6章~佐伯のモラル~
1時間後、佐伯は目を覚ました。
「酷い目にあった」
自業自得ですけど。
「うるさい、バーゲンなど二度と行かん!」
「で、モラルポイントは?」
「判定者不在のためノーゲーム」
「なんだそれ、卑怯じゃね」
「はい、卑怯です」
「それでも教師ですか!」
夢島も噛みつく
「はい、教師です。お国が僕に教員免許をくれました」
「う、うざい、まったく教師の風上にも置けねー」
「なら風下に置くんだな。まぁそんなわけで今日の道徳の授業は終わりだ、学校へ引き返すぞ」
毎回思うがこの瞬間まで授業だということを忘れてしまう。もう呆れるのにも飽きてくるな。
夢島はすでに女の子の顔をしていなかった(猟奇的な目という意味で)
一同は学校に戻り、帰りのホームルームに入った。と言っても……
「では本日のモラルポイントの変動についてなんだが、まず木田!」
「そんな気合い入れられても、何もないはずなんだが」
「廊下を走ったこと、通りすがりに人にパンチ、電柱にパンチして破壊、そしていろいろ爆破、以上の行いで」
「ちょっと待て!身に覚えのないことだらけだぞ!それになんだよ!最後の投げやりないろいろ爆破!は……」
「まったく、行き返りの描写はされてないからって、やりたい放題やりやがって!」
「その言い方はずるい、ずるすぎる。否定する間すら与えられないし。まったく、先生自身のモラルはどこいったんだよ」
「だから言ってるじゃねーか、俺は反面教師だって」
「何勝手に便利な言葉にしてんだよ!」
「もー、さっきから二人でばっか遊ばないでよ!」
「遊んでねーよ、俺は怒ってるんだよ!」
「で、あたしのモラルポイントは?」
「そ、そうだな……」
佐伯の奴、夢島の言葉に動揺しているのか?……そうか、下手なこと言うと刺されるかもしれないしな。
どうする俺、木田には引きするといった手前、甘い点にしてやりたいが、教師としてはこんな危険因子を一般生徒の中に放り込むわけにはいかない。が、だからと言って下手にマイナス値を高くしてしまっては激高した彼女はこちらに刃物を飛ばしてくるかもしれん。だが性格は置いといても顔はすごくかわいい、癒しとして俺の命と引き換えにクラスにはぜひ置いておきたい。う~む悩むな。
「夢島お前のモラルポイントはマイナス1000ポイントだ。」
「おい、刃物振り回すやつがどうしてたったマイナス1000ポイントなんだよ!」
「……じゃあ聞くがお前なら何ポイントつけるんだ?」
相変わらず返しがエグイな。
「マイナス……3000」
「大して変わらんではないか」
ちらちらナイフをちらつかすなよ!言いたいことが言えない!何と言う言論弾圧だ。
「ちょっと、あたしのことでもめないでよ」
「その言い方やめろよ!なんかヒロインを取り合ってもめている男二人みたいじゃねーか!」
「あたしはそれでも……ぽっ」
「絡みにくい……」
「まぁそんなわけで今日のホームルームはおわり、じゃあな!」
「おい、せめて俺のことは前言撤回しろ!」
「木田よ、男に二言は、ないんだぜ!」
歯をキラッとさせんじゃないよ。
「もっともらしい言葉で正当化させてんじゃねー!」
なんとなくわかってはいたが、佐伯は強敵だと再認識した1日だった。
本日の成果、教師の監督不足により無効試合となったため
木田孝夫モラルポイント変動なし。
夢島由紀ポイント発覚のため、-1000ポイント。