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マシン・ブレイカー ―Crusaders of Chaos―  作者: マシン・ブレイカー制作委員会
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八話 能力制限

 戦艦ジョディ・グリーソンは、横須賀の米軍基地に着艦し、ジョナサンは戦艦を降り、マイクの部下達に巨大な格納庫に案内され、中に入る。

「いつ見ても変わってないな。風景は」とラッキーストライクの煙をふかしながら呟いた。

 格納庫の奥には白衣をつけた男達と先にヘリで到着していたマイクが待っていた。テーブルには、大きなアタッシェケースが2,3個置かれている。マイクはマルボロを吸いながら出迎えた。

「中尉。長旅は辛かったか?」

「マルボロの煙は好きじゃない。船でのラッキーが心の支えだったよ」とジョナサンは船での疲れを、皮肉で返した。

 マイクは、ほくそ笑み、白衣の男を紹介する。

「ふっ。それより、紹介しよう。こちらの男はDr.ホプキンス。ウェイカー中心の兵器製造専門の武器屋さ」

 白衣姿の男は、不気味な笑顔でジョナサンを迎える。

「どうも。お噂はかねがねだ。中尉」と右手を差し出すが、ジョナサンは反応しなかった。

「握手はしない主義だ」

 ホプキンスは苦笑いをしながら手を戻した。

「ははは。そりゃあいい心がけだな。早速だが、君に適合する武器を作成させてもらった」とアタッシェケースの鍵を開け、ゆっくりとケースを開ける。

 ジョナサンはケースから出てきた数個の装備に、視線を向ける。マイクも二人の姿を見ながらマルボロの煙を蒸す。

「こいつは、ソーコムを独自改良し、ウェイカーに適合するようになっている。これを使うには、ソーコムの持ち手に、認識機能がある。触って登録するんだ。登録は自動的に認証されるから心配はない。これは君のだ。認証を」

 ジョナサンは言われるままケースのソーコムを取り、感覚を確かめる。

 すると、ソーコムの持ち手から静電気が走る。

「いて!」

「はははははは。今のは、持ち主の認証登録だ。心配するな。ドッキリじゃない」とホプキンスはソーコムが入っていたケースの隣のノートパソコンに認証されているかを確認した。


《 認証完了 ジョナサン・R・レイン 》


 ソーコムの持ち手には、さっきまでなかったはずのイニシャルが彫られていた。


《J・R》


「悪くないな」

「そうだろ? なかなか悪くない仕上がりだ。そうそう、これだけではない。見せたい物はいっぱいあるんでね。ついて来てくれ」とホプキンスは左手で指を鳴らし、踵を返して奥へと向かう。

 ジョナサンはソーコムをもとのケースに戻して、白衣姿の男に言われるまま、マイク達と共について行った。

 案内された所は外装の割には、最新様式作りの研究室でギャップがあった。

「ここは?」

「ドクターの研究室だよ」とマイクは、マルボロの吸殻を簡易灰皿ケースに入れた。

「心配しなくていいよ。中尉。君の情報は戦艦に運ばれた時に既に収集済みだよ」

 研究室には一つのテーブルに、白銀の布が覆いかぶさっていた。

「これぞ、まさに我が人生の中でも最高の兵器だ」

 ホプキンスは布を両腕の力を使って引っ張り、作り上げた最高の兵器とやらをお披露目させた。

 あらわになったテーブルの上に一丁のスナイパーライフルが、綺麗に置かれていた。

「このライフルは君が愛用していたPSG―1のモデルを採用し、ウェイカー向けに改良してある。あのライフルは実にコンパクトで、インパクトがあるが、華がない」

 ジョナサンは、どう反応すればいいのか分からず、ただ一言の皮肉だけ。

「研究室の中で潜りすぎたな。あんた」

 ホプキンスは勝ち誇った顔でジョナサンに返す。

「こいつを使った後で評価は180度に変わるはずだよ。私の事をね。まぁ、持ってみたまえ」

 ジョナサンはライフルを持って天井に向け、持った感覚、スコープからどのぐらい見えるかを確認した。ライフルの弾倉がないことに気づいた。

「おい、弾倉がないぞ。リロードとかはどうやってやるんだ?」と訊きながらライフルを元のテーブルに置いた。

 ホプキンスはジョナサンの反応に、素直に喜んだ。

「やっぱりそこに気づいてくれるとはな。これについては今から説明してあげよう。まず、中尉。これをつけたまえ。君の新しい腕時計だ」

 ホプキンスは白衣のポケットから一つの真新しいダイバーウォッチを取り出し、ジョナサンに投げ渡した。

「おいおい」となんとかダイバーウォッチをキャッチし、はめる。

 すると、突然、時計部分が赤く光りだし、研究室の一面を赤く染め上げた。

「何だ!? いきなり、この光は?」

「くっ」とマイクは、光を避ける為にサングラスをかけて、自分の目を守る。

「しっ! 静かにしてくれ。ウェイカーの能力を制限しているんだ」

 数秒間、赤い光が研究室を照らした。光はゆっくりと小さくなって時計の中へと収まっていく。

「さっきのは何だったんだ!? 一体何が!?」

「今のは、君が能力を制限させる様に仕向けたものだ。いわば君=ウェイカーというパワーバランスを作り上げたという事。君の事は以前の戦闘映像を見て理解したんだ」

 ジョナサンは彼が説明している内容について全く理解ができず答えようがなかった。

 ホプキンスの口からジョナサン自身の能力について告げた。

「君はまだ能力を制限する事ができていない。その時計は、君の能力をある程度制限するようにしてあるんだ」

 ジョナサンは、ホプキンスの話を聞きながら腕時計をよく見た。デジタル時計の文字盤の下に。プラチナと赤い宝石でコーティングされた球体が光っていた。

「いま光が収まっているのは能力を制限されている証拠だ。その時計は自分の力も調節できるから安心しろ」

「今更、安心もクソもあるか。で、この時計とライフルに何か関係が?」

「ああ、ある大いにあるね。来てくれ」とホプキンスは、ライフルと一緒に研究室から出る。

「おいおい、ちょっと待ってくれ。ドクター……」

「ホプキンスだ! Dr.ホプキンス」と返し、ライフルと共に歩く。

 研究室から海が見えるところに出て、立ち止まる。

「さて、中尉、今からライフルを持って構えてくれ。海に向けて一発、撃て」

 ジョナサンは、ホプキンスの発言を理解できず、マイクに視線を向ける。

「えっ? いいのか?」

「ああ、構わない。どうせ訓練という扱いで書類に一枚サインするだけだからな」とマイクは発砲を許可した。

 言われるがままジョナサンはライフルを渡してもらい、遠く海面に向けて、ライフルを構えた。

「撃て!」とホプキンスが大きな声で合図し、そのアイズを聞いた瞬間に海面に向けて引き金を引いた。

 引いた瞬間、ライフルから一発の大きな銃撃音を、周りに響かせた。

 弾丸が発射された。赤い弾丸が一瞬のうちに海の中へ消えた。

「これでいいのか……?」とジョナサンはゆっくり、ライフルを下ろした。

 ライフルと下ろした瞬間と同時に、腕時計の赤い球体が突然光を放った。

「時計が光ってる!?」

 ホプキンスは、確信してジョナサンに告げた。

「中尉。海面を見てみろ!」

「?」

 ジョナサンはライフルのスコープから着弾した付近を凝視する。

 すると海面から大きく赤い光が上へとのぼっていく。爆破した火炎が海面から吹き出し。

「コイツは凄い」とホプキンスも心底驚き、映像とは違ったものを見て、何かを感じていた。

 ジョナサンは訊いた。

「もういいか?」

「ああ、結構。どうやら君の能力はかなり大きい。それなりの疲労も出てくるだろう。さっきも言ったが、その腕時計があればその心配はないだろう」

 ホプキンスの言うとおり、ウェイカーになった時の疲労感はなく、爆破の威力も弱かった。

「確かに。疲れは感じなかった」とジョナサンは言いながら腕時計を見た。球体は輝いていなかった。

「で、今、中尉が使ったライフルは、中尉の力を、弾丸に変えて、標的を打ち抜く……だから、弾薬や弾倉はいらないのだよ。そのほうが地球に優しい」

「なるほどね」とジョナサンは理解した。

「あとの装備は、マニュアルを入れてあるから移動中にでも読んでくれ。おっと、もうこんな時間か……さて私は、別の仕事があるのでね。あとは任せたよ。アームストロング」とホプキンスは軽くマイクの肩を叩いてこの場をあとにした。

「ああ、任してくれ」

 ジョナサンはホプキンスがどんどん遠ざかっていくのを見ている。

「さて、中尉。君には警視庁に向かってもらうはずだったのだが、予定変更だ」

「何?」

「イイ警視総監が直々にお迎えに来るそうだ」

「!」

 ジョナサンは何も言うことができなかった。そんなジョナサンをおいてマイクは言った。

「いや~日本人は面白いな。いつの時代も、礼儀が正しい。わざわざ部下を送るのではなく、呼んだ本人直々で迎えに来るとはな」

「そうか」

「まぁ、懐かしい感動の再会が待ってるわけだが、そうもいかない。我々も時間がないのでね。軽い概要を言おう」とマイクはポケットから一枚の写真を手渡し、写真に指を指した。

「コイツは?」

 その写真には、何かの研究会の写真なのか白衣姿の研究者達が並んで写っている集合写真で、マイクの指には一人の日本人研究者が示されている。

「イツヒコ・クロシマ、日本人だ。調べるとこいつが俺たちの国で起こした事件の実行犯の一人ではないかと見ている。ここ最近の調べで奴が日本にいると分かった」

「じゃあどうして捕まえない?」とジョナサンは訊いたが、マイクが発した答えは単純だった。

「今まで死亡していたと思われていたんだ。だが、偽装工作だったよ。証拠も上がっている。君は魔導課に特別配属になるだろう。奴を捕まえ、こっちに身柄を引き渡すようにしてもらいたい」

「…………」

「何、簡単な事だろう? 実行犯である黒島を捕まえて身柄を拘束する。そういう事だ」

 ジョナサンは、ラッキーストライクを取り出し、口にくわえる。

「まぁ、そういう事だ。頑張ってくれ」

 マイクは、ジョナサンに向けて、軽く肩を叩き、部下と一緒に基地へと戻っていく。

 ジョナサンは煙草の煙をふかした。




【とんでもない事になっているような気がするな……なぁ、アキヒト……】



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