3話
「やってまいりました。今日はここガゼリアル火山から中継でお送りします。ガゼリアル火山と言えば、かの魔王をもが入ったとされる温泉がある、有名な観光地です。そして、火山の麓にはガゼリアルまんじゅ・・・」
「ちょっと!ソウジ!何処に向かって言ってんのよ!早く手伝って!」
「ソウジさん!?なんで一人だけそんな安全地帯に!?」
「蒼慈ぃ!!」
「・・・あ~、ちょっと電波が良くないみたいですね・・・あ、繋がりましたか?はい。では、え~、ここガゼリアル・・・」
「蒼慈!!さっきから何してんのよ!」
ただ今彼らは絶賛戦闘中だった。
体長10メートルは優に超える大型ドラゴン。
「でっかいな・・・」
そして、そのドラゴンの強大なブレスを水の壁で何とか防いでるセリーヌ。
「乗ってみたいな・・・」
セリーヌの後ろからちょこちょこと電撃を食らわせているフレール。
あまり、というか全く効いていないが。
「男のロマンだな、ドラゴンってのは」
ドラゴン上空からは華奈恵が風銃などで攻撃をしている。
これはどうやら効いているみたいだが、あまり相性が良いわけではないらしく、大ダメージには至っていない。
「捕獲しちゃう?もうこれは、やっちゃう?」
と、さっきからリポーターの真似をしたり、一人ぶつぶつと言っているのは蒼慈。
彼女らが下で戦ってるのを、後ろの大きな岩の上から悠々と見学している。
「ソウジ!本当にヤバいって!」
蒼慈と契約している華奈恵とセリーヌはそれなりに戦えているのだが、やはり普通の人間であるフレールでは全く手が出ないらしい。
「寧ろ足手まといになってるな、さっきからセリーヌ防御するので精一杯だし」
「そう言うなら手伝えぇ!!」
姉であるセリーヌの病気を治してから一緒に旅(?)をしているが、蒼慈の力に怯えることもなく、かなり砕けた調子で彼女は蒼慈に対して接している。
「というより、なんで水属性が得意なセリーヌが攻撃しないんだ?」
蒼慈がそう思うのも当然。
明らかに今は不利である。
普通なら華奈恵とセリーヌの立ち位置が逆だろう。
「私っ『地下水』しか攻撃魔法知らないんですっ!」
まさかとは思っていたが、
「まさかの補助特化・・・」
「そう思うなら手伝って下さいっ!」
さっきからドラゴンのブレスを防ぎ続けているセリーヌは額に汗を掻いていた。
別にセリーヌの本気の『地下水』は威力が不十分というわけではない。
ただ、いかんせんドラゴンは飛んでいるのだ。
地面から出る『地下水』では分が悪い。
「俺がやったら一瞬ジャン?」
俺にどうしろと?と言った様な風に肩をすくめる蒼慈。
「だから!一瞬で倒しても問題ないでしょ!」
「何言ってるんだ華奈恵。ドラゴンだぞ。前に戦ったあんなちっさいのじゃない。マジでファンタジーのドラゴンなんだよ」
「だから、何なのよっ!くっ!」
華奈恵はドラゴンの翼の風圧によろめきながら叫ぶ。
「ドラゴンを殺すなんてそんな勿体無い事できるか!」
まるで間違ってるのはお前達だ、とでも言わんばかりの蒼慈。
「そんな事・・・言ってる場合じゃないでしょう!」
華奈恵は、ひたすら上空からドラゴンを叩き落そうと翼に風銃で銃弾を浴びせ続ける。
彼女達もはじめはこんなことになるとは思っていなかったのだろう。
蒼慈達は今から20分ほど前にこのドラゴンの前に到着し、華奈恵が一発浴びせて、そのまま村から火山までひっぱってきたのだ。
その時は彼女達はそこで蒼慈が一瞬で片付けるのだろうと思っていた。
しかし、
「じゃ、後は任せた」
何もしてない人間が言うセリフではないということだけは確かであろうセリフを吐いて、蒼慈はとっとと岩の上えと避難したのだ。
すでに竜の獲物として敵対意識を持たれている華奈恵、そしてそれを助けるために傍に居たセリーヌと、逃げ遅れたフレールはそのまま逃げることもできずに戦闘に入ったのだった。
「っ!」
セリーヌの水の壁、『水壁』は前面にしか展開されていない。
全体に球帯状に展開して薄くすれば、このブレスを防げないと感じたのだろう。
全てが前面半分に集められている。
故に、ドラゴンのブレスが頭上を通過し、後ろの岩を爆発させた時の岩の破片を防げなかった。
「セリーヌ!フレール!」
上空から華奈恵が声を上げる。
そして、爆発してたった砂煙の中に、岩の破片で切れて出来たであろう傷から血を流す二人を見つける華奈恵。
「蒼慈!」
そして、流石に洒落にならない、と目で訴えかけてくる。
「・・・はぁ~。ドラゴン・・・」
いかにも面倒臭いと言う風に立ち上がる蒼慈。
「捕獲用の魔法とか思いつかないんだけどな・・・」
蒼慈は仲間が怪我をしているのに、今だに捕獲のことを考えていた。
そうして蒼慈が考えている間にもセリーヌ達には死が刻々と迫っていた。
ドラゴンの口がブレスを吐くためにセリーヌ達に向けられる。
さっきの衝撃でセリーヌは意識を失っていた。
しかし、辛うじて意識を保っているフレールにこの危機を打破する力はない。
「・・・ぁ、思いついた」
蒼慈がつぶやいた瞬間、
ドラゴンの口からブレスが放たれた