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第九話 魔法都市フルオライト

今回もいつも通り冒険らしい冒険はしてません。


朝方、日がまだ上らない内から俺達は旅行の準備に追われていた。

昨日の段階では旅行用の鞄を購入したり、下着などの衣類を買い揃えたり

間違いなく準備は順調だったのだが・・・。

「お前が昨日酒屋で酒を買ってきたのがそもそもの原因だからな!」

舞は頭痛からか頭を押さえて唸っている。

「大きな声出さないでよ・・・だいたい美味い美味いって啓太も馬鹿みたいに

飲んでたんだから同罪に決まってるでしょ!?」

「確かに飲んだが、この部屋ともお別れだからと酔って暴れ散らかし、挙句

今から王宮に乗り込んでティアナ様に会いに行くっと聞かなかったお前を

止めていたら準備が出来なかったんだろうが!!」

「過ぎたことをグチグチ言うなんて女々しいわね、とりあえず薬取ってよ」

誰のせいでこうなったと思ってんだ。

机を真っ二つにへし折ったことすら覚えてやがらない。

「ところでもう馬車の手続きは済ませたんでしょうね?」

「あぁ馬車で行こうと思ったんだが、一緒に行く代わりにテレポートで送って

くれるという方がいてだな」

舞は呆れた様子で分かりきってるとばかりに。

「どうせティアナでしょ?啓太が話せる女の子ってあの子しかいないもんね」

「おっと、俺がいつまでも女性と話せない男子っと思ったら痛い目にあうぞ?」

まぁ確かにそんな女性は居ないのだが、俺だっていつの日かは女性の数人ぐらい。

「どの口が言ってるのかしら?でも彼女の一人でも出来たら紹介しなさいよね、そ

んなことより何でティアナが一緒に来るの?」

「なんでも魔法都市のフルオライトに師匠がいるらしいんだ、だから挨拶と街の

案内も兼ねて一緒に来てくれるという話になったんだ」

舞は少し不満そうだが何が不満なのか理解できないので放っておこう。

俺としては舞の見張りが一人増えるのは大いに歓迎したいところだ。

旅行というのだから羽目を外すのは良い事だが、コイツの場合暴走しないかが

心配だ。

「あれ?テレポートで行けるなら何で私はこんなに早く起こされて用意させられて

るの?」

「お前はこうでもしないと何時になっても起きないし動かないからだよって何もう

寝ようとしてんだよ!!」


「ティアナ様おはようございます、今日からよろしくお願いします」

「お二人ともおはようございます、こちらこそよろしくお願いしますね、さっそく

ですが行きましょうか」

テレポートと聞くと便利で、いつか自分も覚えて華麗に使いこなせたらと思うが

どうにも緊張する。

一瞬で人が遠くに移動なんて何か副作用的な事は無いだろうか。

「どうしたの啓太?顔が青いわよ?トイレなら着いて行ってあげようか?」

「違うわい!初めての旅行に武者震いしてるだけだ」

俺は勇ましく舞にそう言い放つ。

「大丈夫ですよ、本当に一瞬の出来事ですから」

何かの失敗で女湯にでも飛んでくれたら緊張もほぐれるのだが。

「それでは行きますよ、テレポート!フルオライトへ!!」

足元から俺達を包み込むように大きなシャボン玉が現れた。

「うおぉぉ何こ・・・あれ?」

割れたと思った瞬間目の前の風景は変わっていた。

「ここが私の第二の故郷でもあるフルオライトです」

王都と同じ大きさではないにしてもかなり大きい。

そして魔法都市の名通り不思議な街並みだ、建物が空中に浮いていたり

何のためにあるのか分からない直径二メートルくらいの球が無数に浮かんでいる。

「ティアナ様あの球は何のために浮いてるんですか?」

「あれはとても重要な役割をしてまして、この空中に浮いている建物の

動力源になっているんです、ちなみにあの球は魔法物質でできていて一つで

一億レイズするんですよ」

一億!!!ここから見えるだけで十個はあるから・・・

横にいる舞を見てみると空を見つめる目が金のマークになっていた。

「お前妙な事をするなよ、お前だけさよならをする事になるからな」

「大丈夫よ、今のところわね」

「それでは私は師匠に会ってきますので一時間ほど別行動としましょう」

ティアナ様は早く会いたいのかそわそわしている。

別行動は良いのだがどこへ行こうか。

「舞行ってみたいところとかあるか?」

「とりあえず街並みを見ながら決めましょう」

舞にしてはいつになくマトモな意見だ。

「そして私が真の魔法少女になるための情報を探るのよ」

あ、結局そこに行きつくんだね、まぁ知ってたが。

「それでは一時間後に」


「しかし魔法都市というだけあって本当にいたる所に魔法が使われてるな」

この世界では珍しいエレベーターやエスカレーターは朝飯前で、基本的にここの

住人の移動手段はほうきだったり魔法の一種なのか光の翼を生やしていたり。

何て言うか一流の魔法使いしか住んでないみたいだ。

「俺達もここにいるだけで魔法使いに見えそうだな」

「啓太、私この街に住もうかしら」

「お前ならそう言うと思ったよ、まぁゆくゆくは移住しても良いかもな」

街を歩いていると一軒、気になるお店を見つけた。

それは本屋なのだが見事に魔導書しか置いてない、そして気になったのは一冊の

本なのだが。

『初心者から賢者へ』

「何か胡散臭い魔導書ね、本当にこんな薄い本で上手くなるの?」

俺に聞かれても困るのだが、これで上手くなるようなら苦労は無い。

「試しに買ってみるか、え・・・この薄さで一万レイズ!!」

効果が分からない以上こんな事を言うのもあれだがぼったくりじゃないのか。

「お客さん、それ仕入れたのは良いんだが長い事売れなくてね、半額でいいよ」

店主のおじさんが厄介そうに言ってくる。

「そこまで言うなら買いますけど効果あるんですか?」

「それは魔法の資質次第だよ」

なんだその信じるか信じないかはあなた次第みたいな感じわ。

「まいどあり~」

買ったというより押し付けられたに近い感じの魔導書を舞が珍しそうにみている。

「それ私にくれない?何か私の第六感がこの本はヤバイと訴えかけてくるのよ」

「お前はエスパーか何なのか?俺が使うんだから駄目だ、大体お前がこれ

読んで化け物みたいな魔法が使えるようになったら色んな意味で終わるだろうが」

「ちょっと、色んな意味って具体的にどんな意味か教えなさいよ」

舞が強引に魔導書を奪い取ろうとしてくるのを避けて本を鞄に入れる。

これは宿に着いてからゆっくり読もう。

「じゃあ次は杖を見に行きましょうよ、一応私ウイザードだからそれらしい

魔法の杖が欲しいのよね」

「良いけどお前ほとんど魔法が使えないのに杖持っててもなんちゃってウィザード

になるんじゃないか?」

「なんちゃってとか失礼ね、まずは見た目から入っても良いじゃない」

なんちゃってという事は一応理解してるんだな。

「いらっしゃい!!兄ちゃん良い杖入ってるよ!!」

魚を売るみたいな言い方をする店主だな。

「おじさん、何か初心者にも使えそうな良い杖はある?」

店主は木で作られた舞と同じくらいの身長の杖を出してきた。

「これなんてどうかな?軽いし作りも良いよ」

「ふ~ん、舞これで良いじゃないか?」

舞はかなり不服そうに

「こんなかりんとうみたいな杖要らないわよ、ん、何か感じるわ」

「お前何かと感じやす過ぎだろ、何に感じるんだ?」

「ちょっと変な言い方するの止めてよねアクアニードルぶっ放すわよ?それより

この杖から妙なオーラを感じるわ」

舞は店の端っこに置かれた赤いオーブが装飾された杖を取り出してきた。

それを見て店主が少し驚きの表情を見せた。

「それは売れないな、どうしても欲しいんだったら五十万レイズで売るよ?」

「・・・舞・・・他のにしなさい」

「仕方ないわね、啓太ちょっと店の外に出てて」

「良いけど変な事するなよ?」

外に出て数分、店主の悲鳴にも似た声が聞こえてくる。

「お姉ちゃんそれは酷いよ~」

何を言ったんだ。

「おい、もう集合の時間だぞ!」

俺がそう言うと舞が満面の笑みで出てきた、店内を覗くと店主が涙目になってる

ように見えたが見なかったことにする。

「おまたせ、いやぁ久しぶりに私の交渉術が発揮されたわ」

舞は大事そうに杖を抱きしめている。

「お前いくら負けてもらったんだよ」

「二万レイズまで負けてもらったわ、理解のあるおじさんで本当に

助かっちゃったわよ」

なるほど、通りでおじさんが涙目だった訳だ。

「お前その交渉術、まさかとは思うが俺達の住んでるビスマスでは使って

ないよな?」

「・・・多分ね」

「今夜宿でゆっくり話し合おうな」

俺達は急ぎ気味で待ち合わせ場所に向かった。


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