4 回想(4)
えっと・・・次回では異世界へ行けるはず・・・
「私はね・・・魔法使いよ」
彼女が訪れたことによって、ある少年の人生はおおきく狂わされることになる。
4時間目の授業が終わった時、校内放送で不意に呼び出しがかかった。
『2年3組神城君。2年3組神城君。至急職員室まで来てください。』
昼休みになり弁当を開けようとしていた蒼慈は不機嫌そうな顔で教室にとりつけられたスピーカーをにらみ付ける。
「ソージ。お前、ちゃんと許してもらったのか?」
片手に弁当をぶら下げて蒼慈の席に洋平が近づいてきた。
「おかしいなぁ。『放課後に来なさい』って言われたんだけど・・・」
「どのみち許してもらってないのかよ・・・」
弁当の開きかけた包みをもう一度包みなおし、不機嫌そうにボヤく蒼慈を見て飽きれながら洋平は思う。
…ソージの奴。結局まだ許してもらってないのか・・・どうせソレを見かねた他の教師が説教しようとして呼び出したんだろうな。
「とっと行ってきたら?そんでとりあえず謝ってこいよ。謝ればだいたいなんとでもなるから。そんでとっとと飯食おうぜ」
「・・・そうだな。今謝れば、放課後早く帰れるかもしれないしなぁ。まぁ、本日二度目だが、行ってくるわ」
「おぅ。いってこい」
そう言って洋平はヒラヒラと手を振って蒼慈を教室から送り出した。
「失礼しま~す」
本日二度目の職員室。しかし、どうやら蒼慈を呼び出したのは例の英語教師ではないようだ。
「神城君。神城君。こっちだ」
そう言って蒼慈に手招きをしたのは、頭のてっぺんが少々残念な古文の教師だった。
手に持ったハンカチでひたすら顔の汗を拭きながら、蒼慈についてくるように言って、職員室にある小さな会議室へと歩いていった。
蒼慈は付いていきながら疑問に思う。
…ん?あの先生じゃないのか?俺、他に呼び出される理由なんてあったっけ?
そして、会議室の前に来て教師が扉を開き、蒼慈に入るように促した。
「え?先生は入らないんですか?」
「あ、あぁ。これは君の問題だからね。私が口を出すことはないよ。話がまとまったら言いなさい。外で待っているから」
そう言って古文教師は扉を閉めた。
この会議室という部屋は、主に教師が生徒の進路指導にあたったり、生徒の親を呼び出した時に使われたりする部屋だ。
室内は綺麗だった。
床はカーペットで、部屋の中央には教室の机を4つくっつけたくらいの大きさの木製の机があり、その両脇に2個づつ座り心地のよさそうな椅子がある。
状況が理解できず、蒼慈は困りながらも部屋にある椅子に腰掛けようとした。
蒼慈が椅子に座ろうとした時、不意に目の前で何かが動いた。
「・・・っ」
とっさに座りかけていた腰を上げる。
さっきまでは確かに誰もいないはずだった。
少なくとも蒼慈はそう思っていた。
…い、いつの間に・・・さっきはまるで気配もなかったのに。
「あらあら。いきなりそんなビックリしないで欲しいんだけど。レディに対して今の反応は失礼よ。ちょっと傷ついたわ。とりあえず座ってくれる?」
薄く笑いながら、部屋の先客は大して傷ついた様子もなく彼女の向かいの椅子を指差した。
蒼慈は言われるままに椅子に座った。
「すいません。誰もいないと思っていたもので」
「そう」
蒼慈は目の前に座っている女性に頭を少し下げる。
「えっと・・・どちらさまですか?自分に何か用事でもあるんでしょうか?」
蒼慈がそう言うと、目の前の女性はニヤリといやらしい笑みを浮かべ話し出した。
「一応さっきの教師には私はあなたの生き別れの姉と言っといたから後で口裏合わせといてね」
「は?」
「まずは自己紹介からはじめましょうか。と言っても私はあなたのことはすでに調べてあるんだけどね」
「・・・調べた?・・・しかも姉だなんて、嘘ですよね?」
蒼慈に姉はいない。
戸籍上はそうなっている。
しかし、生き別れだとしてここまで似てない姉弟なんているはずない。
蒼慈は背が低い。そして、どちらかというと童顔よりだ。しかし、目の前にいる女性は背が高く、なにより大人びている。
多分見た目よりも3,4歳若いのだろうと思われる。
「えぇ。嘘よ。そんなことより自己紹介してもいいかしら?」
知らずの間に目線を地面に落としていたことに気がつき、蒼慈は目線と女性の方へと戻す。
「えぇ。どうぞ」
「私の名前は、咲森華奈恵。わけあってあなたに会いにきたの」
「わけあって、か。よほどの用事なんですか?」
「えぇ、もちろんよ。」
「俺のことは、調べたって言ってましたよね。なら俺の自己紹介はいりませんよね?できれば先にその『わけ』を教えてくれませんか?」
華奈恵は少しの間、考えるように下を向いた。
彼女は顔を上げると、何かを決意したような面持ちで言った。
「私が“異世界”に行くのを手伝って欲しいの。」
文章力なくてすいませんOTL