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どうか、善行を積ませてください

作者: 黒イ卵
掲載日:2026/04/11

 パルプンテを唱えたら戻りますか?


 お願いします、なんでもします、なんでもするとは言ってません。


 こまっているのです。

 とても困っているのですよ。

 困ると囚われるは同じ国がまえなので、国に囲まれた木も人も、もう逃げられないのですね。


 嗚呼、ワタシの善意のかたまりが固まってまた、国に囲まれているの。囲むのも国がまえ、この国は一体どうなっているのかしら。あら、国も玉が囲まれて逃げられないですね。


 いいですか、あなたが最初に、道を尋ねました。駅は何処ですか、と。

 ワタシは、人に親切にするのが大好きなので、道を教えたのですよ。

 だって、感謝されると脳が喜びますからね。

 脳内麻薬が溢れて多幸感で胸いっぱいなのです。

 駅は、この道を、ええ、最初にいた地点とは違いますね。

 だってワタシは、あなたを案内したわけですから。

 喜ばれたくて、つまりは感謝されたくて。


 正しい道を示してあげて、あなたには喜ばれ、御礼を言われると嬉しいのですよ。

 ワタシの今日という日のこの一瞬が、何かとても善きもので満たされる瞬間に、世界は輝いて見えるのです。


 ええ、わかっております、幻想です。

 脳内麻薬の成せるワザですから。

 それでも、この一瞬こそが、ワタシとあなた、ワタシと善き世界との一体感で、宙に浮くような心地になるのですね。

 ワタシの口角は上がり、普段は隠された笑窪ができて、どこか慈愛に満ちたカタチとなるのですよ。


 つまり、でも、ですから。

 あなたがここで、落とし穴に落ちなければ。


 聖人のままでいられたのですけれど。




 これは一種の賭けみたいなものでしてね。

 ワタシはいつも通り、いつもと同じ、一日一回の善行を目指して、あなたに出会い道を教え。

 駅に行くまでの道に、分かれ道があったでしょ?

 ひと目に付きにくい細いほそーい道でね、地元の人間なら、近道になって駅近くまで出れるのですよ。


 途中、山の方に間違えて行く人が、年に数人出てしまうのですけれど、ね。


 嗚呼、ひゅーひゅーと声が出ていますから、あと少しかもしれませんね。

 ワタシは感謝されたくて道を案内したのですよ。

ですがごくたまに、もしこの道を案内したらどうなるのか、見たくなってしまいまして。


 善行を積むように教わってきたワタシの、イタズラ心のような、ただひとつの反抗かもしれないですね。




 嗚呼、パルプンテを唱えますか?

 ワタシの善意に魔が差しませんよう、あなたを駅に連れて行きますよう。


 きっと、この小さな善行が、あなたの道を明るいものに示しますように。

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― 新着の感想 ―
お久しぶり〜♪  (・∀・)ノ ……って、コワいですわ。 ((((;゜Д゜))))
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