1章~Kクラス~
気がつくと俺の周りには角材と釘、ハンマーが散らばっていた。まだ頭がずきずきするが、とりあえず起き上がる。
「お、目が覚めたようだな、俺からの新入学のお祝いだ。受け取れ。」
教卓には佐伯がいた。
「痛ててて…で、こいつをどうしろと?」
「何言ってんだ、机は?と言ったのはお前だろ?」そんな当然だろ?みたいな感じで言われても困るわけで。
「まさか、作れとか言わ…」
「言う"」佐伯は全身を使いくいぎみで言った。
そんな体全体でアピールしなくても。
「というか、マジで1から作るのか…」」
「何を今更、当然だろう、1-Kに机なんぞ用意する必要がどこにある?」 自慢そうに言うなあと教卓の上で逆立ちするな。筋肉自慢かくそがっ。
「んで、Kクラスってなんだよ。アルファベットがついたクラスなんて他になかっただろうが。」
こんな筋肉教師に引き下がってはダメだ、俺の不良魂がそう告げている。
「クズ人間のKだ。」
佐伯は黒板に白のチョークでクズ人間と書いて丸で囲みこう言い放った。
「あ"!!ふざけんなよ、なんだそのクラス。俺が人間のクズだ!?冗談じゃねぇ、今すぐ退学してやるわ。」
俺は鞄を叩きつけ、飛び出そうと目にも止まらぬ早さで佐伯に捕まった。
「おっと…まてまて。退学なんてさせたら俺の面子がたたないんだなぁ。」 と鬼の形相で拳をちらつかせながら耳元で言う。そしてまた逆立ちの体勢へと戻る。
「くっ…」
なんとしても逃げ出してやる。
「まぁ、安心しろ。救いが無いって訳じゃない。お前は入学式欠席してたようだから俺から説明しておこう。」
佐伯は急にネクタイを正し、逆立ちから仁王立ちへと体勢を変えた。
「この学校はな、去年凶悪な不良どもによって半壊滅的状況に追い込まれたんだ。生徒は減り、教師は胃に穴があき、次々と退職へと追い込まれた。そこで校長は考え、ある秘策を使った。お前も入学試験の時に変な面接あっただろ。」
面接…たしかにあった。前期後期関係なく意味のわからない面接が。
「あれはなんだったんだ?」
「あれはな、不良を見つける試験。モラルの試験だ。」
「モラル?」
「二度と不良にはこの学校の敷居は跨がせない。そのため、今年から5教科プラスモラルを総合的に判断し、入学者を選定することにした。もちろん各中学の先生方から中学生時代に少しでも不良の片鱗が見られたものはその時点で足切りだ。そやつらの筆記試験の答案は鼻をほじりながら丸を付けたわ。もちろん付けるのはあってようがあってまいが、0点の丸だけだかなHAHAHA!」
酷ぇ…せめて答案くらいは紳士につけろよ。むしろお前が不良になってどうする?
「で、それとこのKクラスってのがどうつながるんだ、おい。」
「こちらが必死に目から血を出しながらに不良を見つけても、どこかでもぐりというものが潜んでいる。また新たに生まれる不良。それを見つけ、分別、更正させる為に誕生したのがこのKクラスだ。これでにっくき不良を根絶やしに…ぐへへへ」
不良になにかされた過去でもあるのか…?
「つまり俺が、この不良根絶やし制度が導入されて初めて不良と認定されたいうことか。」
…め、めんどくせぇ…あぁ…入学式意地でも登校しとくんだったな…。
「だが諦めるのは~まだ早い!モラルポイント通称Mポイントを貯めることで、K→5→4→3→2→1クラスとステップアップすることが出来るんだ。」
「ちょっと待てよ、じゃあクラス分けに学力は関係ないってのかよ。」
「当然だ!!!」それが教師の言うことかよ。
「ちなみにKの上の5クラスに上がるには500モラルポイントが必要になる。まずはそこを目指せ。」
わけわかんねぇ学校に来てしまったなぁ…。
「んで俺のポイントは今いくつなんだよ。」
どうせ0とか言うんだろ?
「マイナス10万ポイントだが?」
予想の遥か上を行っていた。
「そんな馬鹿げたポイント返済できんのかよ。」
「そこはお前の努力しだいだ。とにかく人を助け、モラルポイントを稼げ!!!」
ふん、こんな馬鹿げた教師、馬鹿げた学校の言いなりになってたまるかよ。
「はぁ~あほくさ、やってられるかっての!」
「さらにさらにクラスメイト第一号記念としてマイナス5万モラルポイントを贈呈。」
「いらねーよ、てか今やってられねーっていったよね。」
「安心しろ、Mポイントはタイムリーに増減するが、深夜割増はないから。」
「タクシー料金かよ。」
「そんなわけて随時Mポイントは増減するので、当然期の途中でクラスが変わることがありえる。もっと言えば授業毎に変わることもありえる。4時間目は4クラス、5時間目は5クラス、6時間目はクズ。といったようにな。」
「どんな非行に走ったらそうなるんだよ」
「お前が言うな!!!」
「えー…」
「まぁ確かに教師として生徒をあまり締め付けるのも良くはない。俺とて鬼じゃない。」
「般若だな。」
「失礼な君にはさらにマイナス100モラルポイントを贈呈しよう。」
別にもうどうでもいいよ、どうせ返せねぇし。クズでもなんでも好きに呼べってんだよ。
「くーずくーず!!!」
この教師本当に最低だ。
佐伯は咳払いを1つし
「冗談はさておき」
「冗談じゃすまねーっての」
「一時間目を始める。」
「普通に始めやがった。」「…おい!」
「なんだよ」
「日直だよ」
「俺かよ!」
「他に誰がいるんだよ」
「…起立、礼」
「木田ぁー!!机はどうした机は!」佐伯は散らばった角材を指差しながら言う。
「出来てねーよ!ってか時間くれよ。」
「まぁいい、机なんてあったってお前には意味がないからな。」
「んだと!!」
「さて、一時間目は道徳の授業だ。」
「なぁ、教科書もらってないんだけど。そもそも時間割しらないし。」
「なに言ってんだお前は。時間割なんてずっと道徳に決まってるだろ。お前に必要なのは国語でも数学でも理科でも社会でもない。モラルだ!」
「道徳ってあれだろ?なんか教科書読んで感想とかいうあれだろ?あれがずっととかだるすぎだろ。」
「バカ野郎、なに言ってんだ、ああいうのはモラルがあるやつにやる授業だろ。お前にやってなんの意味がある。」
「じゃあ何すんだよ。」
「まずは校外に出る。」
そう言って佐伯は外に出た。仕方なく俺もついていく。