君の光が僕には眩しすぎて。
成績が優秀なのが、彼のとりえ。
大学二年生の背が小さい男性、遠藤隆です。
僕は優秀だ。
背は小さいし運動はできない。
でも成績は優秀だ。
友達は少ないし彼女もいない。
でも成績は優秀だ。
これといった趣味は無く将来何になるかも決めてない。
でも成績は優秀だ。
成績こそが全てさ。
でも、そんな僕にも好きな人はいる。
一目惚れしたあの日から君は僕の生きる糧。
君の光が僕には眩しすぎて。
割と良い大学に入った俺、遠藤隆は大学二年生だ。
成績はもちろんトップクラスで今のところ理解していない箇所もない。
完璧、僕には成績に関してはこの言葉がぴったりだろう。
周りからはETなどという意味不明な読み方をされる。
みんなイニシャルで呼び合ってるのかと思えばそうでもない。
…全く、変な連中だ。
「おはよう!」
後ろからみんなに丁寧にあいさつをしていく声が聞こえてくる。
ああ、きた。
僕の光、井上香織さん。
「エンドウくん、おはよう!」
「…おはよう、井上さん。」
やばい、声が小さくなった気がする。
一声交わしただけでこれだ。
人付き合いに慣れてなくたって、成績優秀なら大丈夫なはず。
…井上さん、君の笑顔はなんて眩しいんだ…
眩しすぎて、目に染みる…ああ、君への愛で僕は今すぐ溶けてしまいそうだ…。
…いけない、授業が始まるというのに。
それに、今日はちょうどいい、井上さんが前の席だ。
井上さんが、前の席…
にやける。
井上さんは誰かを待っているのか、横にカバンを置いて席をとっている。
しかも周りをキョロキョロと見て。
しかし見つけたらしく、ぱっと明るくなった。
女の友達だろうな、よくこんなことやってる人みるし。
「あ、ソウヤくん遅い!ほらここ!」
……ソウヤ、くん…?
全神経が逆立つ。
ソウヤくん?名前?
苗字ではなく、名前よび…!?
俺はその呼んだ方向を見る。
髪は黄土色、しかもワイシャツを着崩しただらしのない格好。
「頼んだ覚えはないし、名前で呼ばないでくれ。」
しかも不親切…!!!
な、なんであんな男が…!?
井上さんと…!?
しかもありがたい名前呼びを断る!?
「もう〜いいじゃん、ほら座って!」
軽くボディータッチをする井上さん。
しかしビクともしない。
俺があんな事をされた時にはどうなることか。
悔しい、悔しい。
井上さんをずっと見てきたのは俺なのに……!!!!
初めて授業に集中が出来なかった。
全部、アカラギソウヤのせいだ。
くそ、くやしい、くやしい。
「アカラギくん!」
思わず帰ろうとするアカラギをとめる。
アカラギは振り向いた。
あまりにも険悪そうな顔。
が一瞬にして真顔になった。
「何、かな?」
爽やかな声だ。
「ちょっと今日良いかな?」
「あ、今日はちょっと子どもの…」
「子ども!?」
この年で子ども!?
いや、確かに作る事はできるが大学生だぞ!?
養うことなんざ…
しかも井上さんという女もいるのに!?
「あ、いや、特に…あの…」
「あれ?ヒロキくん今日はアキトくんと遊ぶって言ってなかった?」
井上が口をだす。
名前を知って…
ま、まさか…アカラギと井上さんの子ども!?!?
「いかがわしい…」
「待て、すごい勘違いしてる気がするぞ。」
「だから今日は遊びに行っても良いって言ったじゃない〜」
遊び…!?
この年で別居!?
しかも別居なのに遊ぶだと!?
いや、別居でこんな仲良いはずはない!
ま、まさか…
井上さんと不倫をしていて、妻と子がいない間に遊ぶのか!?
なんといかがわしい!
「見損なった!」
「あのさ、話すから落ち着いてくれない?」
全て、話された。
「お前…」
「いい…奴だな…」
不覚にも涙がでそうだ。
まさか倒れていた所を保護して今の今まで育てて、しかも高校に行かせれたら行かせてやりたいだなんて…!!!
アカラギって根暗であまり誰とも話さなくてなんか俺と同じ匂いするけど俺よりバカでチャラい不良で女をたぶらかす人間だとおもってたのに!!!
なんだ、このギャップに井上さんはやられたのか!?
「じゃ、俺帰るわ」
「待て!俺はまだ認めてないぞ!?」
「何をだよ!」
なんか、さっきより口が悪いような。
アカラギってこんな感情だす人間なのか?
「だから井上さんと付き合っていいかを」
「付き合ってないんだけど。」
「あ?」
時が止まった気がした。
付き合って…ない…!?
井上さんの一方通行だって言うのか!?
井上さんを弄んでいるのか!?
くそ…アカラギ…ちょっと顔立ちが良いからって背が高いからって生意気な…!!
井上さんと似合うと俺が勝手に思ってしまったじゃないか!!!
…待てよ、もしかしてまだ俺にもチャンスはあるのでは…?
井上さんを振り返らせるチャンスがあるのでは!!
「井上さん!」
「はい?」
「僕と付き合ってください!」
「ごめんなさい!」
まさに流れ作業。
俺はその場で固まる。
こんなにも恋は叶わないのか!?
「私、アカラギくんが好きなんで。」
その場でアカラギの腕に手をそえる。
アカラギはその手をやすやすと振り払った。
くそ…羨ましい!!
「えっと…名前、なんだっけ。」
「遠藤だ!」
同じ科の人間の名前を知らないなんてありえない!
「遠藤くん、俺は遠藤くんの恋、応援するから。」
「…は?」
言ってる意味がわからない!
俺の恋敵はアカラギ、恋を応援してくれるのもアカラギだって!?
あ、言ってる意味がわかってる。
「ちょっとアカラギくん!私何度告白されたって断るよ!?」
井上さんのあからさまに嫌がっている姿を見るのが辛い。
「井上さんがもし、遠藤と付き合ったら俺が君の言うこと、聞ける事なら一つ何でも聞いてあげるって言ったら?」
「え!?」
井上さんはその場で悩みはじめた。
待てよ、これで付き合う事ができて俺は嬉しいのか!?
だって井上さんは俺の事を好きではないじゃないか!
「何でもって例えば、何ならいいの?」
「知らない、パフェでもおごる?」
アカラギは早く帰りたそうだ。
「パ、パフェ食べさせてくれるとかは…?」
「帰る」
「あ〜!!待ってよ!!」
なんだこの茶番。
ただ、ただラブラブにイチャイチャしてるのを見せられているだけ!!
なんて不快!!
なんて辛いんだ!!!!
「アカラギ、いい、俺が、俺が井上さんのハートをこの手でつかんでみせる!」
「えぇ〜…」
嫌そうな顔をしているのは見てない。
そうだ、俺は成績優秀。
そんな俺ならなんだってできる。
アカラギは俺を真っ直ぐに見つめた。
思っていたよりも鋭い目。
見ていたら、闇に飲み込まれそうだ。
こんな、こんな人間が本当に子供を助けるのか?
「頑張れ。」
俺の恐怖とは反対に、明るい言葉。
わからない、この人間がわからない。
…でも、避けてはいけない気はする。
「じゃ、俺は帰るから。」
「じゃあね、遠藤くん。」
「う、うん、じゃあ。」
そう言って俺に微笑みかけた。
ああ、笑顔が眩しい!!!
きっと君の笑顔を僕のものにしてみせる。
恋してる僕だけは成績優秀な僕よりも輝いてみえるんだ。
成績優秀でもできない事なんてたくさんある。
アカラギとエンドウは何処となく似てるトコがあるのでお互い似ていると言う事に気づいてくれたらなと思います。
イノウエにはそんな二人を微笑ましく見てあげてほしいです。