良い舞も目を細めながら。

「身体もごつくないからドワーフって訳じゃなさそうね、だとしたら子供よ。あん

な小さい内から悪事に手を染めるなんて、私今すぐ行って説教をしてくるわ!」

そう言って何も考えずにそそくさと走って行く舞。

何かいつもこうやって舞の勝手な行動に振り回されてる気がするのは、いい加減

気のせいでも錯覚でもないのは明白だな。

そして考えなく突っ込んでいくと何かしらの問題が起こると相場は決まってる。

一応俺は止めようと言葉を掛けたが、俺の声は虚しく消えていった。

エルマと思わしき男に説教をする前の周りに引き連れてる下っ端を、それはもう

見事な後ろ回し蹴りで瞬殺するビスマスでただ一人のウィザード。

「お前のそれって詠唱も何もしてないけど何て言う魔法なんだって質問はしても

良いですか?」

「それは止めてほしいんですけど。まあ強いて言うとしたら経験と鍛錬で繰り出せ

る高等テクニックとだけ言っておくわ」

上手い事言ってるけど要はただの暴力だろ。

いきなり現れた女に手下を次々とやられて、言葉が全く出ない男の子に舞が。

「ちょっとアンタ!いくら子供だからってやって良い事とダメな事があるでしょ?

ましてや犯罪に手を出すなんてお母さんが知ったら・・・あ」

すかさず俺も説教に混ざり、大人の威厳を発揮する。

「そうだぞ、このお姉ちゃんの言う通りだ!いくらまだ若いからって何やっても

許される訳では無いんだ・・・あ」

先程まで暗くて顔が見えなかった、だから俺達は子供だと決めつけていたが。

店の裏口から漏れる光でやっと男の子の、いや男の顔が見える。

「誰が子供だ、俺は今年で四十歳だぞ」

子供と思ってすいませんでした!


あまりの身長の小ささに少し不安になった舞が小さい声で俺に。

「ちょっと啓太、あの人引くほど小さいんですけど、小学校高学年の子供方がまだ

大きいと思うんですけど」

「いや待て、世の中には俺達が知らないだけであれが普通の種族も生存してるの

かもしれない。何より小さい人に小さいというのは失礼だぞ」

俺達のそんな会話の声が大きかったのか、全部聞こえていたらしい。

「おいお前らさっきから小さいを連呼しやがって!こう見えても俺はビックバンの

エルマさんで有名なんだぞ?俺が本気で怒ったらお前らなんかバンだぞ!?」

そんな子供みたいな脅しを本気で言ってくるエルマさん、というか今名乗らなかっ

たらエルマって確信は持てなかったのに。

そしてそんな脅しを真に受ける舞さんが。

「何て言う事なの・・・全くそんな危険通り名聞いた事無いけどビッグバンだなん

て、きっと壮大でかなり破壊力のヤバイ魔法を放ってくるに違いないわ!だって

ビッグバンだなんてゲームでも高位の魔法使いしか使えない魔法ですもの、ああ見

えてエルマはあの小さい身体におぞましい程の魔力を秘めてるのよ」

「舞さん止めてあげて!エルマさん涙目になってるから!プレッシャーで小さい

身体が小刻みに震えだしてるから止めてあげて!!」

そんな俺の静止を聞いて俺にありがとうと言う感謝の視線を向けるエルマ。

いやいや、俺は貴方を捕まえようと来たんですけど。

そんな視線向けられると捕まえにいくいんですけど。

「馬鹿にしたのと過大な期待を寄せてくれたお礼に俺の本気を見せてやる!そうだ

な、おい!そこの女!さっきは威勢のいい事をしてくれたからな、お前を子熊に

変えてやる!」

ほう、それは個人的にかなり見物だな。

ここは黙って見ておこう。

「そんな事が出来る訳無いじゃない、私も本気で行くわよ!伝説のウィザードに

代々伝わる体術を見せてあげるわ!!」

舞よ、伝説のウィザードはきっと体術なんて使わないぞ。

「何を意味の分からない事を言ってやがる」

良いぞ、もっとはっきり言ってやってくれ。

「くらえ!ヤングビースト!」

そう叫ぶとエルマの右手からは白い光が勢いよく放たれた。

すかさず俺は脳内メモに、目の前で使われた聞いた事無い魔法をメモする。

今度舞が何か面倒くさい事を言ったら使ってやろう。

さあ、あの魔法を受けたら舞はどうなるのかな、子熊って言ったが。

「危なっ!ちょっとアンタいきなり危ないじゃない!!」

それなりの速さで放たれた魔法を持ち前の反射神経で避ける舞。

「あ、こんな所に居たんですかお兄さん。さっき倒れてた場所に財布が落ちてわあ

あああああ」

「あああ!俺を優しく起こしてくれたゴブリンさんが!!」

頭を抱えて倒れ込み鈍い音を鳴らしながら立派なベヒーモスに姿を変えるゴブリン

さん。

「やったわね啓太、あのゴブリンさんやっと出世出来たのね」

「そんな事言ってる場合か!」

「俺にこんな魔法の才能があったなんて」

「だからそんな事言ってる場合かって!」

理性なんて無く、俺達を敵と認識したベヒーモスがこちらを見ながら突進する準備

を始める。

逃げたいのは山々だが、キャサリンの店の近くは住宅地だ。

俺達が逃げた所で誰かが襲われてしまう。

俺は今、逃げたいのに逃げちゃダメだという正義のヒーロー的感情が芽生えて

いる、どうしよう俺少しカッコいいかもしれない。

「少し心苦しいが仕方ない、ベヒーモスになってしまった以上倒さなくてはいけな

い。俺の愛剣であの世に送ってやる・・・ぜ」

「あああああ!!!」

俺という人物の歴史上でもっとも決まっていたワンシーンなのに、ベヒーモスは

右前脚でエルマを潰してしまった。

無理だろコレ勝てる訳ないだろ。

「何かかっこつけていたようだけど、啓太さん身体が震えてるわよ」

そんなありもしない冗談を言って余裕を見せる舞。

「お前何でそんなに余裕なんだよ!もっと焦れよ!!ベヒーモス先輩強いぞ!!」

「ふふん、今まで隠してたけど私は新しい魔法を覚えたの、その魔法を使えば

あんなのスライムと一緒だわ」

お前スライムに負けそうになった事あるけどな。

「じゃあやってみろよ、言っとくが俺もベヒーモスなんてすぐ倒せちゃうんだけど

、お前のその新しい魔法ってのが気になるから倒す権利を譲ってやるよ」

「あら啓太さん、そんな事言って倒せないんでしょう、でも良いわ見てなさい」

エルマを転がして遊んでたベヒーモスが、転がすのに飽きたのかこっちに標的を

変え、頭に生えた二本の角を武器に走ってくる。

「おい、やばいぞ、走って来るぞ!早く倒せって舞!舞さん!舞様!!」

「シャープネスウォーター!」

舞の左人差し指からレーザーのような水が出て、ベヒーモスを貫通する。

さっきまでの力強い、威厳ある上位モンスターの形も無くあっさり倒れた。

「舞さんすごいっすね」

「これからは私がパーティーのリーダーって事で良いかしら」

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