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マシン・ブレイカー ―Crusaders of Chaos―  作者: マシン・ブレイカー制作委員会
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十九話 熱くなる蔦使い、冷めてる熱使い

「無事だったかA-S!」

「だーっ、暑苦しい、ひっつくなー!!」

 思わず抱きつこうとした井伊の腹に見事な右ストレートが決まった。……他人事ながら新垣はかわいそうだと思った。

 井伊は腹をおさえ、引きつった笑みを浮かべながら国崎に声をかけた。

「国崎くんも悪かったな、関係無いのに急にメールなんかして」

「いえ、自分のせいでA-Sさんは捕まってしまったような所もあるので……」

 国崎が申し訳なさそうに口を開く。その横でフィグネリアはなおも追撃を加えようとするA-Sを必死に食い止めていた。

「ねぇ、あなたは報告しに行かないの?」

 そんな3人と1体から離れた場所で、能見は不思議そうに新垣に声をかけていた。なぜなら、今の新垣の姿は赤いバイクにまたがり、黒のヘルメットをかぶった今にも「これにて失礼いたします」と言わんばかりの物だったからだ。

「別に良いでしょうよ、俺は所詮雇われ職員なんで。それに師匠も帰っちまったみたいだし」

「……なら、帰る前に一つ聞かせてもらいたいことがある」

 能見は厳しい顔つきになると、国崎を指差して言った。

「なんであんたはあんな危険人物を仲間に引き入れようとしたのか、教えてもらえるかしら?」

 大量の機械兵を相手にする上で、仲間との連携は必須事項である。しかし国崎の戦い方は周りのことを考えない、ただ敵を倒すだけの荒い物だった。もしあの場に新垣がいなければ、能見は今頃ミンチ状態の死体となっていただろう。

 すると新垣はヘルメットのシールドを上げて、自分の顔を露出させて言った。

「俺だって、あいつの近くで戦うのは御免です。でも、その代わりあいつの戦い方はインパクトがある。周りの機械兵全体があいつを注目してしまうほどに」

 そして能見の顔を見て続ける。

「その間に俺たちが裏口から入って犯人を捕まえる、っていう形が望ましいかな、と思ったんです。今回国崎の戦っている場所に連れていったのは能見さんが『助けにいった方が良いんじゃないか』ってうるさかったからです」

 能見は一瞬口ごもったが、すぐに立て直して言った。

「なら、なんであのメイドロボ……フィグネリアだっけ? あれに流れ弾が来なかったの」

 黒島の元にいくまで、新垣と能見のところには大量の破片が飛びかかってきたのに対し、フィグネリアには全くかかっていなかったのだ。

「……あいつに唯一残された守る物だからですよ」

 新垣は空を見ながら、独り言のように言った。

「でも逆に言えばそれしか見えていない。あいつはフィグネリアさえ守れればそれで良いと思ってるんです」

 新垣は国崎が自分の生活費を削ってまで、フィグネリアのバッテリー代やサビ防止の溶剤、新しいメイド服に使っていた様子を以前見ていた。だからこそ、この結論に行き着いたのだろう。

「今回のことだって、自分を訪ねてきた相手が偶然何者かに捕まったんだな、それであいつの中では完結してしまったはずなんです。しかしフィグネリアが言ったことで、その後の選択肢『助けなければいけない』が追加されたんですよ」

「……何よ、それ。それじゃあロボットと同じじゃない」

「そりゃ、そうでしょうよ。国崎の姉も片思いの相手も、全員あいつの目の前で殺されてるんです。どこか頭がおかしくなってなきゃそれこそおかしいですよ」

 俺だって同じです、と新垣は自虐するように笑った。

「……あなたも両親と妹さんを亡くしているのよね」

「はい、運が良いのか悪いのか、目の前で死なれたのは妹だけですけど」

 そう言って胸元にあるペンダントを手にとった。それには笑顔の男女4人の姿が写っている物がはめ込まれていた。恐らく新垣の家族写真だろう。

「……とりあえず、戦っている国崎の近くにいることは自殺行為だと言っておきますよ。あいつはロボットの倒れる方向に100万人の人質がいても、フィグネリアの一言がなければ何も考えずに倒しにかかる狂人ですから」

 そう言って、新垣はシールドを下ろすとバイクを発進させ、警視庁を退社していった。その姿が見えなくなるまで、能見は厳しい顔で新垣が去っていった方を見つめ続けていた。



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