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創星のレクイエム  作者: 有永 ナギサ
1章 第2部 幼馴染の少女

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27話 二人の幼馴染と修羅場

 陣たち三人は、神代(かみしろ)特区にあるクロノス本社の高層ビルに来ていた。

 なんでもまずは上代側の代表に、あいさつをしに行くとかなんとか。クレハは敵地とあって緊張の色が。逆に灯里はというと物珍しそうにはしゃいでいたという。そしてようやく目的の部屋へとたどり着いた。

 呼ばれた部屋に入るとそこには奈月がソフォーに座って、書類に目を通していた。

 ここは来客用の客間であり、いかにも金が掛かった豪華な家具や装飾品が置かれている。さすがは世界のトップに君臨する財閥。VIP室はもはや宮廷きゅうていクラスの内装といってよかった。


「あら、来たわね。本来なら神代の代表者がお出迎えするべきなんだけど、今当主も次期当主も急用で手が離せないらしいの。だから今回はこの神代奈月がおもてなしさせてもらうわ。ぜひゆっくりしていってちょうだい」


 陣たちが来たのを確認し、奈月は立ち上がって出迎えてくれた。

 どうやら今は神楽(かぐら)さんもスバルもいないらしい。クレハが神代特区に来たのはスケジュールを前押ししてということだったので、予定が合わなかったのだろう。よって神楽の右腕である奈月が、歓迎するはめになったというわけだ。


「これはご丁寧にありがとう、奈月さん。ぜひそうさせてもらうので、今日はよろしく」

「くす、こちらこそ」


 奈月とクレハは握手あくしゅをし、穏やかにほほえみながらあいさつを。


「なんだ、案外友好的だな。てっきり会って早々冷戦みたいな感じで、ギズギズした空気になると思ってたぞ」


 これに関しては少し意外であった。彼女たちは神代とレイヴァースの人間。ゆえにこれまでの因縁がら険悪なムードになると思いきや、割と和やかなのだ。いきなり罵倒(ばとう)しあうぐらいあると予想していた陣にとっては、少し拍子抜けであった。

 すると二人は大人びた感じで、たしなめてくる。


「もう、陣、なにを言ってるのかしら? クレハさんはお客さんなのよ……」

「そうよ、陣。ワタシはお招きしていただいた立場なんだから……」

「「こんなのただの社交辞令のなにものでもない!」」


 だが次の瞬間二人は穏やかなほほえみから一転、仲良くなんてできるわけないだろうと不満を爆発させた。


「面として言いきりやがった!?」

「いくら相手があのはた迷惑な秩序の押し付けをしてくる、星葬機構のイカレタ親玉だとしても、もてなさないとこちらの品性が疑われてしまうわ。だからこんなに営業スマイルを全開にして、歓迎ムードが作れるようがんばってるんじゃない」


 奈月はほおに手を当て、憂鬱そうに説明を。


「あの神代の先槍としてよく出しゃばってくる、目障(めざわ)りな神代奈月を仕留めたいのは山々だけど、さすがにこの状況下では問題があるでしょ。だからなんとかこらえてるのよ」


 クレハは腕を組みながら、いらだった声で言い放つ。

 そんな視線で火花を散らしながらの、挑発合戦。両者完全に敵意むき出しであり、さっきまでの和やかな空気は跡形もなくなってしまっていた。


「ありゃりゃ、なにやら不穏な空気が出てるね。ねぇねぇ、陣くん、陣くん。ここは一発、私がこの空気をデストロイしよっか?」


 灯里はそんな空気を見かねてか、うずうずしながらたずねてくる。


「ははは、灯里はすごいな。この神代とレイヴァースによる冷戦の空気に怖気(おじけ)ず、立ち向かおうとするとは。まっ、好きにしろ。応援はしてやるからさ」


 まさかこの空気におくせず、割り込んでいこうと思えるとは。やはり灯里、ただ者ではない。陣としては関わると面倒そうなので、後ろで様子見だろう。

 陣は灯里に感心しながらもエールの言葉を投げかけ、奈月の横に戻ろうとする。


「ちょっと、陣、どこ行こうとしてるのよ! 今日一日、あんたはワタシのお付きでしょ! ただでさえ敵地のど真ん中にいる孤立した状態なんだから、後ろについていてよ!」


 するとクレハがあわてて陣の腕をつかんで、引き止めてきた。


「心細いってか? まあ、クレハがそこまで言うならいてやってもいいが」

「な、なにバカなこと言ってるのよ!? べ、別に心細くなんかないし!」


 図星だったのか、顔を真っ赤にさせるクレハ。


「くす、そういうこと。クレハさん、ごめんなさい。陣はアタシの付き人だから、いくら欲しがっても渡せないのよね。さあ、陣、戻ってらっしゃい。ご主人さまがかわいがってあげるわ」


 するとなにやら奈月が勝ち誇った笑みを浮かべ、もう片方の陣の腕をつかんできた。そしてぎゅっと陣の腕を抱きしめ、自身の方へと引き寄せる。まるで自分のモノと見せつけるかのようにだ。

 もちろんその過程上、腕には柔らかい感触が押し寄せていて。


「――こ、この女……。陣、そんな性悪女に惑わされてないで、こっちに来て! そして幼馴染であるワタシを守るの! 付き人なんかの役職よりも、腐れ縁の関係の方が大事でしょ!」


 するとクレハも対抗してか、つかんでいた陣の腕を抱き寄せ引っ張ってくる。

 そのため反対側からもひかえめな柔らかい感触が。


「あら、残念ね。アタシも小さいころから陣と一緒にいるから、幼馴染の関係といえるのよね。主人に幼馴染、もうクレハさんに勝ち目はないから離して観念なさい」

「しょせん二番目でしょ! 一番始めの幼馴染はこのワタシ! それに陣のことはワタシが、ずっと前から専属の騎士にしようと予約してたんだから!」


 お互い引っ張り合っているため両腕に胸の感触が半端(はんぱ)ない。ちなみに大きさは圧倒的に奈月が上。彼女は美人プラス、スタイルも抜群なのだ。それに比べクレハの方は小さめで、戦力差がわりと激しくかったりする。

 ただこの状況役得感はあるが、所有権を取り合いされるのはなんだか気に入らない。なので二人に文句をぶつけることに。


「お前ら暑苦しいから離れろよ。オレは誰の所有物でもないんだからな。――はぁ……、灯里、どうにかしてくれ」

「おお! 陣くんが先にデストロイしていったー! ねえねえ、これって修羅場だよね! あはは、陣くんやりますなー。ささ、面白そうだからもっと()り上がれー!」 


 陣の要請(ようせい)に対し、灯里は野次馬全開でもっと盛り上がれと応援を。もはやこの修羅場っぽい光景にはしゃいでいる始末だ。


「おい、なに楽しんでやがる。一応バイトで雇ってるんだから、働け」

「ちぇ、わかったよー。ほら、クレハには友達である、この灯里さんがいるでしょ! だからここは一端引いて、落ち着こ!」


 灯里は正論にさとされてか、残念そうにしながらも二人を止めに入ってくれた。陽だまりのようなほほえみを向けて、クレハを説得。そして彼女の腕を取って、陣から引き離してくれる。


「――灯里……、ありがとう。あなたはワタシの味方でいてくれるのね」

「ばっちこいってね! 私は友達を裏切らない主義だから、安心していいよ!」


 感動するクレハに、灯里はどんっと胸をたたき後光(ごこう)がさすかのごとく優しいほほえみを。


「灯里さんっていうのね。どう、こっち側にこない? 今、お茶菓子を用意してるから、来れば好きなだけご馳走するわよ?」

「わーい! 奈月さん、一生ついていきますぜー!」


 そんな完全にクレハの味方発言をしていた灯里。しかし奈月の提案に両手を上げ喜びながら、忠誠の意志を示す。


「あ、灯里!? 裏切らないって、今言ってなかった!?」

「――クレハ、ごめんね……。世の中には、自分を曲げないといけない時があるんだよ。そう、それが今この時!」


 もはや唖然とするクレハに、目を閉じながら世界の理不尽をなげく灯里。最後には悔しそうに、グッとこぶしをにぎりしめてだ。

 その雰囲気は一丁前だが、完全にただの私利私欲な内容であった。


「灯里の奴、あそこまで言い張って、お茶菓子で買収されやがった」

「灯里、あなたね……」

「あはは、冗談だって、クレハ! まあ、本音を言いますと、どちらをとろうか迷いに迷ったんだけどね!」

「くす、灯里さんって面白い子ね。気に入ったわ。ぜひお友達になってくれないかしら?」


 奈月は楽しそうに盛り上がる灯里を見て、吹き出す。そして口元を緩めながらたずねた。 その笑みは決して奈月が得意な社交辞令ではなく、彼女の心からのものである。どうやら奈月はそうとう灯里のことを気に入ったようだ。


「灯里でいいよ! 奈月! 友達なんだから遠慮なく仲良くやろう! さあ、お友達記念のお菓子パーティーとしゃれこもうよ! ほらクレハも!」


 灯里はまぶしいほどの満面の笑顔で、奈月に(こた)える。そしてみなでお茶をしようと話を進めだした。


「くす、ちゃっかりしてるわね。いいわ、ますます気に入った。クレハさんも席に着いて。灯里もいることだしここは穏便にして、お茶会を楽しみましょう」

「仕方ない。灯里に免じて付き合ってあげる」

「灯里すごいな。マジでこの場を丸く収めるなんて」


 やれやれと席に着く奈月とクレハを見て、驚きを隠せない。

 灯里のおかげでさっきまでの険悪なムードは一転。二人とも彼女の放つ暖かい陽だまりのようなオーラに、毒気を抜かれたようだ。


「あはは、ギズギズしてるより、楽しい方がいいでしょ? ほら、陣くんも行こう! もちろん陣くんは私の隣で! あはは! なーんてね!」


 灯里は陣の腕を取り、席の方へ誘導を。最後には一瞬こちらがドキっとなるような、小悪魔的な冗談を言いながらだ。





次回 奈月大好きっ子

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