夢
変な夢を見た。
何もない空間に、普段着を着た自分の姿だけがぽつねんと、浮かんでいる。
何もないと言っても、色がないというわけではない。
白紙のように白い空間が、果てなく遠くまで続いているような、それでいてすぐに壁に突き当たってしまいそうな違和感を持ってそこにある。
この空間には、影がなかった。
きっとそのせいだ。
晴天の青空が、手を伸ばしただけで届きそうな錯覚に陥ってしまうと時と、この空間はよく似ている。
ぼんやりとそこに浮かんでいると、
ぽん。
と、突然目の前にティーカップが現れた。
ティーカップはふよふよと漂い、「ようこそ」と子供の様な声を出した。
「主がお待ちです。晩酌の用意が整ったと」
そう言うティーカップをぼんやりと眺めていると、急いでくださいと、ティーカップが行動を促してくる。
ティーカップがしゃべっている?これまた妙な夢を見ているものだ。
と自分は考えた。
夢の中にいるからか、頭は終始霧がかかったようにぼんやりとして明瞭な思考をすることができない。
「どうなされたのですか?何か、お気に召すことでもございましたか?」
宙を滑るように先に進みかけていたティーカップがくるりと回転して、中に入っている紅茶がちゃぷんと音を立てた。
ティーカップに言われて、初めて自分が笑っていることに気が付いた。
「俺は……笑ってるのかい?」
そう尋ねると、ティーカップが生真面目な声でそうですよ、と返してくる。
どうしてそのようなことを聞くのかという疑問は、湧いてこなかったようだった。
相手はティーカップだしここは夢だから、自分に都合のよい動きしかしないのだろうか。
まぁ、誰しも急にティーカップが宙に浮いてしゃべり始めたら笑うしかないだろう。
延々と続く、まっしろな道を、ティーカップとふたりだけで進んでいく。
笑う癖など元々なく、無表情が板についてしまったような自分だから、笑う時には嫌にはっきりとした緊張と違和感を常に感じていたものだが。
今回は、なかったな……。
だから笑っていることに気が付かなかった。
夢、だからか……?
にしても、変な夢だ。
と、ティーカップが何もない空間でぴたりと動かなくなった。
本人からすると、厳かにしたのだろう声が、妙に間抜けに響いた。
「ここが、主の間です。さぁ、お入りください―――」
いやいや、どこにその部屋があるってんだ。
と思ったところで、目が覚めた。
朝日が燦々《さんさん》と顔を照らす。
眩しい。
……朝、か……。
そう考えた瞬間に、いつのまにか自分の中で大分夢の記憶が飛んでいる。
ただ、真っ白い空間と、変に楽しかったことだけ、覚えているのみだった。
でました!!第二弾!!(というか書きだめですv)
って、誰も見てませんよね、アハハ(笑)
実はこれ、実際に私が見た夢がモデルとなっております。
まぁ、なんて変な夢を視たものかと自分でも思ってます(笑)
ほんの少しでも、ほのぼのとした感じを味わっていただければ……。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。
できましたなら、また読みにいらしてください。