第10話:ブラックファンの存在
7月22日午後4時20分、電車に乗り込んで田端へと向かおうとした時雨藍伊だったが、西日暮里駅の近辺でトラブルがあって電車が止まっているという趣旨のアナウンスを聞いて少し焦っていた。
『田端駅近くで発生した信号機トラブルの為、電車の発車が遅れております――』
既に乗車している客がクレームを言う為に駅員へ問い詰めるとばかり思われるような時間帯だが、そう言った状況は見られない。
そう言った光景を激写し、ネット上で晒す行為が横行している事もあって、下手に動けないのだろうか。
「まさか、途中で電車が止まるとは。あの時は電車も止まらなかったのに――」
時雨の言うあの時とは、2体のアルビオンが秋葉原駅で激突していた時だ。
今回のトラブルは、それを踏まえるとアルビオンパンツアーとは無縁のトラブルらしい。
秋葉原近辺、草加近辺、足立区全体と言った個所はARゲームのロケテストが何度が行われており、その度に反ARゲーム勢力が行動を起こすと言うのが恒例行事になっている。
【電車が止まっているようだ。信号機トラブルらしい】
【この信号トラブルもアルビオンパンツアーの仕業か?】
【そうかもしれないな。最近起こる電車の遅延、高速道路のトラブルもアルビオンパンツアーの仕業に違いない】
【あるいは超有名アイドルデモの仕業かもしれない。ネット上でデモを行うという趣旨の書き込みを発見したからな】
【どちらにしても、このままでは時間に間に合わない――】
しかし、ネットのつぶやきサイトではアルビオンパンツアーは直接関係ないのに、アルビオンパンツアーの仕業にされている。
風評被害と言うか、まるで何処かの作品であったようなフレーズが思い浮かぶ展開だ。
やはり、どの世界でも歴史を繰り返すと言うのだろうか? やはり、過去に反ARゲーム勢力がデモ活動を行ったのが全ての原因なのか?
「仕方がない。途中まではパンジャンドラムを使うか」
その後、田端にはギリギリで到着した時雨は、超有名アイドル候補生の乗ったアルビオンパンツアーと交戦するのだが、何とか無事に目的地へと到着した。
しかし、時雨は色々な部分から撤退を余儀なくされ、やむ得ず自宅へと帰る事にする。
午後4時25分、武蔵あずさとの連絡後、吉川ハヤトはパンジャンドラムに乗って太陽光発電を行っている会社へと到着した。
この場所は時雨が向かっていた場所と同系列だが、別の支部である。
パンジャンドラムを降りた夕立はチェーンソーブレード型のARウェポンを持参し、更には連装魚雷、連装砲型ハンドガンという重装備で会社内へと突入する。
そこで複数のサーバーと超有名アイドルファンを発見した。サーバーと言うのは、おそらく――。
「馬鹿な! アルビオンランカーがこの場所を嗅ぎつけるとは聞いていないぞ」
「このままでは計画にも支障が出る。別の場所へ移動する!」
色々な覆面をしたアイドルファンが逃走、一部のアイドル候補生やアイドルファンは夕立に攻撃を仕掛けてくる。
しかし、その攻撃は夕立をすり抜ける。しかも、いくら攻撃をしても夕立への直接ダメージは与えられない。
一体、どのようなトリックを使っているのか? その回答は、意外とあっけない物である。
「不正アイテムで強化したのが仇になったな! こっちは既に不正アイテムや違法パーツの対策は終わっている」
夕立の装備しているARウェポンは、全てが違法パーツやチートの対策を施してあるバージョンアップ版、向こうが使用している武装のチートは全て無効化されるという代物。
それに付け加えれば、チートパーツを使用したARウェポンが誤動作するというシステムも組み込んであり、夕立と交戦した時に自動発動、アイドル候補生などが使用していたARウェポンは使えなくなっていたのである。
ARウェポンを無効化されたアイドル候補生は外へと逃げる。
アイドルファンは別のARウェポンやチートを使用していない物で対抗するが、それでも夕立との戦闘力の差を埋める事は不可能だった。
夕立がARガジェットの力だけでランカーになった訳ではなく、これも実力のうちだったという証明だろう。
「チートを使って負け知らず――それが自分の一番嫌いなバトルスタイルその物!」
夕立の脚部連装魚雷が展開、連装砲型ハンドガンは左腕に固定、背中には大型酸素魚雷型ARミサイルも搭載され、いかにも一斉発射をするような体制をとる。
「そんな方法でゲームをして、つまらなくなったら切り捨てる。それは神聖なゲームに対して泥をぶつけるような行為――」
更には両腰のレールガン、右腕にはスナイパーライフルまで展開し始め、夕立の怒りが有頂天であると誰から見ても明らかだった。
「お前達の様なブラックファンは、一度の敗北だけでは怒りが収まらない。トラウマを植え付ける程の敗北を味あわせてやる!」
連装魚雷、連装砲型ハンドガン、大型酸素魚雷、レールガン、スナイパーライフルによる一斉射撃、その威力はオーバーキルであると断言できる。
その場にいた20人のアイドル候補生及びアイドルファンは、絶対に踏んではいけない地雷を夕立に踏ませてしまったのだ。
この展開はアイドル側の自業自得と言える一方で、夕立の方も若干やり過ぎたと感じている。
その証拠に、オーバーキルからの追いうちは一切仕掛けることなく、その場を去っている。
「アガートラーム……そこまで使う必要はなかったが、チートに手を染めてまでランキングにこだわるような器の小さい連中に――ゲームを語る資格はない」
夕立はチートプレイヤーの大量発生がRMT等にも影響し、ARゲームの楽しさを奪ったと考え、それを正す為に戦ってきたつもりだ。
午後4時30分、夕立の方も別の場所へ向かおうとしたのだが、既に制圧済みに近い施設にアキバガーディアンが入っている事に疑問を持った。
「アキバガーディアンは秋葉原の自衛組織のはず。それが、何故に田端まで出張をするのか――」
夕立も色々と考えたが、警察の方が動くと面倒な事になりそうな為、近くのゲームセンターへ向かう事にした。
「あとは武蔵にでも連絡を――」
ゲーセンに向かう事と作戦の完了を武蔵へ報告しようとした夕立だったが、電話の方が圏外表示で連絡が取れなかった。
AR通信の方は動いているので、ジャミングと言う訳ではない。仮にジャミングがあったとしたら、電車が動かない等では済まされないのだが。
午後4時32分、秋葉原駅から若干離れた所にある超有名アイドルの劇場。
龍鳳沙耶が潜入を仕様とした矢先、超有名アイドル劇場の支配人が姿を見せる。
彼は超有名アイドルの芸能事務所社長でもあるのだが、彼の様子がおかしい事に龍鳳は気付く。
そして、次の瞬間には巨大ロボットを呼び出したのだ。この機体はアルビオンパンツアーとシステムが似ているが、没機体の類ではない。
全長も2倍に近い約10メートル、機体性能が劣っていたとしても彼女には対抗出来るような策は存在しなかった。
「こういう所は別のゲームシステムを採用しているのね。ARウェポンであれば、別の装備に切り替えれば全回復まで待てるけど、これはさすがに無理か」
機体ダメージの回復、それは使用している機体によっても違うが、アナザーオブアルビオンは損傷度合いによって回復のスピードは異なる。
今回の場合は深刻なダメージと言う事もあって、すぐには回復しない。
移動距離的な意味もあるのだが、機体をフル稼働にしていたのが仇になったようだ。
回復手段もなく、このままではダメージが残った状態で戦う事になると思われた矢先、アルビオンパンツアーの画面に突如として割り込み通信が入った。
通信と言うよりはつぶやきサイトと同じようなもので、メッセージのみの表示になっている。
向こうもシステムを持っていれば会話も可能だが、会話システムも損傷している為にメッセージのみがウインドウに流れる。
【自分達が超有名アイドルばかりに依存していた事が、今回の事件の原因だとネットで思い知らされました】
【超有名アイドルのファンをやっていましたが、週刊誌の不祥事やアルビオン事件等をチェックして、本当にファンを続けられるか不安でした】
【ネットのまとめサイトを鵜呑みにした結果、本当の情報源を疑おうともせずに情報を信用した事が、全て間違っていたのかもしれません】
【一部のアフィリエイト長者を生み出すだけのまとめサイト――それこそが、アカシックレコードと世界線にとっても最大の敵だったのですね】
【チートを横流しし、更には超有名アイドル以外の応援をする者には制裁を加える――それが正しいアイドルファンの行動とも思えません。超有名アイドルファンは、賢者の石に手を染めた邪悪な存在――】
流れてくるメッセージは、超有名アイドルファンを辞めたという物、アルビオン事件の真相を知ってコンテンツ業界を変えるべきだと知ったという物、他にも色々と流れてくる。
「このメッセージは一体――?」
龍鳳もメッセージの内容に驚くが、それ以上にこれだけの人間に影響を与えていた事に改めて驚いていた。
一連のメッセージが流れた後、ボイスメッセージが流れた。
『このメッセージを受け取っているという事は、君がアルビオンパンツアーの真実に気付いたという事だ』
声の主は男性だが、若干メカっぽいノイズが入っている。
どうやら、アナザーオブアルビオンに残されていたメッセージらしい。
『最初にこの機体を手に入れた者は、私欲の為にアルビオンを使用して自滅する事になった』
『2番目にこの機体を手に入れた者は、アカシックレコードを引き合いにして超有名アイドルの根絶を考えた』
『そして、君が3番目に機体を手に入れた者だ――』
「3番目って……まさか?」
メッセージは自動再生の為、龍鳳の受け答えに応じる事はない。
しかし、何となくだが2人目が誰なのかは分かった。おそらくは、アルビオン事件を起こした張本人である。
『この機体、アナザーオブアルビオンはアカシックレコードへアクセスする事で能力を極限まで上昇する事が出来る』
『別の世界では《フルアクセス》とも言われているが、この世界では仮に《オーバーロード》とでも名付けようか』
『オーバーロードの力を使えば、超有名アイドルも恐れる事はない力を手にできる。しかし、この力は最強でも無敵でも何でもない』
「まさか、リアルチートの力が隠されていたというの? このアルビオンに」
フルアクセス、アカシックレコードにアクセスする事でアナザーオブアルビオンは極限まで強くなるという。
しかし、それは最強の力ではないとメッセージは否定していた。
これに対し、龍鳳は疑問を抱くと同時に、この力がリアルチートなのではないか――と考える。
『繰り返す。この力は最強でも無敵でも、チートでもない。フルアクセスの力は意志の力、その意志が強ければ強大な敵にも打ち勝つ事が出来る』
『そして、アカシックレコードの力は使い方を誤れば自分を破滅に導く事になる。他の世界の超有名アイドルが同じ末路をたどったように――』
メッセージは終了した。それと同時にアナザーオブアルビオンが輝きだし、瞬時にしてダメージが回復したと同時に大型のブレードと思われるような戦闘機が分離、それぞれのパーツが右腕に装着される。
その腕は白銀に輝きだし、更にはその光で周囲に発生していた何かを瞬時にして無効化、その光景を見た龍鳳が呆気に取られる位には超展開の連続だった。
《シークレットウェポンを解放、アガートラームが装備されました》
「アガートラーム、あらゆるチートを無力化するアカシックレコード内でも最強格の――武器!?」
龍鳳もアガートラームの名前だけは知っていた。
他の世界でもあらゆるチートを無力化する武器、あくまでもチートを無効化するだけであって、武器としての能力は上位クラスの武器と変色はない。
かつて、別の世界ではチートや外部ツールを使ったプレイヤーに対して一撃で再起不能にしたという逸話もある。それ程に、アガートラームは厳重封印されていたと言ってもいい。
しかし、この力がもたらした物は想像を絶する物なのは確かである。
実際、目の前にいた巨大ロボットの動きが鈍くなっているのだ。これは、使用していたチートが無効化された為――。
「まさか、アガートラームを持ち込んでくるとは――」
巨大ロボットの装甲が消滅し、そこから姿を見せたのは同じサイズくらいのアルビオンパンツアーだった。
どうやら、あの巨大ロボットはCGによるフェイクにAR技術を組み合わせて生み出された物らしい。
そして、劇場支配人の乗ったアルビオンパンツアーが突撃してくるのだが、そのスピードは龍鳳に取ってはスローに見えると言う物だった。
「コンテンツ流通を阻害する存在、私はそれを許さない!」
アガートラームのフルパワーによるパンチで機体の装甲は瞬時に消滅、フレームだけがむき出しとなり、その後にフレームの方も音を立てずに崩れ去る。
これによって、劇場へ侵入する事は容易となった。崩れたフレームは砂の様に消滅するわけではなく、CGの消滅演出後に装甲を表示させていたプレートが機能を停止、その後に電源が落ちた。
支配人の方は気絶しているようだが、命に別条はない。どうやら、気絶をしているだけのようだ。
午後4時36分、少し時間を無駄にしてしまったが龍鳳はアルビオンパンツアーを降りて劇場内へと突入する。
ステージ中央には、龍鳳が驚くべき人物が待ち構えていた。それは、ARウェポンと銀の鎧で武装したジャンヌ・ダルクである。
「龍鳳沙耶、あなたがアナザーオブアルビオンに乗っていたとは――」
ジャンヌは剣を鞘から抜き、龍鳳の顔に突きつける。剣の刃はARで作られた映像の為、顔に傷が付く事はない。
「あなたが全ての黒幕なのですか?」
龍鳳も別のARゲームを試しプレイした際のシールドブレードを装備し、シャープなデザインをしたパワードスーツを装着。
そして、龍鳳はジャンヌに真相を尋ねようとする。
「黒幕は既にいない。あなたがサタン・ブレイド、異星人、さっきの芸能事務所社長を倒した段階で……」
「嘘は言わないでください! 他にも黒幕がいるのは分かっているのです。アカシックレコードから読み取れた情報、それはブラック……」
ジャンヌは黒幕がいないと断言するのだが、龍鳳は嘘だと言う。
そして、事の真相をジャンヌに話そうとした矢先、何処かからビームライフルが撃たれた。
【成功したか?】
【対象の撃破は失敗した。こちらも気付かれたらしい】
【気付かれた? 一体、どういう事だ?】
【田端のサーバーが制圧された。しかも、アキバガーディアンが――】
途中でつぶやき用のソフトが圏外となって連絡が取れなくなる。
無言を貫いたスナイパーも狙撃失敗で舌打ちをしてしまい、そこからジャンヌに気付かれる事になった。
ステルス迷彩を使用して接近までしたのに、舌打ち1回だけで台無しになった瞬間である。
「そこまで接近していたのか!」
ジャンヌが別の剣でスナイパーのステルス迷彩に傷を付ける。
そして、姿を見せたのは超有名アイドルファンの男性だった。どうやら、彼らの正体が読めてきた――とジャンヌは思う。
「この人物は、ブラックファンの一人?」
龍鳳の口にしたブラックファンと言う単語にジャンヌは少し反応したが、すぐに冷静になって反応をしていないふりをする。
【こちらも気づかれた。これ以上は作戦にも支障が出る。上野で落ち合おう】
スナイパーが即座にコメントを打ち、その場を立ち去るのだが、そのスピードはアスリートを上回る物だった。
どう考えても、素人がすぐ出せる速さではない。その後、2人はブラックファンを追いかけるのだが、劇場を出た辺りで見失ってしまった。
午後4時40分、劇場の外では警察が何かの検問を行っており、下手に外へ出る事は危険と2人は考えた。
しかし、外へ出ない限りは逃げたブラックファンを追う事も不可能。そこで、ジャンヌは龍鳳に劇場の裏口へと案内する。
「裏口も警察がいるのでは――」
龍鳳の質問に答えることなく、ジャンヌは自分の右手をドアにではなく隣の壁にタッチする。
その次の瞬間、別のゲートと思われる物が開き、そこへ入るようにジャンヌは指示した。
「このゲートは別のARゲームで使用されているルート、さすがに警察もARゲームには手出しできないようになっている」
ジャンヌの話を聞いて納得する龍鳳だが、それでも理解できない部分が多い。
そもそも、秋葉原に無数のARゲームが稼働している話は聞くのだが、どのようにして運営しているのか――。
「その答えを握っているのが、アカシックレコードと言う事だ」
2人は歩きながら、稀に話をしつつゲートを通る。ゲートには他のARゲームプレイヤーが通行する事もあるが、自転車が5台位通る事の出来る幅がある。
状況によって、片道通行になる可能性もあるのだが。
「これは、まさか――」
2人が外を出ると秋葉原駅の西口辺りに出た。しかし、驚くのは場所の事ではなく、もっと別の存在だった。
午後4時45分、上野と秋葉原の中間で未確認のアルビオンパンツアーが出現したという報告がハンターから入り、そこへアルビオンランカーが急いで向かう。
「やっぱり、動き出したようね。こちらの予想通りの行動と言うべきなのか、あるいはスケジュールを早めたのか?」
武蔵がビルの屋上で確認していたのは、未確認のアルビオンパンツアーのカラーリングだった。
これはジャンヌ・ダルクが使用していた機体に酷似しているが、これは本来の超有名アイドルファンが使用しているカラーリングであり、ジャンヌ用の微妙な違いというクラスの物ではない。
【遂に動き出してしまった。アルビオン事件を生み出すきっかけ、超有名アイドルファンにおける投資家割合を10割近くまで引き上げ、日本のコンテンツ流通を阻害する原因、それだけではない―】
【奴が超有名アイドルを私利私欲のままに動かしたと言っても過言ではない】
【もしかすると、ブラックファンがいなければ超有名アイドルも、ここまでにはならなかったという事か?】
【それはケースバイケースにすぎない。アイドル1組だけでは育てようもないが、ライバルの存在が良くも悪くもアイドルを変化させる】
【しかし、ブラックファンは違う。自分達の思うような行動を取ってくれなければ、ありとあらゆる手段を使う】
【某漫画の脅迫事件、アイドルの握手会襲撃、その他にも該当するような事件は多数ある。それらは○○廚の様な存在が悪いという風潮にされ、現在に至っているという】
【真相としては、自分達の思うままにならない物は切り捨てると言うブラックファンの仕業だと言う】
さまざまなつぶやきが流れていく中、全ての元凶はブラックファンによる物だと言う事が判明する。
つまり、彼らはアルビオンパンツアーが超有名アイドル人気に影響が出ると言う事で、さまざまな妨害工作を行ってきたのだ。
「こちらがアカシックレコードを利用して生み出したアルビオンパンツアー、それを悪用しようという存在――ブラックファン、遂に見つけた!」
そして、あずさは指をパチンと鳴らすと、背後に姿を見せたのは異常な程の重装甲、戦艦クラスを思わせるような重火器、そのイメージは戦艦長門を連想させた。
「テストタイプの陸奥は使えないが、このトライアルタイプの長門ならば――」
武蔵はトライアルタイプのアルビオンである長門に乗り込み、高層ビルからそのまま飛び降りる。
そして、何も強い衝撃や振動が発生する事無く着地に成功する。
普通の人間であれば、ただでは済まないがアルビオンパンツアーだからできる技なのだろう。
「この長門、超有名アイドルが扱うチート機体に遅れは取らない!」
ジャンヌと龍鳳が見た光景、それは武蔵あずさのワンオフ機体である長門が自分達の目の前に姿を見せた事。
遂に、最終決戦が始まろうとしている。