第十二話 ダークエルフじゃないだとぅ
重い慰霊碑を舞と二人で横にずらすと案の定下に繋がる階段が出てきた。
普段誰も使わないというその地下には松明が灯っていて誰かが居るのは明白だ。
屈強な男とかこの先に居たら嫌だな。
「トールの言う通りここに犯人が居るみたいですね、ティアナ様さっさと捕まえて
帰りましょう」
「そうよ早く帰りたいわ、お腹空いたし、こんな辛気臭い所とは早くおさらば
したいのよティアナ早くしてね」
俺達の態度を見てティアナ様が呆れる。
「二人とも一応この先にはこの街を滅ぼそうとしてる凶悪な犯人がいるんです
から気を引き締めてくださいよ」
「ティアナの言いたい事は分かるけど、こんな湿気の多いジメジメした場所に逃げ
るような犯人はきっと陰湿で根暗な奴に決まってるわよ」
根暗はともかく陰湿なのはお前だろというツッコミはさて置き、俺の当初の予想に
反して地下の道は入り組んでおらず一本道が続いていた。
「ところで何で慰霊碑の下にこんな地下があるんですか?普段誰も使ってなさそう
な感じですけど」
「ここは一昔前に流行った魔法の練習場所だったと言われてるんですよ」
「その魔法ってどんな魔法だったんですか?」
「私も気になるわ、こんなに大きい穴をあけれるなんてきっと高威力の魔法な
気がするわ」
ティアナ様のもったいぶった表情を見るに俺達はとてつもない魔法なのだど
心の中でハードルを上げていたのだが。
「その魔法というのは掘削魔法です」
え、何その魔法、もっと必殺級の魔法だとドキドキしてたのだが・・・。
「二人とも残念そうな顔をしてますけど、今その魔法は禁止魔法に指定されてるん
ですからね!」
「え、ただの土木工事魔法なのに?」
「そうですけど今のこの世界は勝手に地下を掘る事は許されてないんです、もし
掘削魔法を使用したのが公になれば処刑は免れないんですよ?」
平和な世界なのに何て物騒な取り決めなんだ、俺達がそれを知らずに何となく
地下を掘るような事があれば首が飛ぶところだ。
いや、何となくで地下を掘るような事は無いのだが首は繋がっていてほしい。
舞も当てが外れたと石を蹴って遊んでいる、その足捌きは凄まじいものだ。
「平和な時代にはなりましたが法律が厳しくなったのは少し窮屈かもしれません
ね、まぁお城の中や国民の前ではこんな事言えないんですけどね」
ティアナ様はそんな事を言いながら苦笑いを見せた。
考えれば俺達みたいな一般人と一緒にいるけれどお姫様なんだよな、舞があまりに
もティアナ様に対して雑な扱いをするもんだから忘れそうになったいた。
そんな事を考えていると突然ティアナ様が。
「二人とも静かに!この先に誰かいるみたいです」
俺達は石柱の陰に隠れて様子を見ると話声が聞こえてきた。
「話に乗せられてこんな物盗んじゃったけどどうする?私これの使い道分からない
んだけど」
「私だって分からないよ、大体イケメンだからって話に乗せられたアンタのせい
だからね?もし捕まったらどうすんよ!?もうお嫁にいけないんですけど!」
「私だって止めたのにイケメンはイケメンを呼ぶからキープしたいって言いだした
のアンタじゃない!私とアンタは同罪なんだからね!!」
犯人はどうやら女性らしいが・・・どうしよ、すごく捕まえにくい。
「ティアナ様暗くて消えないんですけど犯人がどんな奴か見えますか?」
「ちょっと待ってください、どうやらエルフの方みたいですね」
俺達が真剣に犯人をどうしようか考えていると舞が俺の肩をツンツンと突いて
きた。
「止めろよこんな時に、遊んでる場合じゃないだろ」
全くコイツはこんな時に何考えてんだ、無神経にも程があるぞ。
「違うの啓太、私結構困ってて・・・」
「何に困ってんだよ、というか今まさに困ってるのは俺達の方だと思うんだが?」
舞がフーフー鼻を鳴らしながら何かを要求するように俺に手で何かを渡せと指示
してくる。
「なんだよ口で言わないと分からな・・・」
「びゃっっくぅしゅうん!!!!あースッキリした、もう良いわよ」
どうやら俺に何か鼻を押さえる物を要求してたみたいだが間に合わず、それはもう
見事なくしゃみが出た。
「汚ね!!てかお前何考えてんだ!!というか汚い!!!」
「そこに居るのは誰!?早く出てきな!!」
お約束のように隠れてるのがバレてしまった。
「こうなっては仕方ありませんね、宮廷魔導士です!今すぐ無駄な抵抗を止めて
投降しなさい」
何そのセリフ!超カッコいい!!
「チッ、何でこんなとこに宮廷魔導士なんて居るのよ聞いてないし!」
「ここに来るのは冴えない冒険者と微妙なウィザードって聞いてたのに・・・」
ん~?今すごく俺の心に致死量の傷を与える悪口が聞こえた気がしたんだけど。
それはそうと、エルフと聞いてたがまさかダークエルフとは・・・しかも美人。
正直かなり好みだ、日本に居るアニメ好きなら理解してくれると思うのだが。
「ティアナ様、あれってダークエルフですよね!魔力とかヤバそうですけど」
ティアナ様は俺のそんな言葉を聞いて疑問の顔を浮かべていた。
「ダークエルフ?そんな種族はありませんよ!あれはただの日焼けです」
日焼けとかどこのオシャレ種族だよ。
「え、それってもしかしてただのギャルというやつですか?」
「ギャルというものが分かりませんが、今若いエルフの間で流行ってるみたい
なんですよ、私は良さが分からないのですが」
俺は目の前が真っ白になった、ダークエルフなんて居ないだとぅ!!
俺の憧れを壊しやがって・・・。
「ちょっと聞こえてんのよ!私達からしたらそんな白い肌を晒してる方がダサい
っていうか、ありえないって感じよ」
日焼けエルフのお姉さん方のそんな言葉に対してティアナ様の反応はというと、何
か逆鱗に触れたのかかなり怒ってるようだ。
眉間の部分がかなりピクピクしている。
「啓太さん、この前教えたあの魔法をあの礼儀知らずに使ってあげてください」
「分かりました、縛れアイスチェイン」
俺の放った魔法が日焼けエルフのお姉さん達を縛り付ける。
「やだなにこれ!壊れないし何か冷たいし、この縛り方なんか卑猥なんですけど」
俺が意図としない縛り方なのだがこれはラッキーと言うべきか。
舞が俺の事を見て引いてる様だが今は無視しよう。
「啓太さんに指示したのは私ですが・・・これはちょっと・・・」
「皆まで言わないでください・・・それよりこの人達はどうしますか?」
「私に任せてください、お仕置き・・・考えがあります」
「・・・今お仕置きって言いました?」
「いえ、本当に大丈夫なので先に出ててください」
ティアナ様が自信満々にそう言い、何より舞がもうこんな所は我慢出来ない
と言うので俺達は先に外に出る事にした。
「そういえばお前って日焼けしてないけど、あーゆうの興味ないのか?」
「ある訳ないじゃない!あんな黒いの嫌よ、普段外に出ないのに私があんな
黒かったらおかしいでしょ?」
確かにそうなのだがコイツにマトモな事を言われると腹立つな。
「それに魔法少女が色が黒いって色々と問題が出てくるでしょ?黒いのは悪の組織
とかに洗脳された時しかダメよ」
「あ、そーゆう事ね、ところでお前今日全く活躍の機会無かったな」
舞は行きに蹴っていた石と恐らく同じ石を蹴りながら。
「そんなの良いのよ、私があんな小物の前で無駄に活躍する事無いの」
そんな話をしていると後ろの方から叫び声が聞こえてきた。
「キャァァァ!!もう止めて!こんなんじゃ外に出れないわ止めて!!アァァァ」
悲痛で今にも助けに行かなければと思わせる程の叫びが聞こえてくる。
恐らくティアナ様が何かしたんだろうが・・・ほんと何したんだろう、俺も
ティアナ様を怒らせないように注意しよう。
ティアナ様と偽ダークエルフのお姉さん方が慰霊碑の地下から出てきたの
だが、偽ダークエルフのお姉さん方は見事に美白で綺麗なエルフのお姉さん方に
変身していた。
そして泣きながら出て来る二人と違ってティアナ様は大層満足そうな顔だった。
「何かスッキリした顔してるのはツッコミを入れても良いですか?」
「普段なら良いと言いたい所ですが今日のとこは控えてほしいです」
こんな事を言いながらティアナ様は普段の変に威圧しない態度と違い高笑いを
して見せた、その姿は意地悪な王女がメイドを虐める時にする高笑いそのもの
だった。
「この二人は警備兵に引き渡すとして、問題が発生したんです・・・」
出た、もうこの街に来てからというもの問題しか起こってない。
もう慣れたものだが、こうも問題が続くんならビスマスに帰った時にお祓いとか
行こうかな・・・。
「問題って何ですか?次は世界が崩壊するとか言いませんよね?」
「そこまで言いませんがクォーツが既に壊れてたので私が作らないといけません」
「それはまぁ頑張ってくださいとしか言えないですね」
「私が作ってあげようか?私の手に掛かれば作れない物なんて無いはず」
お前はちょっと黙ってろ。
「ティアナって結構すごい魔法使えるんだから、こう・・・両手を円のように
したら出来たりしないの?」
「何か錬金術師みたいな発想だな、お前魔法少女より錬金術少女の方が向いてるん
じゃないのか?」
「それです!!」
「ほらティアナ様もお前が錬金術少女の方が良いってさ」
「酷いわよティアナまで、良いわよもう知らないから!!」
舞がいじけて地面に寝転びながら手足をバタバタさせている、こうなって
しまったら放っておくにかぎる。
「違うんですよ!両手を円にするの方ですよ!私の記憶が正しければ・・・」
ティアナ様は舞の言う通りに手を円のようにして魔力を込めた。
投稿ペースが個人的に落ちてきた気がしますが頑張って投稿しますので、何卒よろしくお願い申し上げます。