プロローグ
異世界に飛ばされるという定番の設定ですが、このお話では恐らく目立った冒険や俺が世界を救うぜ的な事は一切ありません。
お茶でも飲みながらご覧ください。
追記:誤字や文章を修正しました(2018/6/11)
毎日毎日飽きもせず、ゲームやパソコンやSNSで時間を潰しご飯を食べて気が向いたら寝る。
そんなニートと呼ばれる生活に身を投じてきた俺こと、斎藤啓太は二十二歳になってしまった。
そんな人間の友達はと聞かれれば、俺より幾らかマシなフリーターが一人居るだけ。
もちろん学生の頃はそれなりに居たが、そいつらは見事に皆就職し、その事実を知ってからは連絡を取っていない。
連絡を取らなくなった理由は自分でも分かっている、そいつらに後ろめたい気持ちがあるのだ。
そんな気持ちのせいか、ニートの性質なのか、俺はよっぽどの事が無い限りは外には出ない。
テレビや漫画で聞くセリフはよく言った物で、内心家から出たら負けだと思いだしてる自分がいる。
むしろここまで来たら働いたら負けだと思っているのかもしれない。
そう思いだしている俺によっぽどの外に出る理由が出来た。
それは、髪が伸びすぎて邪魔なのと、愛読している漫画の新巻発売日がまさに今日なのだ。
おいおいそんな事かよ?と言いたい方も居るだろう。
だが、俺は髪を切ってもらうのが子供の頃から大好きだし、漫画は自分の目で状態が綺麗か判断してから買わないと気が済まないのだ。
こればっかりは誰に文句を言われても譲れない。
俺は本当に文句を言いそうな母親に頭を下げてお金を恵んでもらい家を出た。
家が田舎にある為、路線バスというニートにとって少々心臓に悪い乗り物に乗り、市街地まで
バスに揺られる事一時間。
髪サッパリ&漫画の最新巻購入という目的を果たした。
帰りのバスで読んでしまいたいという気持ちもあるが、やはり部屋で読むのが漫画にとっても俺にとってもベストだろう。
俺はそんな考え事をしながらバス停に並び、そして丁度良く到着したバスに乗り込む。
そう、俺はこの時何も間違いはないと思っていた。
むしろ外に出ているのにも関わらず精神的にも余裕があるという、言ってみれば最高の状態だった。
だがこの時実は今後の人生を左右する程の大きな間違いを起こしていた。
「あの時ああすれば」という台詞に言い換えるならこうだろう。
あの時乗るバスを間違えなければ……あの時バスで寝なければ……と。
「終点『ビスマス』終点『ビスマス』」
口元から涎を垂らした俺は、妙に図体の大きい運転手に起こされて目を覚ました。
「ああ、すいません今下ります」
すかさず頭を下げてから運賃を渡し、バスから降りた俺は眠気を取るために体を伸ばした。
今は正午に差し掛かった頃だろうか、未だ寝ぼけ眼な目をこすり、そしてこの時ようやく気付いた。
「……ここどこ?」
その疑問が出るのも当然だろう。
何故なら、俺の目の前には俺の前を当たり前の様に通り過ぎて行く、身長二メートルはありそうな二足歩行のトカゲが、綺麗な金髪の間から尖った耳を覗かせている気品漂う女性達が居るのだから。
そして一番の疑問は、俺の地元には絶対無いと断言出来る、東京タワーをも軽く越える高さを誇る巨大な城だった。
読んでくださった方々本当にありがとうございました!
朗報ですが今日中に一話目を投稿しますので
そちらの方もお茶を飲みながらご覧ください。