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モラル  作者: みにも
3/8

2章~道徳(モラル)とは~

「木田、あそこにいるおばあちゃんあんな重そうな荷物背負って陸橋の階段上ろうとしてるぞ、…あとはわかるよな。」

 まぁ悪いことするわけじゃねーし。それに早くこのクラス抜け出したいしな。

「おばあちゃん、荷物重そうですね、持ちますよ。」

「あん!?わしを年寄り扱いか?そうやってお前はいいことしたーとか思うのか!冗談じゃないわい、こんな荷物本気を出せばどうということはない。」

 そういうとおばあちゃんは全身の筋肉を奮わせ、階段を二段飛ばしで上がっていった。

「せっかく人が気を使ってやったってのに、なんだってんだよ、あのばあさんは。」

「はい、マイナス200モラルポイントー!」

 佐伯が横から口を挟む。

こいつ!!!

「ずいぶん楽しそうですね。教師のくせに。」

 まずはこいつに道徳を学ばせろってんだよ。

「教師だから、だ。問題児が不幸になる様を見るのは不良生徒に対しノミの心臓をもつ教師にとっちゃ最高のご馳走なのさ。」

「最近のノミは頑丈なんですね。」

 と俺はいい放ち、階段をずかずかと上っていく。すると先ほどのばあさんが倒れていた。

「おい、ばあさん、大丈夫か?おい!」

 俺はあわてて声を張り上げた。

「こ、腰が…」

 ばあさんはさっきとはうってかわり、か細い声で言った。

「腰がどうしたんだ???」

「腰が…何者かに外されたんじゃ。」

「誰も通ってねーって。はぁ…ったく年を考えろって。強がって無理するとろくなことねーぞ。」半分自分に言い聞かせていた。いいから乗れって。

「こわっぱが!嘘ではないわい。最近この近辺には通りすがりに人の腰を外していく不届きものがおるんじゃ!!!まったく年寄りをばかにしおってからに!!!」

 なんだよその通り魔…

「ばかにしてるわけじゃねーっての。身の丈にあったことをしろって言ってるんだよ!」

 まったく年寄りってのは頭がかてーんだから。

俺はばあさんを担ぐと家の場所を聞き出し、家まで届けた。

「おい鬼畜教師、ちったぁサポートしろよ。」

「よし、よくやった。500モラルポイントを贈呈してやるぞ。」

「そういうサポートじゃねーよ!…はぁ…まあいいけど。」

「家の母がご迷惑をお掛けしまして。見ず知らずの方に助けていただき、ありがとうございました。」

「かなり抵抗はされましたがね…あはは…あれだけ元気があればすぐに良くなりますよ。」

「ところで平日のこの時間に、課外授業かなにかだったのですか?」

 平日の午後1:00に学生が歩いてたらまぁそう思うだろうな。

「まぁそんなところです。私の教育方針は課外活動をメインとしてまして、机の上の勉強だけでなく、地域とのふれあいを大切にしていますから。」

 よくまぁ次から次へと言葉がでてくるなぁ、こいつは。騙されないでくださーい、こいつは俺をおもちゃにして外で遊んでいるだけですよー!

「まぁ素晴らしい教育方針ですね。あなたみたいな先生が増えてくれたら、この国ももっとよくなりますのにねぇ。」

 そんな国見たかねーよ。

「佐伯と申します。この子は私のクラスの木田といいます。」

「どうもです。」

「ご丁寧に。私、夢島(ゆめしま)と申します。突然なのですが、折り入って佐伯先生にご相談がございまして。」

「なんでしょう。私が協力出来ることであればなんでも。」

「実は私の娘、由紀(ゆき)なんですが、今年高校に上がったのですが、まだ一度も学校に通っていなくてですね、いわゆる引きこもりなんですよ。ちょっと癖のある子でね。試しにいまちょっと呼んできますね。」

そういうと夢島さんは奥の階段で二階に上ったていった。

「おい、木田、良かったな初のクラスメイトだぞ。しかも女子だ!当然だが女子だから贔屓してやるぞ。だからなんとしても持ち帰ってやる。」

 なんか…いろいろ最低だ。

・・・すると2階から母親のみ戻ってきた。…一部血まみれの状態で。

「どうなさったんですか!」

 ありえない状況に思わず叫んでしまう。

「いえ、大したことではありませんから。いつものことですし。あはは。」 すると母親は手慣れた手つきで包帯を巻いていく。これがかく言う複雑な家庭事情ってやつか。

「由紀はちょっと鋭利なものが好きで。家に入ろうとするといつもこのようになっちゃうんですよ。」

 ちょっとどころではない。それと、好きですむ話ではない。

「私に任せてください。」

 佐伯が手をあげた。

「先生!!!」

「私がお子さんをすぐにここに連れてきましょう。」

 すると佐伯は階段を上っていく。

「あ、戻ってきた。」

 佐伯は一人で戻ってきた。案の定血まみれで。

「ほ、ほんとにお子さんは鋭利なものが好きなようで…。まぁこう言うときはあれですね、同世代の方が何かと話しやすいとか言いますし。じゃあ、あとは木田、頼むわ。」

 この教師、さりげなく巻き込みやがった。

「私からもお願い致します。」

 う、断りにくい…。

「わ、わかりました。やれるだけやってみましょう。」

 二階にあがったやつが全員血まみれで帰ってくるってやばいだろ。惨劇だよ。と思いながら俺は階段を上る。

・・・階段を上りきると2つの部屋があった。ひとつはドアがひらいており、夫婦の部屋であろう寝室のようだった。もうひとつの部屋のドアはしまり、ドアには【由紀の部屋(はあと)勝手に入ったら斬るぞ♪】と可愛らしい看板がつけてあった。基本的に関わってはいけない類いの子に該当されるよな、この子。がしかし、この状況、残念ながら選択肢は前に進むの一択しかないという。昨今ヤンデレな子が流行っていると聞くが、何故だろう、今まで出会ったことはなかった。もしかしてこれが…そうなのか。俺は恐る恐るドアに向かって声をかけてみた。

「由紀…さん…でしょうか?俺はあなたと同じ学校に通っている木田というものです。あの、よかったらドアを開けてもらえないでしょうか?」

 すると意外にも普通に返答が来た。

「別に鍵とかかかってないから、開けて入っていいわよ。」

 あ、別に普通だ。あれ?これはもしや

大人はあたしのこと何もわかってないんだからー!!!的な大人に反抗する少女な感じで同世代なら心を開いてくれるとかそんな感じなのか?いずれにしても、そう言われた以上こちらも入らないとな。

「では、お言葉に甘えて」

 俺は恐る恐るドア(ちなみに引き戸)をあけたその瞬間、部屋からステーキ用ナイフが飛んでくる。


「ひぃ!」


危ねぇ。思わず俺はドアを閉めてしまった。

「どうしたの?入るの?入らないの?」

 いやいや、ここまで普通にきたんだから普通に入れろよ。とか思いながら。

「入りますよ。」

 と負けずに返す。鋭利なものが好きってこういうことかよ。

「はーい、どーぞー。」

 俺はもう一度意を決して今度は思いっきりドアをあけた。

すると無数のナイフが飛んできた。先ほどの飛んできたナイフの角度からして飛んでくるのは地面から50センチより上のみと判断した俺は思い切りしゃがみ、ほふく前進で進んだ。そして部屋に入った俺は、上から降ってきたフォークに刺さり蜂の巣状態となった。仰向けということもあり、なんとか意識を保っている俺は、なんとか悪の化身由紀のもとへたどり着いた。

「こ、こんにちは…」

 とだけ話しかけてみる。

「木田くん?だったっけ、あたしに何か用でも?」

 ベッドの上にすわった彼女はフォークまみれの俺を前にして何事もないようにそう答えた。あまりにたんたんと答えるため、俺も実は何もなかったんじゃないかと思い、立ち上がると、無数のフォークが体から落ち、現実を再認識した俺は

「はぁ…」

 と一度ため息をつき、

「あの~由紀さん、おかあさんが学校に行かないの?っていってるのですが…?」

 と告げた。

すると

「学校ねぇ~。行ってもいいんだけど、鋭利なものとか持ってっちゃいけないんでしょ?それに投げてもダメなんでしょ?」

 もしかしてこの女は、外に鋭利なものが持っていけないから学校に行けない。なんてふざけた理由で不登校、もとい引きこもりをしているのかよ。

「我がクラスならそれも可能かもしれないぞ!夢島由紀!!」

 声につられて後ろを振り替えると血まみれの佐伯が立っていた。

「あ、さっきの人。」

「なんたって我がクラスは鋭利な角材がクラス内を飛び交うからな。」

 あんたが投げたんだろうが。

「で、誰なのこの人。」

「うちのクラスの担任。」

「どうだ夢島、学校に来る気になったか!」

「まぁ持っていってもいいなら行ってもいいわよ。」

 と言うと夢島は佐伯に向かって笑顔でナイフを10本ほど投げた。

佐伯は夢島が投げのモーションに入った瞬間にドアを閉め、何を逃れたと思ったのも束の間、ナイフはドアを突き抜け、佐伯の足へ突き刺さった。

「じゃあ明日から学校行くわね。よろしく、木田くん。」

 そう言って夢島由紀は布団に横になり寝はじめた。まだ昼間だってのに…後ろを見るとドアをちょっとだけあけて覗き込む下半身血まみれの佐伯がいた。

「ふっ明日から覚えてやがれ!!!」

 それ教師の言う台詞じゃねーって。

夢島由紀が寝はじめ、無事任務を達成できたので、とりあえず俺と佐伯はリビングへと降りた。

「喜んでください。お子さんは明日から学校に行くと宣言しましたよ。」

 ちょ、お前はなんもしてないだろう。

「ありがとうございます。これで私が刃物に刺される回数も減ります。とくにお昼御飯の時。この一回が無くなるだけでも大助かりです。では明日から娘を宜しくお願い致します。」

 母親は何度も頭を下げた。学校に行かせたかった一番の理由がこれかよ…まぁ確かに生死に関わるのは確かだが。母親としてはどうなんだ?

とまぁ、他人の家の事情に口を挟むのはやめておくか。

「さ、学校に帰るぞ。」

 学校につくと時刻は4時を指していた。

「帰りのホームルームをはじめるぞ。さて、このクラスも明日から生徒が2人になるわけだ。協力してモラルポイントを貯めろよー。ま、因みに夢島のモラルポイントはマイナス3万ポイントだ。」

 一応は教師に刃物を向けたわけだし、しかたないか。「なお、ここではお前らの日々のモラルポイントを報告させてもらう。それが帰りのホームルームの目的だ。」普通と大分違うな。

「さ、そんなわけで今日は1人の女性をいい方向へ導いた。13000モラルポイントを贈呈しよう。」なんだその中途半端なポイントは。

「そもそもこのポイントってどうやって定めてるんだ?」

「それぞれの生徒の担任の独断と偏見だ。安心しろ、独断が80%で偏見が20%だ。」

「わけるなよ。」

「そんなわけで木田、上位クラスまであと―ポイントだぞ。では、解散!」

 そういうと佐伯は颯爽と教室を出ていった。

足…ケガしてたんじゃなかったか…?まぁいいや。

俺は激動の1日を終え、ふらふらになりながらも家にたどり着き、これから恐らく長いKクラス生活に不安を覚えるのだった。と、同時に道徳ってなんだかわかんなくなってしまった1日であった。

4/9

キダタカオ

モラルポイント計 -136600

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