3話 金欠。
オネシャス!
『えっ...今何て言いました?』
目の前の好みの女の子に対して、俺は必死になんて返すか考えた。
考えるに考えた結果、俺はこう切り出した。
『コーヒーを一つ下さい!』
結局、俺に出来る事なんて自分が作れる最高の笑顔でこう言うだけだった。
『はいっ。畏まりました!』
俺の言葉に返事をした後で、アルバイトの女の子は厨房に帰っていった。
取り敢えずカウンターの位置で、厨房にいる女の子が見える場所を探した結果、俺は端っこに座り込んだ。
少しの間、待っていると奥からギリギリとコーヒ豆を挽く音が聞こえて来る。
きっと、あの娘が挽いてくれているんだろうなぁと思うと心が踊る。
早く、あの娘の丹精込めて作ってくれたコーヒーを飲みたいと待ち望みながら厨房を見ると店の店主らしき人が挽いているのが見えてしまう。
…何だろう、この絶望感。
女の子が俺の為に作ってくれたコーヒーを楽しみにしていたというのに、現実はおっさんが裏でシコシコと作ってくれた物を出して来る。
俺には其れが絶望にしか感じられ無かった。
きっと、分かってくれる人は大勢いるだろう。
女性の使用済みパンティーガチャというものがある事をしっているだろうか?
元はモテない男が女性の下着を異常に欲しがった結果産まれた物であり、きっと買ってしまった人間がいるだろう。
しかし真実は、適当に揉みくちゃにした下着を外れ枠で売り捌き、当たり枠の場合は追加で其れっぽく染みを作りコロンで香り付けをして俺達を喜ばせていた。
此の様に人が求めている物の大半は俺達が予想している人間が作っている訳がなく。
殆どはおっさんが作っていたのだ。
もし俺の頭が良ければ必死に弁護士になり詐欺罪として訴えるのであろうが、そんな事は不可能だったために絶望するしか無かった。
そんな事を考えていると、女の子がさも自分が作ったかの様に(偏見)コーヒーを持ってきてくれた。
『お待たせ致しましたっ!!、ブレンドコーヒーです。』
『あ、ありがとう。』
俺は頰をヒクつかせながらも、そう答えてコーヒーを飲み始めた。
…うまい、けど、不味い。
そんな矛盾した想いを抱きながらも、チビチビと貧乏臭く飲んでいた。
そんな時、何故か目の前の女の子が話しかけて来た。
『あの..確か、2年3組の高榊君ですよね?』
『へ? あ、はい。』
『ですよね!、見た事があるなあって思ってたんですよ!私の事覚えてます?去年一緒のクラスだった柳なんですけど...』
まじで!?、俺はそう叫びそうになりながらも去年の事を思い出そうとするが薄っすらとしか思い出せない。
確かに目の前にいる美少女がクラスにいた様な気もするのだが、それ以上は思い出す事が出来なかった、俺は誠心誠意を込めて謝るしか無かった。
『…ああ、ごめん一年の時は本当に忙し過ぎて覚えてないんだよ。』
『...やっぱりそうですよね。 大丈夫ですよ!高榊君が必死に働いた学費を稼いでるって事はよく知ってましたんで。』
柳さんが言う様に俺は去年、制服代や教科書代やら何やらの為に其れはもう学校で何をしていたか覚えてないぐらい必死になって働き続けていた。
具体的に言えば、今のシフトの二倍程入れていた。
そのせいで、ほぼ死にかけの状態で机の上で寝ていたので覚えてはいない。
この事は同じ学年の人間なら誰もが知っている事なので、当然元クラスメイトであった柳さんも知っているみたいなのでそう言ってくれてはいたが、少し寂しそうな顔をしていた柳さんを見て罪悪感しか湧かなかった。
俺はもう一度、謝罪する。
『本当に...ごめん。』
『い、いえっ!気にしないで下さいっ。わたしが一方的に覚えていただけなんで。』
柳さんは慌てたように手を振りながらそう言って来るのを見て冷静に答えた。
『俺なんかをよく覚えてたね。』
『覚えてますよっ!、高榊君本当に凄かったですもん!』
柳さんが意気揚々にそう答えていると、店主が話に割り込んで来る。
『ヘぇ、何が凄いんだい?』
『あ、お父さん。』
柳さんの口にした言葉に俺は驚きを隠せずに叫んだ。
『お父さんっ!?って事は此処、柳さんの家なの?』
『はい、そうですよ?知らないで入ったんですね...此処の喫茶店の名前、柳...なのに。』
『いや、あの...俺って看板見ずに、良い感じの雰囲気がある店とかに入る癖があってね!』
柳さんが哀しそうな顔をしている事に気づいた俺は、何とかフォローをして、何とか元気を取り戻させようすると、直ぐに喰いついてくれた。
『…本当、です?』
『うん!そうだよっ、超オシャレな店じゃないか!!コーヒーも美味しいしねっ!また来たくなるよっ。』
『...そうですよねっ!、自慢のコーヒーなんですっ!』
『うん、そうだと思ったよ!...そう言えば他のオススメとかってあるのかな?』
『ええっと、ビーフシチューセットとかは美味しいですよ?』
『じゃあ、それ一つ下さいっ!』
『あっ、はい!少々お待ちくださいね!』
そう言うと柳さんと、俺たちの話を聞いていた店主は共に厨房へ戻っていく。
何とか話を変える事に成功した俺は達成感を感じながら、暇だったのでメニュー表を見て恐怖を覚えてしまった。
『っ!?!』
俺はサッとメニュー表を自分から数メートル離れた所に置き見なかった事にした。
其の後、俺は余り声を出す事はせず緩くなったコーヒーをさらに貧乏臭く飲む事になった。
『…コーヒー一杯、500円、ビーフシチューセット....2500 円 ....ふふふ、3日ぐらいは断食..かなぁ』
そんな言葉を呟きながら
*PS.出て来たビーフシチューセットはとても美味しかったです(小並感)
そして会計をした後で見た柳さんのやわっかい笑顔を見て、又行こうとも感じてしまいました。
あざした!
出来れば評価オネシャス!
後1話は明日までにがんばりやすっ!!