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3 回想(3)

も、もうちょっとで異世界へ・・・

 その時の英語教師は過去にないほどアホ面をさらしていたに違いない。

 向かい会って立っている蒼慈は真横に上30度ほどに腕を伸ばし、その先を指差していた。

 その先にあるのは、


「もう時間です」


 時計だった。

 そして、彼の言ったとおりチャイムがなった。


「では、自分は次の授業があるので、これで失礼します」


 そう言って蒼慈は去っていこうとする。


「ま、待ちなさい!!あ、あなたっ!全然反省してないじゃないの!」


 教師の言葉に蒼慈は足を止める。


「いや、反省するも何も、してない罪に反省もクソもありませんよ。そんなことより授業始まっちゃったんですけど」


「・・・もぅ、いいわ。放課後。放課後もう一度職員室に来なさい!」


「放課後?・・・ちょっと待ってください。今日は大事な用事があるんですけど」


 そう大事な用事が彼にはある。


「大事な用事?そんなの後にしないさい!どうせ大した用事でもないでしょ!」


「『大したことない』?・・・いくら教師と言えど、今の言葉は許されませんね」


 常に笑っているか、ボーっとしている彼が怒った表情を見せるのはかなり稀なことだった。


「な、なんです?じゃ、じゃあどんな用事なんです?」


 若干後ずさりながら英語教師は蒼慈に尋ねる。すると彼の顔は怒りの顔から一変して、大好きな自分のおもちゃを自慢する子供のように輝いた顔になった。


「ふっ。よくぞ聞いてくれました。実は昨日、念願かなってやっと『|(影をも切るシャドウブレイカー』を手に入れたんですよ!」


「・・・しゃ、しゃどうぶれいかー・・・・?『影を壊す者』?なんですかソレは?」


「『影をも切る刀』です!今話題の『サークルオンライン』のレア度MAXの刀ですよ!あれを手に入れるのをどれほど待ち望んだことか。一体どのモンスターがどの条件でドロップするのか全く分からなかったんですよ。その状況で自分が一番に手に入れたんですよ!?すごくないですか!?これは早く帰って今後どうするか考えるべきなんですよ!」


 教師は、蒼慈の勢いに押されて呆けていたような状態だったが、彼が話しおえるとだんたんと冷静になり、徐々に怒りが戻ってきた。


「つ、つまり・・・あなたはそのゲームをするために私の説教は聞けないというのですか?」


 教師は怒りにプルプルと震えながら蒼慈に向かって静かな声で言った。


「そうですよ。サークルオンライン>先生の話。ですよ?」


「あなた・・・今日は絶対に放課後残りなさい!絶対に帰しませんせんからね!それに『影をも切る刀』はシャドウブレイカーなんて英訳にはなりません!説教の後に英語の補習もしますからね!」


 そう言って英語教師は蒼慈を怒鳴りつけ教室に向かわせた。

 しかし、彼がこの日の放課後に彼女の前に姿を現すことはなかった。







 今日ある一人の女性がこの学校に来ていた。

 彼女は、初めてくる学校に戸惑いながらも確実な足取りで校舎へと入ってゆく。

 腰あたりまで伸ばした綺麗な黒髪。そして、出るとこはでて、引っ込むとこはひっこんでいる。いかにもお姉さんという雰囲気で彼女はある場所へと向かっていた。

 廊下を歩くと男子生徒も女子生徒も振り返り、彼女を指差している。

 彼女には目的があった。

 ずいぶん前から準備をしていた。そして最終準備のためにここに訪れていた。

 彼女はある人物を探していた。

 その人物を見つけるために一体どれだけの年月と、どれだけの労力がついやされただろうか。

 彼女はそんな昔の苦労を思い出しながら思う。


「やっと。やっとだわ・・・やっと」


 彼女の足取りは始めてこの学校に来たとは思えないようだった。

 彼女がカドを曲がろうとした時、後ろから声が掛けられた。


「すいません。すこしよろしいでしょうか?」


 声を掛けてきた女の子を彼女は振り返ってみる。

 彼女自身と比べれば見劣りするが、その少女はかなり美人であった。


「失礼ですが、あなたはどなたですか?この学校の関係者とは思えないのですが。」


 そう、この彼女は初めてここに来たのだ。言ってしまえば不審者だ。

 そんな彼女をかけるのはそれなりに勇気がいるだろう、しかしその少女には勇気を振り絞ってその女性に声をかける必要があった。

 少女は、委員長だった。

 少女はこういう時に率先してこういうことをすることが委員長の役目だと思っていた。


「私?」


「えぇ、あなたです。この学校で一度も見かけたことがありませんし、教員の方と一緒にいるわけでもありません。一体どちらさまですか?」


 彼女は困った。

 ここで一体なんと答えるべきか。

 彼女には目的があってこの学校に来たが、誰かに許可をとって入ってるわけではない。

 つまり、不審者なのだ。

 しかし、堂々としていれば誰もきにしないと思っていので彼女は驚いた。


「う~ん。一言で説明するのは難しいんだけど。・・・まぁ、あえて一言で言うなら・・・」


 目の前にいる少女に対して彼女が抱いた印象は、“からかいがいがある”だった。

 ちょっとしたイタズラ心が彼女に芽生える。


「私はね・・・・『魔法使い』よ」


 そう言って彼女はニッコリと笑い少女の横を通りすぎる。

 意味が理解できなかったのか少女は固まっていた。

 しばらくしてから後ろから少女が何か言っていたが彼女は止まらなかった。

 

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