27話
「ほほー、やっぱでっかいね」
蒼慈達は途中から兵士達に案内されて城の中にいた。
「そうね。流石は王城ね」
先導する使用人の女性の後ろを4人は城の中を見ながら付いていっていた。
「あれ?華奈恵が騒がないなんて珍しいね」
「っ!?べ、別にいつも騒いでるわけじゃないでしょ!?」
顔を赤くさせながら華奈恵は言った。
「そういうことにしといてあげるよ」
今だ反論する華奈恵を笑いながらスルーして蒼慈はもう一度城の構造に目を向ける。
流石に王城と言うだけあってかなり良い造りだと思われる。
壁はほとんどが白で統一されており、汚れの一切もない。
床の方にも汚れはなく、普段から使用人が掃除しているのがよくわかる。
「で、俺らを何処に連れてくわけ?」
蒼慈は先導している使用人らしき女性に声を掛けた。
使用人と言ってもその仕草や立ち振る舞いからわかるが、多分暗部の者だろうと蒼慈は思った。
何より隙がない。そして、フレアを人質にした時に最初に倒した執事のような男と雰囲気が似ていた。
「客人としておもてなしをするようにと言われておりますが、すぐに王との謁見がありますので、それまでお待ちしてもらうお部屋に向かっているのですが・・・何かお気に召さないようなことでもありましたでしょうか?」
あくまで言い方は丁寧だが、その端々に敵意を蒼慈は感じた。
それもそうだろう。
自らが使えている主をあのように扱われて、その上客人として丁寧に扱うなどと、彼ら使用人や兵士にとってはこの上ない屈辱なのだろうから。
「いや、別に。ただ、さっきから監視の目がいたいな、と」
ニヤリと蒼慈は笑う。
「っ!?」
一瞬驚きはしたが、すぐに目の前の使用人は無表情を装う。
「そうですか。それは失礼したしました。ご不快なようでしたらすぐに下げさせますが」
蒼慈達を監視しているの者はもちろん王の命令であり、それらの者は王直属であるためトップレベルの実力がある。
簡単にいることがバレていいはずがない。
「いや、いいよ。どうせなんだかんだ言っても誰かが監視するんだろうし」
蒼慈の言った皮肉にピクリとも反応せず、あくまで無表情のまま使用人は再び前を向いて歩き出す。
そして、城内に入ってから5分ほど歩いただろうか、ある扉の前に着いた。
「こちらのお部屋でお待ち下さい」
そう言ってさっきの使用人は頭を下げて去って行った。
「はぁ~。ソウジのせいで国に目をつけられちゃったじゃん」
蒼慈達が案内された部屋はそれなりにいい部屋だった。
部屋には真ん中に机があり、その周りに椅子がいくつか並んでいた。
フレールはその1つにドサッと座った。
「いいじゃん。あの様子からして、俺の予想は的中したと見た」
蒼慈はまたもやニヤリと笑みを浮かべる。
「また良からぬことを考えているんですか?」
セリーヌはフレールの隣の椅子に座った。
「またってなんだよ、またって」
そう言って蒼慈はちょうどセリーヌの向かいに座る。
「ついさっき自分がしたこと忘れたのかしら?」
最後に華奈恵が蒼慈とセリーヌの間に座り、机を丸く囲む形で全員が座った。
「まぁ、あれは敵が弱すぎたというかなんというか」
「・・・もっとまともな人だと思ってたんだけど?」
「え?俺まともじゃない?」
「自覚ないのかしら?」
「だって華奈恵達も止めなかったし、むしろ乗ってたじゃん」
「気づいた時にはあの状況。止めるなんて無理よ」
呆れたように華奈恵は言う。
「だってさ、あぁでもしないと預言者に会えないじゃん?」
「もっとやりようがあったと思うんだけど?」
フレールも呆れたように言った。
「だってだよ?たぶん預言者の人さ王族か近衛兵しか会うことできないと思うんだけど」
「そんなことないんじゃないの?」
「だって予言だよ?予言。勝手に漏れていい情報じゃないでしょ」
「まぁ・・・確かに。でも強引すぎない?」
「めんどくさいんだもん。俺は帰れればいいんだよ」
「あなたはそうかもしれませんけど・・・」
蒼慈の向かいに座っているセリーヌが言った。
「だから一緒にこっちくればいいじゃん。住まいと金なら華奈恵がなんとかしてくれるらしいし」
「私の家、そんなにお金ないわよ?」
「・・・うそん」
予想外だ、という思いを顔一面に表しながら蒼慈は呟いた。
「まぁ、最悪どっかに隠れて住むけどさ。そんなことより、今度は何をしようって言うの?」
フレールは言った。
「えっとね・・・と、その前に、華奈恵」
蒼慈は華奈恵に目配りだけする。
「了解・・・シャウト」
途端部屋を魔力が覆う。
外部に内部の音を漏らさないための魔法だ。
「サンキュ」
さも当然のことのように蒼慈は華奈恵にお礼を言うが、セリーヌ達は驚きを隠せないようだった。
「え?どうやったんですか!?」
「普通に音だけを遮断する結界を張ったのよ」
華奈恵達の言う普通はこの世界の普通ではないのだと、あらためて2人は思った。
「それじゃ、俺の計画?ていうかこれから起こることの予想話していい?」
そう言って蒼慈は新しいイタズラを思いついた子供のような表情で話し始めた。