中二病預言者の末路
「予告しておこう。午後4時36分、この街に雨が降り出す」
高々と宣言したが、誰も気にするものはいなかった。それはそうだろう。こんなの、狂人の戯言としか捉えられない。
しかし、俺には確信があった。俺は、神のお告げを賜ることができる。それを証明するために、毎日のように予言を繰り返す。
もちろん、それが的中した試しはない。今日もまた、雨は降らなかった。
その翌日。
「予告しておこう。午後5時22分、この街に雨が降り出す」
聞く耳を持たれない。そもそも、相手にされない。いや、宣託は間違っていないはずだ。
そして、午後5時22分。黒ずんでいた空から、数滴の雫がこぼれ落ちる。それはやがて雨粒となりて、地上へと降り注いだ。
「どうだ。これが、俺の実力だ」
俺は確信した。俺は神の子だ。この世界の命運を司る力を持っている。
今までは、雨しか予告できなかったが、力を増した俺であれば、どんなことでも予告できるであろう。さあ、ひれ伏せ人類共。俺が究極の予言を披露してやろう。
「予告しておこう。午後3時ちょうどに、この世界は滅びる」
その次の日に、俺が放った予言。かの有名なノストラダムスも括目するだろう。さあ、じっくりと終焉の時を見届けようではないか。
そして、運命の午後3時。俺の前に不審な動きをする男が現れた。
「ああ~、なにもかも面倒だぁ~」
おお、可愛そうな人の子よ。俺が救済してやろう。
しかし、その男の手にはナイフが握られていた。
「もう、お仕舞だ。だから、俺と道連れになれ」
そんな。俺がこんなところで終わるだと。
「誰か、誰か助けてくれ」
俺は、全力で助けを求めた。しかし、まわりの反応は冷ややかだった。
「また、あいつが戯言を言ってるよ」
俺を救済してくれる人など誰もいなかった。
午後3時。俺の世界は終わった。
もしかしたら気づいたかもしれませんが、あの童話をオマージュしています。