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13話 彼の名は

お願いしますっ!!

『………何か用でも?』


俺は目の前に立っている茶髪の男を見て言った。


本当は普通に尋ねようと思っていたというのに、無意識で機嫌が悪くなりながら尋ねてしまっていた。


其の為に目の前の男も俺と同じ様にムッとしながら口を開く。


『…未だ、柳さんの所を手伝っているのか?』


『…そうだけど、なにか?』


『前も行った様に俺も柳さんを手伝いたいんだけど、どうかな?』


『…俺はタダの従業員の一人だから、そう言うのは柳さんとかに行って貰いたいんだけど。』


『其れは...ね、分かるだろう?』


『…… はぁ。』


思わず、溜息が出てしまうが仕方ない。


....何が分かるだろう?だ。厚かましい。


俺は数日前からしつこく話し掛けて来る目の前の男に、良い印象を抱けなかった。


男は何時も同じ様なニュアンスの言葉を投げかけてくる。


此の男の言葉を訳すとこう言う事だ。



...俺って、柳さんに気があるんだよー!

だから困っている柳さんを助けてお近づきになりながらも俺をアピールするチャンスなんだ。


と言う事で、俺も君達のやっている事に一枚噛ませて貰えないかな?


...えっ、自分で言えって?其れは流石に君に気がありますよって言ってるみたいなものだからさ、轢かれるかもしれないだろう?


其れはイメージダウンになるからさ、お前からこんな良い人が居るんだよって進めてくれよ。






みたいな事を此の男はぬかしていた。


だから俺は目の前の男の言葉に対して、知るかそんな物自分で何とかしやがれ!!みたいな事を遠回しに返すのだが、中々引き下がってはくれない。



初めは俺も人手は多い方が良いかもしれないと思っていた時もあった。


けど、目の前の男の顔と名前を見て知った瞬間に俺の意見は真反対の物となっていた。



...言わなくても分かるだろうが、一応何故だか言っておこう。


目の前の男は学年一、イヤ学校一顔が良いと言われる男だったのだ。


そして此の男は顔が良いと言う事だけでは無かった。


男の名前は森宮 誠と言い、此の辺りの地域では有名な金持ちだった。


名前だけは俺でも知っていたので自己紹介を受けた瞬間に万里の長城並みの心理的な壁が完成されていた。


イケメンで?、金持ちぃぃっ?


絶対に仲良く出来ない。


そう理解した瞬間、俺は適当に話を合わせて帰っていたのだけど2日前くらいからそうはいかなくなって来た。



先ず放課後になると、中々帰らせてくれない。


柳さんが困るみたいな事を言えば帰れるのだけど、其れでもしつこかった。


高宮の話を無視して帰れば良いのだけど、話し掛けられたら最後イケメンオーラにより何故か逆らう事が出来なくなってしまうんだ。



だから高宮の言葉を言葉を聞く前に早く帰ろうとすれば直ぐに止められて話し掛けられる。


寝て誤魔化そうとすれば起きるまで待って来る。


逃げる事は出来ないので最大限の嫌がらせとして、相手の時間を無駄に消費させてやっていた(ドヤ顔)


どうだ?イケメンが女とイチャイチャする時間を数十分潰してやったぞ。


そうプラス思考で考えるが自分の時間も潰されている事を思い出してしまうとイライラしてくるので考えない様にするのがコツだった。



さて、今日もどれ位イケメンの大事な時間を潰してやったかを確認しようと時計を見ると丁度17時になっている。


喫茶店は20時には閉まるので早く行かないといけない。


俺はジッと睨んで来る高宮を無視し、机の上に置いた弁当箱しか入っていない手提げカバンを片手に立ち上がる。



『...じゃあ、今から喫茶店だから。さようなら。』


『ちょっと待ってくれ!まだ話は終わってない!!ならお前は何で柳さんに手伝ってくれって言われたんだ!!』


『...分からないけど、料理か出来るからだと思う。』


『料...理?』


『話を聞いた感じそんな事を柳さんが言ってたよ。じゃあ柳さんが待ってるから此れで。』


『待ってくれ!』



そそくさと逃げる様に教室から離れようとする俺の腕をガッシリ掴んでくる。


何とか森宮の手から逃れようとするのだけども、其の度に腕を力強く握って来た。


鍛えているからか知らないがミシミシと俺の骨が圧迫する様な音を立てている。


『…なに?痛いんだけど』


『今、料理って言ったよな?』


『…そうだけど、何?』


『なら、やっぱり俺が手伝った方が良い。知ってるだろう?おれの親が料亭をしている事は...』


森宮は同然知っているよなと言うが、知った事ではないので其の儘帰ろうとする。


力づくで掴まれている腕を離して再び歩き出す。



『おいっ!!聞いてるのか高榊!!』


森宮は俺に無視され続けているからか少しイラついている様に見える。


だからと言って、何な態度を変えようなんて気が俺には怒らなかった。



『…なら、そう言いなよ。じゃあね。』


『其れだけじゃないっ!客が居ないんだったら俺の人脈で助けになるだろう!?』


『其れは凄いなぁ、なら困った時にそう柳さんに言っとくよ。』


『待てって!お前、まさか柳さんに気があるからそんな風に無視するのか!?そんな事をする余裕があるのならもっと、彼女の為になる事をしてあげ..



『もう、分かったから黙れよ。』


『…っ!。』


森宮がなんて言うのかを理解した俺はワザワザ近づき、声を張る事で奴の言葉を制した。




...この時の俺は明らかにイライラとしていたのだろう。


金持ちでイケメンで、顔が広い...そんな男を前にして発した俺の言葉。


偏見かも知れないが森宮は、貧乏で顔が良くなくて、友達も少ない、そんな俺に相手をされない。


その事に驚きを隠せなかったように見えた。


口を半開きにし目は完全に見開いていても森宮は、変わらずイケメンであった。


其れでも確かにマヌケと思える様な顔をしていた。



...ちっさい人間だとは俺も理解しているが、マヌケな顔してらぁザマァ見ろと思いほくそ笑んでいた。





数分後、そんな間抜けな顔でも俺よりはカッコ良いのだと言う事を理解してしまい何だか悲しくなりました。


ありがとうございましたっ!!

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