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第十話 杖をそんな使い方するんじゃない


待ち合わせの馬鹿みたいに大きい噴水に向かってる途中。

何故か街の人々はざわざわしていた。

「何か騒がしくないか?何て言うか皆慌ててるような」

「啓太の勘違いじゃない?それか啓太の身体が臭いんじゃない?」

「おい、それは普通に考えても悪口だからな、そして俺は臭くない」

街の中央に位置する、時間が来れば水で出来たドラゴンが飛び出す噴水。

それが待ち合わせ場所なのだが、その場所に着く前にティアナ様が

こちらに向かって走ってきた。

「二人とも何してたんですか!こんな大変な事態になってるというのに!!」

「何って買い物ですけど、そんな焦って何かあったんですか?」

ティアナ様は普段の冷静で気品ある立ち振る舞いとは違い何か急いでいる

ようだった。

「とりあえず二人とも私の近くに来てください!」

「何よティアナ、記念撮影なら私を真ん中にしなさいよね」

舞のそんな言葉に構ってられないのか軽く無視する。

「テレポート!王都ビスマスへ!!」

今朝のように泡が俺達を包み込み割れる・・・がテレポートは失敗だった。

「あれ?失敗したみたいですけど・・・ティアナ様も失敗することあるんですね」

「失敗ではありません、私の師匠はこの街でも特に魔法力の高い人で、この街

の管理にも携わっているんですが」

そんなにすごい人なのか、俺も挨拶しに行けば良かったかも。

「その師匠の元へ先ほど連絡が入りまして、どうやら今原因不明の問題が起きてい

て、この街から出る事が出来なくなってるみたいなですよ」

「そうなんですか~で、それの何が問題なんですか?」

「そうよ、この街には色んな魔法使いがいるんだし明日にでも何とかなってるん

じゃないの?」

俺達の微塵も慌ててない様子を見てティアナ様は少し戸惑いながら。

「今日外からこの街に来た人間は私達だけです、そして今この状況を起こした

犯人は私達ではないかと疑われているんです」

何か?じゃあこんだけ焦ってたのは俺達が最悪の場合逮捕されるかもしれないから

なのか?

「え、どうするの?ねぇどうするの?私逮捕なんてされたくないんですけど?」

大丈夫、俺も逮捕なんてされたくないから。

「とりあえず師匠のところに向かいましょう、師匠は私達じゃない事を理解して

くれているので」

何で俺達はちょっと旅行しただけでこんな目に合ってるんだ?

ちょっと観光がてら魔法都市に行こっか的な軽いノリで来ただけなのに。

「誰かの陰謀よこれわ」

舞がいつになく真剣な顔でそう呟いた。

「陰謀って俺この世界に来て誰にも迷惑かけてないつもりだけど?もし因縁を

買ってるとしたらお前じゃないの痛ったい!!!」

舞は俺の言葉が気に食わなかったのか、先ほど買った杖で俺の可愛いお尻を

ケツバットならぬ杖バットしてきた。

「私は存在してるだけで感謝されてるのよ!ありがとうと言われても恨まれる

覚えは無いわよ!!このヘボうけんしゃ!!」

コイツ自分がどんな奴なのか理解してやがらねぇ。

「ちょっと顔が可愛いからってそれを帳消しにする程のポンコツ馬鹿なのを自覚

してないんじゃないのか!?このなんちゃって魔法少女がっ!!!」

「言ったわね!啓太も知らない私の必殺魔法を見せてあげるわ!!!」

舞はそう言うと杖を高らかに掲げてよく分からない詠唱を始めた。

「なんだ!やる気か!?俺の必殺魔法セクハラをお見舞いしてやる!!」

「二人とも何してるんですか!!いい加減にしないと兵士が来ちゃいますよ!」


ティアナ様の師匠の家はギルドを思わせるような、今にも潰れてしまいそうな

木造の平屋だった。

俺はもはやこの手の建物には親近感を覚えるようになっていた。

「私この家からどんな人が出てくるか容易に想像出来るんですけど、きっと腰の

曲がった老人が出てくるに決まってるわ」

舞が弟子であるティアナ様を目の前にそんな失礼な事を言う。

確かにこの家はボロい、初めてギルドを見た時同じ事を思った。

いやだなぁ~入りたくないな~面倒くさい人が住んでるんだろうなとか。

「舞さん・・・確かにそう思う気持ちは分かりますけど」

俺達が家の前でそんな事を長々と言ってると家のドアが開いた。

「うるさいんだよクソガキ共!消し炭にすんぞコラァァァ!!!」

家からはヤンキー口調のとても綺麗なエルフのお姉さんが出てきた。

「師匠すいません、連れてきました、この人達が啓太さんと舞さんです」

「そんな事より人様の家の前で長々と喋ってんじゃねぇよ!いつ入って来るの?

とか考えてドキドキするだろうが!!」

あ、これは面倒くさいタイプのヤンキーだこの人。

「本当にすいません、僕は啓太でこっちの馬鹿が舞って言います」

「分かれば良いんだよ、とりあえず中に入りな」

ボロいドアを開けて長い廊下を歩くと、途方もない大きい高さの本棚が無数に立

ち並び本ももちろんの事数千数億と並べられた部屋に着いた。

そこはまるで図書館のようだ。

室内は貴族の屋敷のように大理石で出来た床や白い壁で出来ている。

「ティアナ様ここって木造の建物じゃありませんでしたっけ?」

「そうですよ、でも屋内は師匠の空間魔法で異次元の中に造り出した部屋に

つながっているんです、だから修業時代は助けを呼んでも誰も来なくて・・・」

どうやら俺は不可抗力で地雷を踏んでしまったようだ。

ティアナ様の師匠は指をパチンと鳴らし俺達の前に椅子を出してくれた。

「まぁ座ってくれ、私の名前はリーリヤ、聞いての通りそこの半人前の師匠だ」

あの無数に魔法を使いこなすティアナ様を半人前呼ばわりか。

「ちょっと師匠!私だっても一人前に魔法が使えまっ」

口答えとみなしたのかリーリヤさんが鋭い目つきでティアナ様を睨む。

さながらウサギを睨む虎のようだ、俺なら二秒で泣くかもしれない。

「お前最近お姫様という立場に甘えて練習をサボってるだろ?」

「うっっ、そ・・・そんな事は・・・」

リーリヤさんはティアナ様の額に人差し指を当てて。

「またクラーケンの住むあの海に投げ捨ててやろうか?」

「私は半人前のクズ野郎ですごめんなさい」

ティアナ様はどんな修業時代を送ってきたんだ、あんなに顔を青ざめてるし。

しかしこの空間といいティアナ様の態度といいスゴイ人なんだろうが、見た目が

二十代にしか見えないのだが。

「ねぇティアナのお師匠さんって何歳なの?」

舞が小さい声ティアナ様に質問した。

コイツは本当に礼儀というか空気を読むという事が出来ないんだな、まぁ俺も

気になってるけど。

「師匠の年齢は正確には分かりませんが一万を軽く超えています」

「何それ、じゃあ私の予想通りおばぁちゃんじゃな・・・ぎゃぁ!!」

「アンタ達さっきから何話してんのかな~?」

リーリヤさんの魔法で舞は光の縄で縛られて拘束されてしまった。

俺としてもうるさい奴が黙ってくれて歓迎なのだが・・・俺も何か変な事を

言ったらこうなるかと思うと怖い。

「話が大きくそれちゃいましたけど、何でこの街から出れなくなって俺達が

疑われてるんですか?」

リーリヤさんはタバコのようなものを吸いながら。

「お前達も街に浮いてる球見ただろ?あれが一個盗まれた」

あ~一億レイズが盗まれたのか。

「あれは非常に純度の高いクォーツに魔力を注いだ物なんだ」

「何かよく分からないですけどアレ無くなると困るんですか?」

「とても困る、それはもう困る。この街は魔法で私と元老と呼ばれるジジイ共が

造った街でな、あの球が無くなるとこの街を閉鎖空間に飛ばす仕掛けに

なってるんだ」

つまり今いるのは俺達が住んでる世界ではなく閉鎖空間だから外に出れないのか。

「え、師匠それって大変じゃないですか!!なんでそんなに落ち着いてられるん

ですか!?」

え、何々?そんなに慌てられると僕怖いんですけど。

「まぁ慌てるな馬鹿弟子、崩壊までまだ三日はある」

ん・・・?今何か聞こえたような・・・。

「今崩壊っていう冗談が聞こえたんですけど」

「冗談じゃないですよ啓太さん!!閉鎖空間は外界との一切を遮断し徐々に収縮

していくんです、今から数えて三日後に私達の存在は無かった事になります」

ヤダ!俺まだ彼女もできた事ないのに無かった事になるなんて悲しすぎる!!

「お前たちの不安を煽る様で悪いんだが元老共は今各国の王を集めた会議に出てい

てこの街にはおらん」

「・・・終わった、もう終わった・・・」

俺は全てを悟った様に思わず呟いた。

「小僧まだ諦めるには早いぞ」

リーリヤさんは魔法で出したかなり大きい机にこの街の地図が広げた。

「正直犯人を捕まえるのなんて余裕なんだが、問題はクォーツをどうするかだ」

「どうするって犯人から取り返すしかないでしょう、じゃないと俺達が犯人って

事になってんですから」

リーリヤさんは頭を少し掻きながら何かを考えだした。

「ティアナ様は犯人が誰とか分かったりしないんですか?」

「私には敵を感知したりする魔法の適性がないんですよ、昔適性が無いって

分かってるのに師匠を見つけないと晩御飯抜きという無理難題な修業でよく

いじめられました」

このリーリヤさんは師匠という名の悪魔なのかもしれない。

さっきから結構時間が経つが舞は縛られっぱなしだ。

「よし決めた、今回の事件はティアナの弟子卒業の試練という事にしよう」

卒業?散々馬鹿だの色々言ってたのに卒業させちゃうの?

「分かりました、私やります」

やる気なんですねお姫様。

「試練の内容は犯人を捕まえる事と、面倒くさいから動力になってるクォーツは

お前が作り直せ」

「え、いくら弟子って言ってもあんな大きいの作れるものなんですか?あなたの

弟子絶句して固まってますけど」

ティアナ様は白目を向いてプルプル震えながら固まっている。

「作れるさ、元老共は鉱石を持ってきてせっせと作ってたが私は魔法だけで

作ったんだ、弟子のコイツがまさか作れないなんて事ないだろう」

さらりとプレッシャーをかけるスキルはまさに師匠というより鬼だな。

ティアナ様は弟子という言葉を聞いてやっと正気に戻ったようだ。

「やりますよ!やってみせますよ!!リーリヤ様の弟子である私が出来ないと

師匠の顔が立ちません!!」

「よし!よく言った、まずは犯人を捕まえてこい」

「了解しました!!」

俺達は、いや端っこの方で転がってる舞を除いて俺達は敬礼して再び街に

向かった。


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