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第十一話 本当はダメな子

リーリヤさんからの具体的な試練は実にシンプルなものだった。

「犯人の居場所もクォーツの作り方も自分で考えろ、お前よく本読んでたん

だからその頭に知識が詰まってんだろ、それともその頭は飾りか?」

という感じで何もアドバイスは貰えず、良く言えば弟子を信じてる悪く言えば

丸投げだ。

肝心のティアナ様も家を出てから無言のままだ。

「どうしますかティアナ様、俺達が手伝う事は許可されてますけど本当に

何もできませんよ俺達、特にこの自称ウィザードなんて足手まといですよ」

基本的に俺達のパーティーの作戦は命を大事にで対人の戦いなんて以ての外だ。

「何言ってんのよ啓太!私がいる限りこの世の悪は滅んだも当然よ!!」

「お前さっきまで縛られてて色々滅びかけ寸前だっただろ」

「だ、だだだ大丈夫ですよ、私が何とかしてみせまふよ!!」

「ティアナ様・・・その言動に何一つ安心感が感じられません・・・」

動揺がピークに達してるのか声が裏返っているし何言ってるのか分からない。

「師匠も啓太さん達が何の役にも立たないという事を分かってて同行を

許可したんだと思うんです、だから私がやるしかないんです」

今何気に俺達を傷つける発言をしたのはしっかり根にもっておこう。

「何か秘策でも思いつけば良いんですが・・・」

ティアナ様が任せなさいと言わんばかりに鞄からチョークを取り出した。

「あんまりこの手は見せたくなかったんですが・・・この状況では出し惜しみ

してる暇はありませんね」

ティアナ様は地面に六芒星の魔方陣を書き文字を書きだす。

そして自分の指をナイフで少し切り、血を魔方陣に落とした。

「契約を結びし異界の住人よ、我にその力を示せ」

六芒星が赤く光り魔方陣から雷が飛び出す。

「いでよ!トール!!」

六芒星から体調二メートル程の、黄金の毛並みが特徴的な虎が現れた。

「うお!うおぉぉぉぉぉ!何これ凄い、カッコいい!今の見たか舞って舞?」

この興奮を舞に伝えようと舞の方を見ると興奮のあまり固まっていた。

「舞?おーい、おーい舞さーん」

「ハッ!ティアナ!私も出したい!トールを出したいわ!!」

召喚獣ではなくトールが気に入ったらしくティアナ様の肩を大きく揺さぶり目を

輝かせている。

「今はそれどころじゃありませんよ、そしてトールは私が契約してるので舞さんに

は召喚はできません」

「何それ!!理不尽!!!この世界は私に対して理不尽よ!!!」

舞は喚きながら子供のように地団太を踏む。

普段からやれ魔法少女だなんだと言ってるから召喚獣といういかにも

魔法使いっぽいものが相当気に入ったようだ。

「そんな事よりトール、あの空中にある魔法物質が恐らく地上に一つだけあるはず

だからその魔法物質の痕跡を辿って犯人の居場所を探して」

ティアナ様も相当切羽詰まってるのか舞のワガママを軽く無視する。

「合点承知の助でござる、吾輩に任せて欲しいのでござる」

「え、何?がってん・・・ござる・・・?」

何か日本に居た頃親父がたまに使ってた言葉が聞こえたような。

というか声がもう中年のオッサンの声だ。

その声を聞いて舞が残念そうな表情を浮かべているが気持ちは分かる。

普通金色に毛並みが輝く虎の中身がオッサンなんて知ったら皆引くに

決まっている。

「私・・・何かこんな子が召喚されると考えたらちょっと嫌なんですけど」

「俺もヤダよ、召喚獣と話してるんじゃなく親戚の叔父さんと話してる気分に

なるもん」

トールは俺達の会話が聞こえたのか不思議そうにこちらを見ている。

「吾輩何かおかしい事を言ったでござるか?」

「気にしないで良いからトールは早く行ってきて!!」

どうやらティアナ様自身も恥ずかしさはあるようだ。

「トール良い子なんですよ?たまに少し意味の分からない言い回しをするだけで

良い子なんです・・・」

俺達も少し言い過ぎたかもしれない。

「気にしないで良いでござるよティアナ様」

「そうよ!良い子というのはとても良い事でござるよ」

「二人とも馬鹿にしてますよね?私が今その気になればこの街を滅ぼせるん

ですからね?」

「「ごめんなさい」」

今のこの状況ではかなり笑えない冗談だ、ティアナ様に気分を害されると

俺達というか街の人々が死んでしまう。

「ティアナって本当は怒らすと怖い子なのかもしれないわね」

舞が俺の耳元で囁き俺もその言葉に共感して頷いた。


トールを向かわせたものの、俺達はまだリーリヤさんの家の前から動く事が

出来ないでいた。

早くこの街を救い出来る限り早く自宅に帰りたい気持ちでいっぱいだ。

「改めて思うけど、この街って本当に異世界って感じよね~」

舞がポカンとした顔で唐突にそんな事を言い出した。

言われてみればそうだ、ほうきで飛ぶ人達に人々が賑わう魔道具展。

そして何よりロールプレイングゲームさながらの空に漂う建物。

どれを見ても異世界そのものだ。

「そうだよな~そもそも何気なく俺達が今座ってる地面も他の場所から見たら

浮いてる訳だしな、何よりここに居るだけで魔力が漲ってくる気がする」

この街に着いてからというもの、平和だから使う機会が無いのだがとてもすごい

威力の魔法が撃てる気がする。

「何よ啓太、今の言葉を聞く限りすっかり冒険者って感じね」

舞がニヤニヤと笑みを浮かべながら俺の脇腹をツンツンしてくる。

「冒険者なんだよ俺わ!日本にいる頃はこんなに魔法を使ったり指名手配犯を捕ま

えたり、こんな大きい街を救う手助けをする羽目になると思わなかったけどな」

俺達がしみじみと話しているとさっきから体育座りで一点を見つめていた

ティアナ様が涙目になりながら叫びそして泣き出した。

「もうダメです、クォーツの作り方が思いつきません、私にはやっぱり無理なん

ですよ・・・」

「何よティアナ、修業時代に何か参考になる修業は無かったの?」

「修業時代は主に魔法が産まれた歴史だったりと魔法学がばっかりで、他は

本当に基礎ばっかりで・・・」

このままじゃ空気が暗くなってしまう、何か話題を変えよう。

「そー言えばさっきリーリヤさんがまたクラーケンのいる海に突き落とすとか言っ

てましたけど何したんですか?真面目なティアナ様がサボるとも思えない

ですけど」

「あぁそれはですね、本棚にあった南の大陸に住むという賢者の編み出した魔法を

好奇心が働いて試してみたんですよ」

「それは良い事じゃないんですか?勉強するうえで好奇心は大切だと思います」

「元ニートのアンタがよく言えるわね」

それを言われるとグゥの音も出ない。

「確かに大事かもしれませんが・・・その、壊しちゃったんですよ」

「壊したって何をですか?」

「さっき啓太さん達がさっきまで居た書庫を半分程です」

師匠の大事にしている壺とかそんなノリだと思ったんだが壊したものが

桁違い過ぎだろ。

どんな破壊力の魔法を使ったんだ。

この言葉を聞いてさすがの舞も言葉が出ないのか若干引いている。

「二人とも何でそんな顔するんですか!さっき好奇心は大事って言ってくれた

じゃないですか!!」

「おてんば娘の次元を超えてますよそれわ」

「もう良いです、そんな事よりトールが犯人の居場所を見つけたようなので

行きましょう!」

俺達は急いで向かう事は無くゆっくり歩きながら犯人の所へ向かう事にした。

「私ティアナって実はダメな子だと思うんですけど」

舞がさっきの話を聞いて俺にそんな事を言ってきた。

「大丈夫、お前なんかよりダメな子は居ないと思うぞ」

そんな俺の言葉を聞いて舞が俺の首を絞めようとしてくる。

「犯人は街の西にある魔法学院の近くにある慰霊碑の地下に居るみたいです」

慰霊碑の地下っていかにもゲームに出てくるダンジョン的予感がする。

きっと階段を下りると鍾乳洞のような洞窟が広がってるに違いない。

「私馬鹿にされると思って言わなかったんだけど実は暗いとこ苦手なのよね」

何でコイツいきなりそんなカミングアウトするんだよ。

「そーゆうところ乙女なんだったらもっと他に乙女になる部分あるだろう」

「何言ってんのよ、私以上に乙女な生き物がいると思ってんの?いや居ないわ!

私こそが乙女そのものよ!」

舞がそんなの当たり前じゃないと言わんばかりに自分の胸を叩く。

難しい言い回しで言ってるがいつもの馬鹿発言なので無視しよう。

馬鹿の話を聞いてるうちに魔法学院が見えてきた。

「あれが魔法学院か、校舎の大きさも生徒の数も想像以上にすごいな」

ビスマスのお城と同じくらい大きく、石レンガで出来た建物は学校というより

要塞に近い見栄えになっている。

生徒も日本でよく見る制服ではなく黒いローブに三角の形をした帽子を

被っていて、ここが学校と聞いていなければ舞と同じウィザードと言われても

疑わないだろう。

「啓太、あの帽子貰ってきてくれないかしら?何か私もあれ被りたい」

絶対欲しいと言うと思ったよ。

「俺が今あの子達の前に行って帽子をくれって言ってもただの不審者だろ」

俺がそんな風に断るが本気で欲しいのか舞がワーワー言いながら駄々をこねる。

それを見かねてティアナ様が舞に。

「舞さん、あれが欲しいならお城に帰った時に私のをあげます、なので早く

犯人の所へ向かいましょうって嬉しいのは分かりましたから抱き着くのは

止めてください」

「じゃ緊張しますが慰霊碑に行きましょうか」

喜び過ぎて関わるのが面倒くさいから放っておこう・・・。

「ちょっと助けてくださいよ啓太さん!!」

やんわりと二人から離れる俺を見てティアナ様が助けを求めるが軽く無視して

俺は犯人のいる慰霊碑に向かった。




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