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マシン・ブレイカー ―Crusaders of Chaos―  作者: マシン・ブレイカー制作委員会
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五十話 信念と新兵器

 とある漫画喫茶の1室、決して広いとはいえない部屋の中には2人の男がいた。

「で、言いたいことはそれだけですか?」

「……はい。ギガロポリスの中にいてくれて助かりました。今のままだと何も知らない人に八つ当たりしそうだったので」

「どういたしまして。……そうか、国崎早苗は生きていたのか」

 壁にもたれかかっていた男性から暴言や愚痴が流れ出ていたのが止むと男性は背を向けたまま座っている椅子の背もたれに寄りかかったままつぶやいた。

「会いたいですか?」

「いや、会っても話すこと無いだろうからいいよ」

「3年も会ってないなら少しぐらいありそうなもんですけど」

「彼女と僕はすでに道を分けた者同士だ。彼女も僕に話すことなんて無いだろうよ」

 そう言って椅子を回したのはシワが増え初老のような風貌になっている志波だった。

「国崎は覚醒した人間の力による支配主義、黒島は機械を使える者の暴力と権威による支配主義、『将軍』は機械に人間が依存する半支配主義、どれも僕の理想とは相容れない」

「……確か、志波さんの理想って『人間と機械が同じ立場に立つ』でしたっけ」

そんな志波に新垣は確認するように問いかけた。

「ええ。そのためにはどうしてもアギトが必要だった。だから僕は彼女と行動を共にしたんです」

 人間がアギトと呼ぶことにした超能力を持つことで進化し続ける機械と対等な立場に立つ。それは早苗と志波、2人とも同じ方針だった。

 しかし機械と共存する形で少しずつアギトを広めていこうと考えていた志波と機械の危険性を世間に広めて排除しつつ人類を一気に覚醒させ頂点の存在にしようとした早苗との認識のズレは少しずつ広がっていた。

 いつまでたっても強行策に出ようとしない志波に痺れを切らした早苗は自身とは相容れない過激な思想を持っていた黒島に接触し、あの事件を起こした。

「その結果がどうなったかはご存知の通りですがね」

 自嘲する志波に背中にある壁に寄りかかっていた新垣は目を閉じた。

「そんな国崎がメイドロボと一緒に行動している、っていうのは皮肉なものですね」

「いくらフィグのような失敗しない高性能なロボットでも生身の人間の温かさには叶わない。……そんなことを彼女はよく言っていたよ。どういう意味かあの頃の僕は分からなかったけどね。きっと彼女は全てが終わったらフィグネリアも壊すつもりだろう」

「使えるもんは最後まで使ってから捨てる、ってか?」

 志波の強欲すぎる早苗の思考予想に新垣はバカにするように息を吐いた。

 そんな時、外から悲鳴と何かを殴りつける音やぶつかる音も続けて聞こえてきた。

 不審に思った志波が扉を開けるとタイミングよくその扉に向かって何かがぶつかってきた。

 その重みで壊れて倒れた扉の上では首から血を噴き出しつつ痙攣して倒れる男の死体があった。

「出来立てホヤホヤ、だね?」

 志波が男の体が飛んできた方を見ると物干し竿ほどの長さがある鉄の棒を無茶苦茶に振り回して狭い店内にいた客を殺すアンドロイドの姿があった。

「アンドロイド……!」

「僕を追ってきたのか、はたまた侵入されたのか……。どっちにしても警察と自衛隊のメンツは丸潰れだね」

「もうとっくのとうに潰れてますよ」

 そんな時、新垣の携帯が鳴った。相手は槙原からだった。

「どうやら後者の方みたいです」

 画面を一瞥した後、それに出ることなくポケットに戻した新垣に志波は目を閉じて息を吐いた。

「そうか。本来なら出るべきなんだろうけど呑気に出てたら殺されてしまうからね、仕方ないね」

 そう言って手を出した志波の手からは白い煙が出てアンドロイドの体にまとわりついた。そして志波の顔の皺が無くなっていくと併行してアンドロイドの動きが鈍くなりその場に崩れ落ちる……はずだった。

「……む?」

 しかしアンドロイドの動きは止まらず近くで腰を抜かしてへたり込んでいた店員の腹を貫いた。その動きはまるで志波の存在や行為を全く気にしていないようであった。

「志波さん下がっていてください!」

 そう言って志波を押しのけた新垣が熱を発するとアンドロイドの装甲が溶け、そこから中の部品がいとも簡単に転げ落ちてきた。

「これは……ゼンマイに爆弾? それでこの威力か……」

 動きを止めたアンドロイドの中身を覗き込んだ志波は目を丸くした。

「流石に対抗策を練ってきてるのかな、こんな前時代的な物で攻めてくるなんて。確かに僕のアギトじゃあカラクリ人形は止められ……」

 感想を述べようとした志波が振り返ると新垣は胸の辺りをしきりに触っていた。その様子を見て志波の目つきは鋭くなった。

「まさか、きた(・・)んですか?」

「……よくもった方だと思いますけど。今までは1ヶ月に1回のペースだったんで」

「それはそうでしょう、毎日が戦場のような場所で闘っていた傭兵業ときちんと休みがある公務員の仕事を同じにするんじゃないですよ。……でもそうなると厳しいね。今魔導課にいるアギト使いで満足に闘えるのは君だけだろう?」

 新垣はその問いに何も答えなかった。

 それは志波の指摘がまぎれもない事実で、反論がないことを暗に示していた。

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