28話
遅くなってスイマセン^^;
蒼慈達は部屋に案内してきた使用人に案内され、王の元へと向かっていた。
「ここ王ってさ、どんな人なの?」
蒼慈は彼らを先導している使用人に尋ねる。
「そんなことを聞いてどうされるのですか?」
振り返ることも立ち止まることもせずただ答える使用人の女性。
「別になんでもないけど・・・冷たいね。会ってこれだけの短期間でこれほど嫌われたのは始めてだよ」
「嫌ってなどおりません。これが普通です。不快ですか?」
「いんや。それよりも王さん、ちゃんと腕の立つ兵士に守られてるといいんだけどねー」
蒼慈のその言葉に使用人がギロリと振り返った。
「もし、もし王に何かしてみなさい。殺しますよ」
さっきまで丁寧な言葉づかいとはまったく違う氷のように冷たい声。
「あらあら。もはや正体を隠す気なんてなくなったのか?」
ニヤリと笑みを浮かべる蒼慈。
「・・・」
立ち止まり蒼慈を睨み付ける使用人。
蒼慈はその威嚇を特に気にした様子もなく笑みを絶やさない。
「いつまで立ち止まってるのかしら?早く案内して欲しいんだけど」
蒼慈の横から華奈恵が使用人に言った。
「・・・」
華奈恵に言われて再び歩き始める使用人。
「ここで王がお待ちになっています」
暫く歩いたのち、おる部屋の前で止まった。
「・・・」
使用人の女性は蒼慈が部屋に入るのをジッと睨み付けながら去っていった。
部屋の構造はさっき待たされた部屋とは比べ物にならないくらいの豪華さが伺えた。
部屋の中央にはある程度の机があり、その向こう側に王が蒼慈達を出迎える形で座って待っていた。
周りには重鎮と思われる者たちが何名か見受けられる。
「我は、クリスパニア王国、第8代国王グレゴオール2世だ」
真っ先に王が立ち上がり名乗った。
「俺はソウジ・カミシロ」
「私はカナエ・モリサキ。“導き手”です」
蒼慈に続いて華奈恵が名乗る。
…“導き手”か・・・なんかまた訳のわからん単語が・・・
「私はセリーヌ・ニルフェールです」
そう言ってセリーヌは王の前に跪く。
「妹のフレールです」
それに続くようにフレールも王の前に跪く。
「ふむ・・・とりあえず座ってくれ」
王の言葉に従い蒼慈達は席に着く。
「それで、お前達のうちの誰が“契約者”だ?」
唐突に王は蒼慈達に尋ねる。
「彼です」
そう言って華奈恵は蒼慈の方を見る。
「・・・幼いな。ソウジと言ったか、何歳だ?」
王の物言いにピクリと蒼慈の眉が動いた。
「16だ。“契約者”に年齢が関係あるのか?」
蒼慈の言い方に周りの重鎮達が蒼慈に厳しい目線を向ける。
「そんなことより単刀直入に聞くが、“魔王”は何処だ?」
「それが人に者を尋ねる態度か、親の顔が見てみたいものだな・・・小僧」
流石王と言ったところか、纏うオーラがこの場を支配した。
「小僧か・・・何か勘違いしてるようだけど、貴様らは・・・俺達と対等な関係が持てるとでも思っているのか?」
王のオーラに一歩も引く様子のない蒼慈。
「ほぅ・・・」
「俺がその気になれば国1つ潰すことなんて、造作もない・・・ちなみに俺の親の顔が見たいならこの場で殺してやるよ」
王と蒼慈がその場で睨み合う。
その沈黙に周りの者達にも緊張が走る。
そして、その沈黙を破ったのは王だった。
「・・・魔王の居場所だったか?」
「あぁ。話が早くて助かる」
「悪いが今はわからん」
「何?」
「予言では魔王が我の代で現れるということしかわからなかったのだ」
「そのわりには余裕だな」
「焦っても仕方のないことだ。時が来ればわかるだろう」
「時が来る、ねぇ・・・明日にでも“魔王”が出てきてもおかしくないってのに」
「それこそ神のみが知ることだ」
「神か、そんないもしない物を一国の王が信じてるとは、この国のお先は真っ暗だな」
セリフの最後に(笑)でもついてそうな蒼慈の発言にまたもや場の空気が悪くなる。
しかし、誰も蒼慈に対して何も言わない。
いや、言えないと言った方が正しい。
彼らは知っているのだ。蒼慈が何者か、“契約者”というものがどういうものなのか。
本来、伝承によると何処からか現れる“契約者”は、温厚な性格で自分の命を捨てでも周りの者を守ろうとする勇気あるもの、まさに勇者。そして“契約者”の力は絶大な物で一人でドラゴンを倒すことも出来るほどだと言い伝えられている。
しかし、
「果たしてあなたは神の存在を冒涜するほどの力をお持ちになっているのですか?」
王の真後ろに控えていた初老の男が一歩前に進み出る。
「代々言い伝えられている伝承では、“契約者”には国一つ滅ぼすほどの力はないと心得ておりますが?」
この雰囲気の中で堂々と発言してみせる。
「へぇ、そうなんだ。あんた名前は?」
「これは失礼。私はレイノール・クロート。宰相を務めさせていただいております」
王の真横まで出てきたレイノールと名乗る男は、白髪で身長は170センチを超えているくらいで何処か王に似た威厳を感じさせる。そして、口元と顎に生えた髭は宰相と言うよりも執事を思わせる。
「宰相か・・・レイノールとか言ったね」
蒼慈は王よりもそちらの方に興味を向ける。
「はい」
「今、伝承とか言ったけどソレ、聞かせてもらえるかな?」
王の時とは違う、高圧的な物言いではない言い方で蒼慈は言う。
「私でよければ話させてもらいましょう」
宰相はチラリと確認を取るかのように王の方を見る。
それに王は頷いて答える。
それを見た宰相は話し始める。
この国と“契約者”との関係を。
書いた後で思ったけど・・・王族とかの名前ってどんな構成か理解してないや^^;