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創星のレクイエム  作者: 有永 ナギサ
2章 第3部 陣の選択

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70話 大司教

  陣たちはあれから、はぐれてしまったレンを探していた。

 気付いた時には、その場にいなかったレン。近くで見守っていたリルも、陣と同じく言われて気付いたそうだ。この旧市街は物騒極まりない場所。下手すれば、星葬機構の兵士につかまる可能性も。なので一刻も早く見つけないといけないため、ルシアと二手に分かれ近辺(きんぺん)を捜索しているのであった。


「レンの奴、なんでこんなところに」


 そして現在とある廃ビル一階の通路を走っている真っ最中。

 というのもついさっきこのビルに、レンが入っていく後ろ姿を見かけたのだ。追いかけて中に入ると、レンが奥の通路へ走っていく姿が。なのであわてて追いかけていた。


「レン!」


 陣は突き当たりの通路までたどり着き、彼女の名前を呼んだ。しかし彼女の姿は見当たらず、通路は行き止まりに。


「いないだと? もしかしてどこかの部屋に隠れやがったのか?」


 ここに来る前にいくつか部屋があったため、そこに逃げ込んだのかもしれない。もしかすると陣がついてきていることに気付いており、かくれんぼ感覚で遊んでいるのかも。

 考えていると、リルが姿を見せ床の方を指さす。


「ジンくん、ここに地下への通路があるんだよ」

「なんだって? ほんとだ」


 調べてみると、確かにそれらしきモノを見つけた。

 すぐに見つけられたのも、ハッチらしきものがほんのわずか開いていたからだ。


「あと、驚かないで聞いてね。たぶんこの下にアンドレーがいるんだよ。サイファス・フォルトナーの擬似恒星を感じる」


 それからリルは深刻そうな表情で教えてくれる。


「この下にアンドレーが? レンのことは気がかりだが、しかたない。リル、あとのことはルシアに任せて、当初の目的を遂行するぞ」


 まさかレンを追っていて、ターゲットを見つけるとは。おそらくこの下は、星魔教が保有するアジトの一つなのだろう。アンドレーがここを拠点にしているようだ。彼を見つけられたら、もうルシアに協力してもらう必要はない。レンのことは彼女に任せ、陣はさっそく侵入することに。

 ハッチを開け、リルと一緒に階段を降りていく。すると奥に続く薄暗い古びた通路が。壁にはところどころに火がついたろうそくが、あわい光で照らしている。通路内はしばらく使われていなかったのかどこもすたれており、不気味な雰囲気をよりきわだたせていた。


「よし、このまま奥に……」

「ほお、よくここを見つけたものだ」

「ッ!? 誰だ?」


 視線の先には四十代後半ぐらいの貫禄がにじみでる男が。

 ちなみにリルはというと、敵を察知してすぐさま姿を消したようだ。


「実際に会うのは初めてかな。ワタシの名前はグレゴリオ・デオダート。星魔教で大司教を務めている者だ。キミのことはカーティス神父から聞いているよ。四条陣くん」


 グレゴリオはほほえみながら自己紹介を。


「――あなたが今の星魔教トップの大司教……」


 カーティスによると、このグレゴリオが今の星魔教を仕切っているらしい。

 そして彼はレーヴェンガルト側と、深いつながりがあるとか。アンドレー同様、気が抜けない相手なのは間違いない。


「さあ、アンドレーのいるところまで案内しよう。ついてきなさい」

「え?」


 警戒(けいかい)していると、グレゴリオが予想外の言葉を。


「どうしたのかな? 彼に用があってきたのだろう?」

「そうですが、まさかつれていってくれるなんて。ずっと妨害してくるとばかり……」

「フッ、キミは前途有望な魔道の求道者だからね。アンドレーと出会うことで、いい刺激になると思ったのだよ」


 グレゴリオは陣の肩に手を置き、笑いかけてくる。

 本来敵であるはずの陣を、なぜここまで気にしてくれるのか。このことに関しては、彼が星魔教の人間だからだろう。星魔教の最終目標は人類が星詠(ほしよ)みの最終段階にたどり着き、どういう選択をするのか見届けることらしい。本来ありえない人智(じんち)を超えた力、星詠み。もはや神の御業(みわざ)といっていい代物ゆえ、その果ては神と同等の力が得られるのではないかと信じられているのだ。

 この信仰があるため星魔教信者は、星詠みを求道する者を身内のように扱うことが多い。たとえ星魔教とまったく関わりがなくても、その人物が星詠みの最果てにたどり着く可能性が。となれば手助けせずにはいられないと、いろいろ気にかけてくれるというわけだ。


「それにアンドレー自身も、キミに興味があるようなのでね」

「アンドレー・ローラントが?」

「実は彼とは長い付き合いでね。若いころのアンドレーは、非常に有望な魔道の求道者だった。そのあふれ出る探究心と才能に惚れこみ、ワタシみずからサポートしていたんだ。そして彼は期待に応え、ワタシが渡したサイファス・フォルトナーの擬似恒星を使いこなすまでに成長した。今では創星術師に、レーヴェンガルトの幹部にいたるほどに……」


 グレゴリオはなつかしそうに、昔のことをかたっていく

 星魔教の狂信者の中には特定の人物に惚れこみ、その者が最果てにいたるまで付きっきりでサポートすることも多いらしい。ようはルシアのようなタイプの人間だ。彼女は陣に可能性を感じ、従者(じゅうしゃ)となってサポートし続けることを希望しているように。この大司教もそんな感じで、アンドレーのサポートをしていたのだろう。


「だが残念なことにアンドレーにとって、サイファス・フォルトナーの擬似恒星は荷が重すぎたようだ。力を制御(せいぎょ)しきれず、暴走間近になってしまうとは……。ワタシの見立てではもう限界だろう。だからアンドレーが最後生きたいように、手助けしようと決めたのだよ。彼を見守ってきた星魔教信者として、最後まで付き合うと」


 グレゴリオは堅い決意を胸に宣言を。

 そのやるせない表情から見るに、よほどアンドレーに期待していたらしい。だからだろうか。もはや彼に未来がなかったとしても、最後までサポートに徹するという強い想いがひしひしと伝わってきていた。


「キミを案内するのも、その一環というわけだ。罠ではないから、安心してついてくるといい」

「そういうことならわかりました」


 ただアンドレーが会いたがっているから、陣を案内してくれる。ならばグレゴリオ大司教の行動はそこまでおかしくはない。罠という線は薄いはず。なので陣はついていくことに。


「よろしい。ではいくとしようか」


 こうして陣はグレゴリオに連れられ、地下の隠し通路を進んでいくのであった。





次回 アンドレーの忠告

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