42話 追跡
陣たちはリルを先導に走っていた。
そしてたどり着いたのは今日リルと出会った、工場地帯が近くにある海沿いの道。ここら辺りは特に店もなく、人がなかなか寄り付かない場所。さらに陽が沈む暗くなっている今だとなおさらであり、人の気配はほとんどなかったといっていい。
すでに辺りは薄暗くなっており、設置された街灯がつきだしたころ合い。そんなどこか不気味な海沿いの道を、三人で駆け抜ける。
「――はぁ、はぁ……、ねえ、リルー、この先に本当にいるの?」
灯里が息を切らせながらたずねてきた。
「どうやらそのようだ。この空気が凍りつくような圧迫感。間違いない。この先で殺気を出して、待ちかまえてるぞ」
ここまで来ると陣でもわかる。なんとここら一帯に、強力な星詠みの余波を感じるのだ。おそらく相手はわざと自身の星の輝きを漏らし、誘っているのだろう。目的は不明だが、闘争心に満ちているのだけはわかった。
「ジンくんも感じるんだね。うん、この星の余波。間違いなくサイファス・フォルトナーと同じなんだよ」
「これが例の星の輝きか……。ははは、この禍々しさ、なるほど。ぞくぞくするぜ」
「陣くん、リル! あそこに人影が!? あれ? でもあそこにいるのって……」
あまりの星の輝きに感動していると、灯里がふと気づき指をさした。
彼女の指さした先を見ると、確かに人影が。しかしどういうことか、その人物は陣にとって見覚えのある人物であった。
「クレハ? どうしてここにいるんだ?」
そう、そこにいたのは陣の幼馴染、クレハ・レイヴァース。彼女は戦意をたぎらせ、すでに臨戦態勢をとっていた。
「それはこっちのセリフよ。あんたたちなにしにきたの? ここは危ないから今すぐ……、ッ!?」
クレハは陣たちに気付き、あわてて避難をうながそうと。だが次の瞬間、彼女は異変を察知する。
「やつめ、逃げやがった!? チッ、追いかけるぞ!」
この異変は陣も気づいた。
さらに奥の方で、誰かが踵を返すのが見えたのだ。その人物こそ、星の余波を漏らすターゲットに違いない。おそらく陣たちという予定外の乱入者を察知し、この場から立ち去ることにしたみたいだ。
追いかけようとする陣だが、クレハに腕をつかまれてしまう。
「陣、待ちなさい! あの星の余波はそこらの創星術師と違う。星詠みを使えないあんたに、手に負える相手じゃない。ここはワタシに任せて引き返しなさい」
「ははは、聞けない相談だな。あいつはオレの得物だ。むざむざ引くわけには」
「ダメ! あいつだけはやめときなさい! あの星の輝き、すごく嫌な予感がするの!」
「クレハ?」
クレハは陣の腕をつかむ手にぎゅっと力を入れ、必死に危険を訴えてくる。
その彼女の青ざめた表情から見るに、相当ヤバイ相手みたいだ。
「――はぁ、はぁ……、陣くん、リルー。わたしもう走れないよー……」
「ジンくん、残念だけど、もう相手は離脱したみたいなんだよ」
リルは息切れする灯里を見て少し思考したあと、告げてきた。
「なに? 魔法を使って一気に距離を取ったのか。――クソッ」
どうやらこの場でとどまっている間に、敵はもう離脱しきったらしい。さっきまで感じていた星の余波は、ほとんど感じられなくなっていた。これでは今から追いかけても、捕まえることはかなわないだろう。
「――クッ、ここまで来て見逃すなんて……。次は絶対つかまえてやるからな」
陣は敵が去ったであろう方角を悔しそうに見つめ、決心をあらたにするのであった。
1章 第3部 運命の出会い 完




