5章~2人で挑む校外学習その2~
「スタート!!! 只今よりタイムセールを開始いたします。最大何と95パーセントオフ!! さぁ持ってけドロボー! あ、でもちゃんとお金は払ってね♪」
店員の誰も聞いてないであろうチャーミングなボケが飛ぶ中、一斉におばさんがワゴンに飛びつく。それと同時に俺は注意を引くため、ケータイに小型の拡声器をつなぎ、自分の目覚まし音である爆竹音を音量MAXで鳴らした。不良になりきるためにドスのきいた声を響かせるために持っていた拡声器がこんなとこで役に立つとはな。まったくご都合主義万歳だぜ。
おばさんは突然鳴り響いた爆竹音に驚き、中には悲鳴をあげるものもいて、バーゲンセール会場内はパニックになっていた。
「今の内だ夢島!」
「任せといて!」
夢島は手際よく矢じりを用意し、忍者のクナイのように扱い、次々と素早くセットしていく。そしてあっという間にカラフルなひもで道を作ったかと思うとすでに服を色、サイズ別に並べ始めた。そんな中店員の声が響く
「みなさん、落ち着いてください。今の音について、弊社駐在の警備員が周囲を確認したところ、異常はないとのことです。みなさん、安心して買い物を続けてください。」
お客さんたちはみな周囲の人とひそひそと一言二言言葉を交わすとすぐに臨戦態勢に戻った。
ワゴンを見ると、色別、サイズ別に並んだ服、そしてひもでできた道。だがバーゲンの客はそんなもの全く関係なくバーゲンの猛者たちはワゴンの周りを囲い一思いに暴れ始める。
「ちっ、こりゃ無理だ。作戦変更だ夢島! とにかく流血沙汰を防ぐ」
「あたしはこうはなりたくない……。わかったわ。でもどうやって」
「今の客は目の前にしか興味がない、足元はおろそかになっているはず。そこでだ!下にひいたひもを足に絡ませるんだ。だが全員に絡ませてもしょうがない。流血沙汰を防ぐために、取り合いをしている人の足を絡ませるんだ。あってなったときどちらかは手を放すはず」
「そんなことがばれずにできるのかな~?」
「いや、無理」
「えっ、無理なの??」
「なのでさらに作戦変更! あぶないしね。……っとあれを見ろよ。」
「あれって?」
俺はワゴンの方を指さす。佐伯はこの人の渦の中、すでに戦意を喪失していた。
「このままさらにもみくちゃにして意識を失わせるか! さて今度はこっちが煽る番だ。にしてもあのマッチョの戦意を喪失させるとは、バーゲン恐るべしだな。」
「で、実際に何をするの?」
「とにかくこのバーゲンがとても特別であることにする。そしてそれっぽいことを言う」
「具体的には?」
「お前本当に他力本願なのな」
「そういうわけじゃないのよ。人には向き不向きというものがあるの。向いている人が向いていることをやった方が効率がいいのよ。役割分担ってやつね」
「で、お前は何担当なのさ」
「刃物担当」
「んな出番はねぇ」
「あったじゃない、今さっき」
「やじりのことか」
「じゃあ今日からお前のあだ名は縄文人な」
「いやよ」
「縄文人な」
「あんた彼女いないでしょ」
「なぁ縄文人」
「何よ!あたしの話聞いてるの!」
「返事したってことは認めたんだな」
「もう何でもいいわよ、それよりさっさとやりなさいよ」
「いや、その必要はないみたいだ。なんか勝手に目を回して倒れてるから」
「じゃあ5000Pずつ山分けね」
「そもそもお前いや、縄文人は今何モラルポイントなんだ?」
「別に言い直さなくてもいいわよ、ってかそんなのあたしが知るわけないでしょ。それとそのあだ名かわいくない。どうせならもっとかわいいのにしてよ」
「ジョー」
「え?」
「ジョー」
「何それ?」
「略した」
こうしてあたしのあだ名はジョーになってしまった。忘れないでください、私は女の子です。