20話
お願いいたします!
『『6月の売り上げを先月の5倍にする事が条件?』』
俺と柳さんは、店長に言われたその言葉に思わず叫んでしまった。
『…しーっ。お客さんがいるだろう?』
店内には、年配のお客さんが数人いた為に店長は人差し指を口元に当てて俺達を静めようとする。
俺と柳さんは店長の言う通り声を落として、説明を求めた。
今の話だけでは当然納得がいかなかったからだ。
『…で、どう言う事なんですか?、たしか良い返事が貰えると思うみたいな事を言ってませんでしたっけ?』
『..そうだよ、お父さん!!』
『いやぁ...本当にごめん。俺の話じゃ母さんの考えを変えさせる事は出来なかったよ...』
『...お父さん、確かにオバァちゃんが怖いのは分かるけど息子なんだし頑張ってよ...』
『ははは...ごめん。』
『怖いってそんなに怖いんです?』
『『……………』』
二人の会話を聞いていて、気になった俺が質問すると空気が重くなった様な気がした。
俺が店長を見ると「まあね。」とだけ返し其れ以上、答えようとしなかった。
柳さんを見ると、何も言わずに目を逸らされる。
『そんなに…怖い人なんですね。』
『悪い人ではないんだけどね…』
『はい。』
二人の行動を見て取り敢えず怖いのだろうとは理解した俺は、少しだけ疎外感を覚えながらも話を聞く事を諦めた。
『で、取り敢えずは売り上げの5倍は何があっても変わらないって感じなんですかね?』
『……うん。』
『そうですか。』
店長は弱々しく答えた。
此れ以上、ゴネても何も始まらないと理解した俺達は、取り敢えず売り上げを5倍にするという厳しい条件に対しての今の状況を整理する事にした。
『お父さん、今月の売り上げって幾らだったの?』
柳さんがただの手伝いの俺では聞きにくい事を聞いてくれた。
『今月は...50
万ぐらいかな。』
『『...っていう事は250万円っ!?』』
『まあ...そうなるね。でも高榊君が来るまでは毎月25万ぐらいだった事を考えると結構、変わったんだよ。』
『そう...ですか。』
店長の言葉を聞いた俺は、改めて役に立てているんだと理解して嬉しかったが直ぐに現実へ戻された。
『…二百五十万っていう事は、最低でも毎日営業するとして一日八万少しの売り上げに持っていくの?』
『『『………』』』
流石に其れは無理じゃね?
此処にいる全員がそう考えてしまったが、決して誰も口にはしなかった。
『何とか...なる。』
『ああ、頑張ろう。』
『頑張りましょうっ!!』
『『『め、目指せっ!...売り上げっ、2..250万っ!!が、頑張るぞー!!!』』』
こうして俺達は、そう自分自身に言い聞かせて働き始めた。
しかし分かっていた事であったが一日頑張った程度では殆ど売り上げは変わらなかった。
一日目は、二万五千円
二日目は、二万万円。
三日目は.....三五千万円。
どれも大雑把に計算して出しているので正確ではなかったが、大体は此の様な物であった。
三日で売り上げは九万円。
一月の売り上げが五十万園であった事を考えれば、悪く無いと思ってしまうが全然駄目だった。
分かっているとは思うが、二百五十万を目標にしている売り上を叩き出す為には一日に約八万三千三百が必要である。
つまり三日で、二十五万円の売り上げが必要だったというのに、現実は九万円。
たった、三日で理想より十六万円足りなかった。
此の結果を前にして俺達全員が此の儘では駄目だと理解し必死に働くが結果はあまり変わらなかった。
四日目は、三万五千円。
五日目、三万円。
六日目は四万五千円。
七日目は四万円。
初の四万越えに俺は喜びを感じた後で、絶望しか感じられない。
一週間で、三十四万円のマイナスが出た為に残り23日間、毎日約十万の売り上げを叩き出す必要がある。
そんな事は不可能だ、絶対に間に合わない。
此の儘では本当に潰されてしまう。
其れだけは本当に嫌だった。
……何とかしなくちゃいけない。
そう考えた時、俺の脳裏に一人の同級生が浮かぶ。
あいつは言っていた。
そんなに俺に邪魔されたく無いって言うんなら何もしないよ。けど無理だったらすぐに言え…と。
此の言葉を思い出した俺は、あの男には何らかの方法があるのだろうと思っている。
...いや、一度あいつの仲間に捕まった時の話から考えると間違いなく何かあるだろう。
此の想いは邪な物では決してないとはっきり答える事が出来る。
なのに、俺はあいつに助けを乞う事が出来なかった。
頭から離れてはくれない、あいつの言葉を脳内で反響させながら、自分に言い聞かせた。
まだ何とかなる、絶対に何とかしてやる!...だからあいつの手を借りなくても大丈夫。
そう思い...イヤ、そう願いながら俺達は厳しい売り上げの中二周間目に入っていった。
ありがとうございました!!
明日はちょっと用事があって出せないです!
なんか評価お願いします!