2 回想(2)
3時間目の授業では蒼慈は至って真面目な態度で授業を受けていた。
そして、チャイムによって授業の終わりの時刻が知らされ、委員長が号令をかけて授業が終わった。
「ふぅ~。後3時限で帰れる~」
そう言って蒼慈が大きく伸びをしていた時。
---ピンポンパンポーン
校内放送が流れた。
『2年3組、神城蒼慈君。2年3組神城蒼慈君。今すぐ職員室まで来なさい。』
「・・・俺なんかしたっけ?」
「覚えてないのか・・・」
「ぁ。洋平。俺なんかしたっけ?」
蒼慈の言葉に呆れながら、授業が終わって蒼慈のとこへ来た洋平は言う。
「さぁな。とりあえず行ってくれば?『今すぐ』とか言ってるしさ」
「そうだな~。たぶんなんかの間違いだろうし。そいじゃ行って来る」
そう言って蒼慈は立ち上がり、教室の出口へと向かって行った。
「失礼しま~す」
職員室の扉を開き、蒼慈は中へと入った。
すると奥の方で英語教師が手招きしているのを見て、蒼慈はそちらへと歩いていく。
そして、英語教師の目の前に立った。
「なんでしょう?」
呼び出された理由がわからないといった風で教師の前で首をかしげる蒼慈。
「・・・『なんでしょう?』ですって?あなた自分が呼び出された理由も分からないのですか!?」
英語教師は立ち上がり大きな声で怒鳴った。
彼女の身長はそれなりに高い。男子生徒のなかでいささか背の低い蒼慈の目の前に立たれると、彼女のほうがいくばか上から話すことになる。
職員室内に大きな声が響いたので周りの生徒や教師が振り返るが、誰もきにしない。職員室ではよく見る光景だからだ。
「えぇ。わからないから『なんでしょう?』と聞いたのですが、何か問題でも?」
「大有りです!あなたは2時間目の私の授業中に机の上に教科書もノートも出さずにただ窓の外を眺め、授業を聞いていませんでしたね。
それだけでも許しがたいというのに、あなたという生徒は、私があの時『後で職員室に来なさい』にもかかわらず、あなたは来ませんでした!」
英語教師は蒼慈を睨みつけて、怒りを思いっきり彼にぶつけた。プライドが高い彼女は、何より自分の呼び出しを無視したことに腹が立ってならなかった。
「・・・はて、そんなこと言われた覚えは全くないんですけど・・・」
蒼慈はあの時のことが全く記憶になかった。
「『覚えてなかった』・・・よくもまぁそんな白々しい嘘がつけたものですね!あなた何故真面目に授業を受けないんですか!」
「受けてましたよ?真面目に」
「ほぉ・・・あなたにとっての『真面目』は私の考える『真面目』とはだいぶ違うようですね・・」
怒りのせいか、教師の顔は真っ赤だった。
「当たり前じゃないですか。人個人によってそんなものの定義なんて変わりますよ?」
「私が聞いてるのはそういうことではありません!」
「じゃあ、なんなんですか?あまり回りくどい言い方をされても時間だけが浪費されるだけなので、簡潔にお願いしてもいいですか?」
「じ、じかんの無駄ですって・・・?あなた・・・」
「で、話の続きをどうそ?」
神城蒼慈という生徒は年上の人を苛立たせることにはもの凄い才能を持っているらしい。
「・・・あなたは授業中にノートも何も出していませんでした。あれはどういうつもりです?」
眼鏡をクイっと持ち上げ彼を見下ろしながら彼女は言った。
「授業中にノートを出さない生徒なんているんですか?」
「あなたは出していなかったでしょう!」
「?出してましたよ?英語の授業でしょう?教科書P82ページの」
「・・・今日の授業はP84からです」
「ぇ?そうなんですか?変ですね」
…あれれ?おかしいな。英語の今日の授業はちゃんと受けてたと思うんだけど。
いまだに自分がボーっとしていたこを思い出せない蒼慈は一人首をかしげていた。
「あなたは・・・教師をナメているんでか!?」
ドンっと教師は自分の机を叩いた。
「何言ってるんですか。自分は先生方のことは心から尊敬しています。決してナメてなんていませんよ?」
ニコリと笑みを浮かべて蒼慈は教師に言った。
「そういう態度が教師をナメていると言ってるんです!!」
「だからナメてなんていませんよ」
「・・・あなたは去年からよくそういう態度をとっていましたね。流石にもう我慢できません。いつもならここであきらめてしまっていましたが、今回ばかりはそうはいきませんからね!」
そういってビシっと蒼慈に向かって指を突きつける。
宣戦布告された側の蒼慈はその指を見て、そしてフッと笑った。
「なんですかそのポーズは逆○裁判ですか?それならちゃんとセリフも『意義あり!』にしなきゃ」
確かに言われてみれば今の教師のポーズは、まさにソレである。
「・・・あなたっていう生徒は・・・あなたっていう生徒はっ!!!全くどんな教育を・・・」
「先生」
突如英語教師の言葉を遮り、蒼慈はさっきまでとは違ういたって真面目な声で言った。
「な、なんです?謝罪する気にやっとなりましたか?」
いきなり蒼慈の声色が変わりいささか驚きを隠せないまま、教師は蒼慈を見つめ、彼の真剣な目を見て、蒼慈がやっと謝る気になったのだと思い、英語教師は真面目な顔で蒼慈を見た。
しかし、そんな教師の内心とは裏腹に蒼慈がとった行動は全く逆のことであった。
「・・・」
「・・・は?」
文章力がなくてなかなか話がまとまらず、進まない^^;