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25話 メイド服

お願いいたします!

『…なんで、あの一瞬だけでこんな物が出来るん、だ...』



森宮が俺の作ったメイド服を手で掴みながら呟いた。


こいつも店長と同じ様にメイド服を強く引っ張ったりしている。


簡単には破ける事は無いだろうが、流石に長時間引っ張られていると繋ぎ目が切れるかもしれない危険性があるので、森宮から奪い取った。


『おい、そんな風にメイド服を強く引っ張るの止めろっ...て、壊れる。』


『ん?ああ、ごめんごめん。…それよりさっきのはなんだったんだ?』



なんだったんだって?


可笑しな事を聞く奴だなぁ...そんな事見ればわかるじゃないか。


俺はそう思いながら答えた。


『少し速いスピードで布を縫っただけだよ。何言ってんだよ。森宮。』


『イヤ…そうなんだけど、そうなんだがな...』


『何だよ?』


『……いや、良いよ。其れよりも、店長どうしますか?衣装を集めるっていう問題は高榊が何とかしますが内装は..』


『俺に任せろっ!、道具さえあればなんとかしてやるよ。』


どんな、要望を言われたとしても作ってやるよ。


俺は何れ主夫になる男なんだ、DIYは基本だろう?




『…なんでもってホントかよ..って言いたくなるが、今迄の光景を見せられたら容易に想像つきそうだ...』


『…あんまり、高榊君の事で悩まない方が良いよ。偶に目を疑ってしまいそうな事を何食わぬ顔でするから。』


『何言ってるんですか店長。誰でも頑張ればあれぐらい可能で..


『無理だ(ね)』



おふぅ…何故か、二人共に全否定されてしまったよ。


店長に迄、否定されると心が痛いけど、そんな事をしていれば話が全く前に進まない。


俺は心の涙をグッと飲んで、話を進める事にした。



『其れで...どうしますか?店長。』


『どうするって……此処まで高榊君がやる気なんだ。やるよ。』


『其れは、さっき言質取ったんで当たり前じゃないですか。そうじゃなくて、何日後から始めるのかと、何着衣装が必要なのかみたいな詳しい話です。』


『言質って...其処はまぁ良いか。 衣装の数は良く分からないけど実際、殆ど高榊君頼りになるから君次第かなぁ....逆に聞くけど実際どれくらいかかるんだい?』


『俺のイメージ的に内装は可愛い雰囲気だけ出せば良い様な気がするんで、百均でハート型の小物やピンク色の小物でも買って適当に付けとけば良いと思ってます。』


『確かにそんなイメージは無くは無いが、流石にお前...適当すぎるだろう。』



俺のあやふやな答えに森宮が喰って掛かてくる。


きっと、こいつもメイドに並々ならぬ….思い入れが在るのだろう。


一度も行った事が素人の俺より、森宮に任せた方が良いか。



『なら、森宮に内装は任せるよ。可愛くしてやれよな。』


ポンっと俺は肩に手を置いて語りかける。


此れでお前の妄想通り作れるんだ、良かったな。


『えっ....』


何故か、困った様な声を出しているけどまぁ良いか。


『任せたよ森宮。俺は、頑張ってメイド服を作るから』


『ちょっ!..


森宮は未だ言いたい事があったのか、俺に何か言おうとしていたのだろうが、これ以上話す事はなかった。



コロン♪


扉につけていた、鈴が鳴る音がする。


俺、店長、森宮の三人が扉の方に顔をやると、可愛らしい声が聞こえた。



『ただいま〜!』


『おかえり遥。』


『柳さん今日は遅かったね。』


『すいません、今日はちょっと用事がありまして...それより後ろの人は?』


柳さんが俺の後ろにいた森宮について聞いてきた。


どうやら俺に隠れて、顔が見えなかったようなので、少し横にずれる事にした。


『森宮だよ知らない?』


『あっ、森宮君ですか...こんにちは、森宮君。挨拶が遅れてすみません。』


『気にしないで柳さん。それにしても久しぶりだね』


『...そうですね、3か月ぶりぐらいですか。それよりもどうしてここに?』


『高榊君が、川柳の為にって連れて来てくれたんだよ』


『川柳の為って...』


『森宮も川柳を手伝ってくれる事になったんだよ。』


俺の言葉を聞いた柳さんは、少し驚いた顔しながら呟いた。


『ありがとう..ございます森宮君。』


『気にしないで柳さん。俺がしたいからしてるんだ。』



一切恥ずかしがらずに、俺が聞いていてムカつく言葉を投げかける。


無駄に顔が良いから、本気で気に食わない。


相手が晃やグラ男なら遠慮なく殴りかかっていたが、相手はイケメン。


俺が殴り飛ばせば、他の女の子たちに十数倍になって返されるとわかっていたので何とか怒りを抑えていると、頬を赤く染めた柳さんが小さな声で可愛らしく小さな口を開いた


『...森宮君。』


『柳さん...』




なんなの?...この空気


何故か二人は見つめあいながら、互いの名前を呼ぶ。


二人とも容姿が良いので絵になっていて、第三者から見れば近くにいる俺は通行人1にしかなれてない。


其れが少し悔しくも思ったが、考えても仕方がないので眺めるしか出来なかった。





きっと、二人は何時迄と此の儘 貴方と見つめていたい...みたいな事を思ってるんではないだろうか。


あれから1分ぐらい俺と店長に見られている事に気付いてないのじゃないかと思うぐらい二人は見つめている。


...誰かこの空気なんとかしてくれよ(吐血)って思ってたけど、此処には俺と店長しかいねえから言いづらいわ!


そんなノリツッコミらしき物を脳内でしていると、漸く店長が動き出してくれた。



『……二人共、そろそろ良いかな?森宮君、話に戻りたいんだけど』


『『っ!!?』』


店長の一声で、二人だけの空間が崩壊したのか慌てた様に柳さんは距離を取った。


『すっすみません! 高榊君っ..べ、別に見とれてたとかじゃないですっ。』


『いや、そんな事を俺に言われても...』


『ほらっ!森宮君も何か言って下さいっ!!』


『そ、そうだぞ高榊..俺たちは見つめあってた訳じゃないぞ。』


森宮は店長が居るため、必死になって言い訳をしてくるが森宮の思いを知っている俺には通用するわけがなかった。


『あっ、そうですか。』


『絶対に信用してないですよねっ!!』


『『だって、ねえ..』』


俺と店長は顔を合わせてそう答えるしかできなかった。


此の時の俺は、それまであった負の感情が薄れていた。


もしかすると、美男美女が見つめ合い続ける空間を長く見せられ続けれて、ファンタジーとしてとらえる事しかできなかったのかもしれない。


....もはや180度回って何故だか負の感情を抱けない自分がいたのだと思う。




『....そっ、そういえば森宮君は何を手伝ってくれる事になっているんですか?』


もう言い訳する事が難しいと理解した柳さんは話を変えてきた。


『森宮には、お客さんと人材を集めてくれるらしいんだ。』


『お客さんは分かりますが...人材?』


そういえば柳さんにまだ、メイド喫茶をやるって言って無かったな。


俺は、先ほど速攻で作ったメイド服を手に持ち前へ出しこう言った。


『森宮がね? メイド喫茶をしようって言ったんだよ。ハイ、これメイド服。柳さんにも着て貰いたいらしくてさ...即席で作ったから、サイズがあわないかもしれないけど何か要望があったら教えてね。』


柳さんはメイド服を受け取ると眺める。


『うわぁ、こんなの良く作れましたねぇ...



....えっ、私も着るんですか!??』


『森宮が言うにはそうらしいよ?』


『ぇ...』


少し引いたような声を出しながら、森宮と出来るだけ離れようとする。


『おいっ!何言ってるんだよ!!...ち、違うからね?柳さん!?』


必死に言い訳をする森宮。


『ほんとですか?』


俺と店長の顔をみて真相を聞いてくるので、俺は笑顔でこう答える以外なかった。



『森宮は、柳さんにメイド服を着せる気満々だったよ、ねっ店長!!』


『そっ、そうだね。』


『森宮君って...そんな人だったんです、ね。』


柳さんの顔色が暗くなり、森宮を目線から筈した。


『おいっ!高榊っ!!』





『....ふっ。』


必死に言い訳をした結果。


嘘がバレて森宮の好感度が落ちた瞬間を目に出来た俺は、最近の中で一番良い笑顔をしていたに違いなかった。



ありがとうございました!


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