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24話 震える腕

お願いいたします!

『やるぞ。』


俺が何度目かは分からない覚悟を決めていると


外から森宮の声が聞こえて来た。


『250万っ!?』


…ああ、今の状況を店長が教えたのか。


驚いた様な声を上げる森宮。


俺は今更だがどんな方法で此の店を立て直そうと思っていたのかが気になった。


『そう言えば未だ聞いてなかったなぁ』


俺に任せろっ!と啖呵を切っていたのだから、其れは凄い考えを持っているのだろう。


きっと俺が口出し出来る事は多分無いだろうとは思う。


しかし、俺も一応は川柳を存続させようとする仲間の一人ではある筈なので、二人の声が聞こえる位置にまで移動して話を盗み聞きする事にした。



『...うん、そうだよ。母さんが..可笑しな事を言い始めてね、そうなったらテコでも動かないから…あの人』


『母さんって...そう言えば、娘さんのお婆さんが柳グループの代表取締でしたね。』


『よく知ってるねぇ。』


『飲食店を父がやってますから。少しぐらいなら話が入って来たりするんで。』


『…ちなみに聞くけど…どんなもの?』


『ええと...頑固とか…怒らせたら潰される見たいな話ですかね。』



森宮は、言いづらそうにそう答えた。


店長は、何と言われるのかを大体は理解していたのか笑っていた。


『はははははは、 大体合ってるから、気にしないで大丈夫だよ。 …君は何でも手伝えるって言ってたけど何が出来るのかな?』


『俺は...料理が出来ますし、接客も出来ます。って、そういう事じゃ無いんですよね。』


『ああ、そうだね。其れぐらいならもう、間に合っているよ。』



ちょっと、店長...当たりが強くないですかねぇ。


森宮と話している店長は節々で棘のある言葉を使っている様な気がした。


森宮も理解していた様で、色々な考えを行き交わせているのか、俯き続けていた.....



其れから10秒ぐらいして会話を再開する。


『……今頃になって、誰かに手伝って貰うのは余り意味がないと思うんだ。だから...高榊君と君には悪いけど此の話は無かった事にしてくれるかな?』



何言ってるんだよ、店長!


森宮は顔が広いし好かれているんだ。


売り上げを上げる為には客が必要なんだから、絶対に森宮は居た方が良いに決まってる!!



今すぐ、会話に入って俺が訂正しなければと会話に入ろうとしたが...


其れは必要無かった様だった。



『在りますよ…俺だけが出来る事。』


『…へぇ、何だい?』


『まあ、俺だが、出来る訳では無いんですがね......

確かに、料理は森宮が接客は遥さんがやれば困る事はないでしょう……



だから、俺は客を集めようと思います。』


『客を集める...』


『言うのは簡単だが、どうやって集めるんだい?』


『そうだなぁ....例えばメイド喫茶って知ってます?あれをやれば良いんですよ。』


『『メイド喫茶...』』



なにそれ、とても良い(如何わしい)響きなんですけど。



……メイド喫茶、それはモテない男達がキャバクラより安い値段でチヤホヤされる場所であると見ていた。


しかし苦学生の俺では、例えキャバクラより安かろうが厳しい値段を請求されそうという恐怖に駆られて訪れる事が出来なかった。


だがもしメイド喫茶を営む事になれば、きっと安価でチヤホヤされるだろう...


そう考えた時、俺は心が踊り始めていたのだが、店長は違う様だった。



『一応...聞くけど、誰がメイドをやるんだい?』


店長が難しい顔をしている。



『遥さんと、俺の友達に頼もうと思います。』


『…遥も、ね。』


幾ら川柳を潰したく無い気持ちが強いのだとしても、流石に自分の娘を商売道具にする事に抵抗がある様に見えた。


店長の其れは当然の物だ。


しかし、もう俺達には後がない...


俺は苦渋の決断を店長に選ばす事しか出来なかった(迫真)


『店長っ!、やりましょうっ!!』


『高榊くんっ!?何で急に乗り気なんだいっ!??』


『この辺りには、メイド喫茶なんて如何わし...イヤっ心が踊る店は存在しません。ならっ、物珍しさに学生客が絶対に入ってくれますよ!!』


『えっ?今..変な言葉が聞こえ..


『気の所為ですっ!!』


『あっ...そう。』


俺の気迫に押されたのか、店長が納得してくれた。


しかし、此処で止まってはいけない。


止まらない限り店長が気迫に押されて、其の先にメイド喫茶がある。


色々と俺の大事な物が無くなっていくのかもしれない....其れでも俺は進み続けようとした。



『森宮のツテを頼れば、学園のマドンナ的存在もメイドに出来るかもしれません! そうだよなっ、森宮っ!!』


『あ、ああ。去年のミスコン優勝者とかなら大丈夫...だと思う。』


『ついでに、その人がメイド喫茶をしてくれているなんて情報をさり気なく流す事も可能だよなっ!』


『お、おう...任せろ。』


『ほらっ、店長!やるしかないでしょうっ!!』


此処まで、良い条件を用意したんだ。


店長も渋々了承してくれるだろうと思っていたが、未だ首を縦には振ろうとはしなかった。



『……でも、内装とか...衣装とかを用意する時間も無いし..』


『『….内装と衣装。』』


『ああ、良く考えてごらん?少し無理があるだろう…だから、ね?』


『………』


『ふぅ。』


店長は、俺達を諭そうとする。


何も言わない俺達を見て、諦めてくれたと安心仕掛けていたがそう簡単に俺は止まらなかった。


少し罪悪感はあったが、厨房とカウンターを隠すカーテンの様な大きな布を引き抜き...ポケットに入れている裁縫セットから針と糸を取り出す。



『…店長、確かに時間は無いかもしれません...ですが、諦めなければ何とかなります。』


『えっ? 何を言って...


『【崇高で緻密な絶技】っ!!』


俺はそう叫び、頭のスイッチを入れ変える..


今回は、型紙などを作る暇が無いから全てを脳内で計算して作らなければいけない。


取り敢えず、誰が着るかは分からないから何時も眺めていた柳さんの身体に合わせて作る事に決めて


マシンより精密にミシンより高速で縫い合わせた。



…人間の限界を超えた速さで縫っている為か、腕の筋肉が悲鳴をあげる。


しかし今から俺達は時間という何者でも勝てる事が無い存在と闘わなければならないんだ


此処で可能性を見せつけなければならない。


其の思いで腕を止める事は無かった。






『…出来た。』


数分後、俺の脳内で描いていたメイド服が完璧な物として完成した。


残念な事に全て同じ布で作った為、少し見てくれは悪かった。


しかし、直ぐに作れるという意思が通じさえすれば良かったので、口を開けて俺を見ている店長に衣装を手渡した。


『ほら、店長。時間は問題ないでしょう?…道具さえ揃っていれば明日までには何とかなります。だからやりましょう。』


『………』


店長は、俺の作った衣装を伸ばしたり眺めたりした後でゆっくりと俺の顔を見ながら口を開いた。


『あっ、 はい。』



こうして、俺の勢いだけで川柳は新たな道を辿り始めるのであった。

ありがとうございました!


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