表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マシン・ブレイカー ―Crusaders of Chaos―  作者: マシン・ブレイカー制作委員会
34/54

三十四話 暴かれるA-Sのトップシークレット

 病院に運ばれ、入院しているA-Sを見舞うため、新垣は花を片手に病室へと向かっていた。

「早く復帰してくれるといいんだが……」

 井伊の話によると、まだ数週間、入院が必要だという。

 目当ての病室を見つけ、新垣は声をかけた。

「おーい、A-S。いるんだろ? 開けるぞ?」

 そういって、扉を開けると。


「………」

「……………へ?」


 そこには、上半身を裸にした、銀髪の女性が立っていた。

 驚いた顔で新垣を凝視し。

「こんの、ばかやろーっ!!」

 近くにあった花瓶が、新垣の頭にジャストヒットした。



 そして……。

「いや、その……悪かったな」

「反省しているなら、いい……」

 つんとした顔でベッドに座るのは、ミラーシェードをつけたA-S、だった。

 その前には恐縮しまくって椅子に座っている新垣がいる。

 病室にはこの二人だけなのだが、妙にギクシャクしてるのは、やはり先ほどのハプニングが影響しているから、だろう。

「その……お前が……その……」

「みなまで言うな。聞いているこっちが恥ずかしくなる。で、用はなんだ」

 A-Sにそう切り出されて、新垣は思わず。

「女、だったんだな」

 そう呟いた。

「男だと言った覚えはないぞ」

 言われてみればそうだ。

 彼、いや、A-Sは自分が男だとも女だとも言っていなかった。

 しかも、なかなかのむね……いや、これ以上言ったら殺されるだろう。

「で、用はそれだけか?」

「っていうか、なんで胸がそのっ!!」

 思わず本音がちらりと出る。

「女だといろいろと不都合があるんだ。分かるだろ?」

「分かる以前に、親御さんは心配しないのか?」

 新垣の言葉にA-Sは、苦笑を浮かべた。

「おじ様から聞いていないのか? あの事件で僕の家族は全て死んでいる」

 その返答に、新垣は言葉を失う。

 彼女はA-Sは一人で戦っていると聞く。

 しかも、女としてではなく、男のように装って。

「だから、言いたくなかったんだが」

 新垣の顔色を見て、A-Sは口を開いた。

「見てしまったものは仕方ない。だが、このことは他言無用にして欲しい」

「能見には言ってもいいんじゃないのか?」

「今さら言えることでもないし、今の関係で充分だ」

 その返答に新垣は一抹の寂しさを感じながらも、手に持っていた花をA-Sに手渡す。

「で、お前はこれから何をするつもりなんだ? 武装して」

 新垣のその言葉に、A-Sは当たり前と言わんばかりに。

「決まっているだろ? ここにいても時間の無駄だ。復帰して……」

「馬鹿か」

 ぼすっと、A-Sを小突き、ベッドに戻す。

「ちょ、お前っ!!」

「まだ入院してなきゃ駄目なんだろ? 総監がそう言ってたぞ」

「だが、その怪我は身体強化フィジカルブーストで回復させた。もう問題な……」

 かちゃりとA-Sの目の前に突き出したのは、銃口。魔導課から支給されたもののソレだった。

「死にたいのか?」

 真剣な眼差しの新垣に、A-Sは殺気を消し、手を上げた。

「わかった、降参だよ。お前の言う通りにしよう」

「分かればいい」

 しかし、銃はそのままA-Sを離さない。

 A-Sはため息一つ零して。

「大人しくここにいるから、着替えていいか?」

「お、あっ!! す、すまんっ」

 やっと新垣はその銃を仕舞った。

 すぐさま部屋を立ち去ろうとするが、そこで立ち止まり、振り返った。

「もし、聞いていいのなら、お前の本当の名前、教えてくれないか? どうせ、A-Sってのも偽名なんだろ?」

「アスナ・彩敷さいしき・セイファード。それが僕の名だ」

「……え?」


 新垣は部屋を出た。

 そして、A-S……いや、アスナの言った名を思わず、心の中で、反復した。


 ―――アスナだって? よりにもよって、なんで……。


 壁に自分の拳を打ちつけようとして、止めた。

 それをして何になる?

 いや、今は……アスナが病院に居ることを決めてくれたことを喜ぶとしよう。

 新垣はそう顔を上げ、病院を後にしたのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ